乳癌の新薬をより速く、より低コストで市場へ/カリフォルニア大学サンフランシスコ校 | 海外がん医療情報リファレンス

乳癌の新薬をより速く、より低コストで市場へ/カリフォルニア大学サンフランシスコ校

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

乳癌の新薬をより速く、より低コストで市場へ/カリフォルニア大学サンフランシスコ校

抗癌剤の開発は膨大な費用と時間がかかる上に失敗に終わることが多いことで知られている。米国食品医薬品局(FDA)は、創薬の時間とコストを低減し、患者の新薬へのアクセスを大幅に向上させる乳癌臨床試験に関する指針を出した。

 

この新しい規制指針は一部、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)が率いる革新的な国家的乳癌研究に基づき策定された。

 

先週発表されたこの草案は、開発初期段階にある有望な乳癌治療薬の承認迅速化の促進を目的としている。草案によると、この指針はFDAの「現時点での考え」を示している。

 

この指針は、The New England Journal of Medicine誌の最新号で考察されている。

 

このFDAの新しい枠組みは、I-SPY2という臨床試験で検証中の試験デザインに基づいている。I-SPY2は、UCSFならびに官民が共同で立ち上げたもので、FDAの他に米国国立衛生研究所、製薬会社、大学病院などが参加している。

 

I-SPY2は、個別化医療と新規の試験デザインを組み合わせ、早期の乳癌再発リスクが高い患者を特定する。現在、(米国)国内の主要な19の癌研究施設で実施されている。

 

「高リスク乳癌患者のためにより良い選択肢が早急に求められています」と、FDA医療品評価研究センターのセンター長であるJanet Woodcock医師は述べている。「I-SPY2などの臨床試験で有望とされた薬剤がFDAの承認を得るためにどのように評価され得るか、この新指針は解説しています。そして、現在の薬よりも優れていると証明されれば、患者が速やかにアクセス出来るようになる可能性があります。」

 

従来、早期の乳癌患者は、新規抗癌剤を受けるために、何年も待たなければならなかった。新規抗癌剤は一般的に、より遅いステージの転移性乳癌患者を対象として最初に臨床試験が行われ、追加の臨床試験後においてのみ、より治癒の可能性が高い早期乳癌患者への使用が承認される。

 

新規抗癌剤が市販されるまでに10年以上の歳月と10億ドル以上の費用を要することもある。

 

2011年12月号のJournal of the American Medical Association (JAMA)誌の論評で、UCSFヘレン・ディラー家族総合がんセンターのキャロル・フランク・バック・ブレストケアセンターのセンター長であるLaura Esserman医師とWoodcock医師は共著で、新たな規制指針の必要性について考察した。

 

この論評で「現行の非効率な手法による最大の被害者は、新薬による治療を受けることで恩恵を得られるはずの患者である」と両氏は述べた。新規試験デザインと迅速な承認を可能にする新しい枠組みを併せることで、研究開発が加速され、はるかに低いコストで患者に新薬を届けることができるだろう、と論じている。

 

このFDAの新指針は、早期ステージで局所病変を有する、ある特定の高リスク患者において、腫瘍摘出手術前に投与する薬剤の承認を迅速化するだろう。この指針は、手術前に薬剤を投与する、乳癌の術前化学療法に重点を置いている。浸潤癌が手術時までに「病理学的完全奏功」と呼ばれる腫瘍が消失した、同様の術前化学療法を受けている患者からのデータに基づき、FDAは臨床的有用性を示した薬剤を承認する可能性がある、としている。

 

I-SPY2では、患者の腫瘍性病変を外科的にすぐ切除せず、約6カ月間残しておく。高リスク乳癌女性の手術前に、腫瘍縮小や完全消失が得られる可能性を高めるため、数種の新規化合物と標準化学療法を併用して検証される。この試験は、新しい分子標的薬から最も恩恵を受けられる患者が分かるようにデザインされており、FDAの新指針の下、新薬が迅速に承認され、速やかに患者の元に届くことになるだろう。

 

I-SPY2は従来の半分の時間、大幅に低いコスト、少数の患者で新薬の評価が可能である。

 

I-SPY2の共同試験責任医師であるEsserman氏は、「FDAが、I-SPY2のような試験を支援するということが分かり、本当に興奮しています。FDAの支持を得られたことで、[ns1] 適切な患者に適切な薬剤を治癒可能な時点[ns2] で投与するということに、大きく近づきました」と語った。

 

FDAは7月末までこの新指針についてのコメントを受け付けている。

 

現在、アリゾナ州立大学のTransformative Healthcare Networksで教授ならびにディレクター、および同大学Complex Adaptive Systems Initiativeの共同ディレクターを務めるAnna D. Barker氏は、「この指針は、癌征圧に向けた真の進歩を達成するために、最善の科学と医学の活用に尽力している何百人もの方々の努力の結晶です」とコメントしている。彼女は、米国国立癌研究所(NCI)の元副所長でもある。

 

I-SPY2のデザインには、NCI、FDA、製薬会社、バイオテクノロジー企業の研究者、ならびに、乳癌患者のアドボケイトたちが寄与した。I-SPY2は、国際的なバイオ・薬学関連のサービスプロバイダーであるクインタイルズの支援を受けながら、NIH財団とQuantum Leap Healthcare Collaborativeによって運営されている。また、I-SPY2の資金は、Safeway財団法人を含む非営利財団、数社の製薬企業、ならびに他の民間セクターおよび慈善的寄付金から提供されている。

******
村上智子 訳

須藤智久(薬学/国立がん研究センター東病院 臨床開発センター)監修
******

原文
******

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1乳がん化学療法後に起こりうる長期神経障害
  2. 2非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  3. 3がんに対する標的光免疫療法の進展
  4. 4「ケモブレイン」およびがん治療後の認知機能障害の理解
  5. 5若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  6. 6BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  7. 7治療が終了した後に-認知機能の変化
  8. 8ASCO、がん臨床試験に対する適格基準の緩和を推奨
  9. 9コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  10. 10ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず

お勧め出版物

一覧

arrow_upward