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免疫系を強化する癌治療法、試験拡大へ/ジョンズホプキンス大学

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免疫系を強化する癌治療法、試験拡大へ/ジョンズホプキンス大学

公開日:2012年6月2日
治療は安全で、ある種の腫瘍を縮小し、マーカーは治療効果を予測できる可能性があると試験担当医師らは述べている。

ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターの研究者の主導で他の医療センターと共同で実施した2件の臨床試験において、癌を見つけ攻撃する免疫系の能力を回復させることを目的とした被験薬の試験を行った結果、進行性非小細胞性肺癌患者、メラノーマ患者、腎癌患者において有望な早期結果が示された。同じ免疫抑制経路を標的とする2つの薬剤の試験において500人以上の患者が治療を受け、試験担当医師らによるとさらに大規模の患者で試験を拡大するために十分な証拠が得られたという。

第1相臨床試験の結果は6月2日にNew England Journal of Medicineにおいてオンラインで発表され、2012年米国臨床腫瘍学会年次集会(2012 American Society of Clinical Oncology Annual Meeting 抄録 #2509 and #2510)においても発表される。

「これらの薬剤に対する良好な奏効率やその効果が長く持続する場合が多いことから、新たな臨床試験を進めるべきだと我々は考えています」とジョンズホプキンス大学の外科・腫瘍学教授であるSuzanne Topalian医師は述べている。予備的解析によると、1年以上追跡調査を行った奏効患者のうち、1年以上効果が持続した患者の割合は、1つの試験で3分の2、他方の試験では半数であった。

2件の臨床試験で試験した免疫療法は、両方ともブリストル・マイヤーズスクイブ社で開発され、癌細胞を直接殺すことを目的としているのではなく、癌と戦う能力があり、癌と戦う用意ができている免疫系の構成要素から癌細胞をかくまっている経路を遮断することを目的としている。

本経路には、免疫細胞の表面に発現するPD-1(programmed death-1)と、癌細胞に発現するPD-L1(programmed death ligand-1)と呼ばれる2つのタンパク質が関与している。PD-1とPD-L1が結合すると、免疫系による破壊から腫瘍細胞を保護する生化学的な“シールド”を形成する。本経路に関与し、免疫系の細胞に発現するもう1つのタンパク質、PD-L2(programmed death ligand-2)はジョンズホプキンス大学の研究者らが最初に発見した。

癌細胞を免疫系により攻撃されやすくするために、試験担当医師らは2つの薬剤、PD-1を阻害するBMS-936558とPD-L1を阻害するBMS-936559を複数の米国の病院で実施される別々の臨床試験でそれぞれ試験した。薬剤は2週間おきに外来クリニックで静脈内投与され、患者は最長2年間治療を継続できることとした。

PD-1阻害薬の試験は標準療法に反応しなかった様々な進行癌の患者296人を対象に行われた。抗PD-1療法を受けた患者のうち、2011年7月までに治療を開始した240人について腫瘍反応の解析を行った。有意な腫瘍の縮小がみられたのは、非小細胞性肺癌患者76人中14人(18%)、メラノーマ患者94人中26人(28%)、腎癌患者33人中9人(27%)であった。

本試験において、肺癌患者76人中5人(7%)、メラノーマ患者94人中6人(6%)、腎癌患者33人中9人(27%)は6カ月以上病状が安定していた。薬剤が生存期間に与える影響を調査するためには、さらなる臨床試験が必要であると試験担当医師らは述べている。

「免疫療法に通常は反応性のない進行性の肺癌の患者でのこのレベルの反応が得られたことは予想外であり、注目すべきことでした」とジョンズホプキンス大学の腫瘍学の准教授であるJulie Brahmer医師は述べている。

抗PD-L1療法により治療を受けた207人の患者においても反応がみられた。反応がみられたのは、非小細胞性肺癌患者49人中5人(10%)、メラノーマ患者52人中9人(17%)、腎癌患者17人中2人(12%)であった。

「両薬剤で好ましい結果が得られたことは、PD-L1/PD-1経路が癌治療の重要な標的であるという良い兆候です」とTopalian氏は述べている。

抗PD-1療法は296人中41人(14%)の患者において重篤な毒性を引き起こした。毒性の多くは、結腸炎、甲状腺異常、肺臓炎による死亡(3人)など免疫現象に関連するものであった。試験担当医師らは全国の共同研究者と共に、肺臓炎の早期発見と効果的な治療のためのより良い方法を開発するために研究を行っている。その他の重度の低い毒性は、疲労、痒み、発疹などであった。抗PD-L1療法は9%の患者に重篤な毒性を引き起こしたが、死亡した患者はいなかった。

抗PD-1療法を受ける患者のうち、42人の患者から試験薬投与を受ける前に腫瘍の検体を採取し、ジョンズホプキンスメディスンで臨床反応に関与する分子マーカーを評価した。試験担当医師らは42検体中25検体においてPD-1のパートナータンパク質であるPD-L1が発現していることを発見した。PD-L1陽性腫瘍を有する25人の患者のうち9人で腫瘍の縮小がみられたが、PD-L1陰性腫瘍を有する患者では腫瘍の縮小はみられなかった。

「治療前の腫瘍生検でのPD-L1の発現が抗PD-1療法に対する臨床反応に関与している可能性をこれらの早期結果は示していますが、このことを確実にするにはさらなる研究が必要となります」とBrahmer氏は述べている。

PD-1/PD-L1経路を標的とする2つの治療法は、いわゆる「抗体療法」といわれる同クラスの治療法である。「抗体療法」は細胞表面の特定の分子を標的とし結合するタンパク質よりなる。他の抗体療法として、アービタックス、ハーセプチン、リツキサンなどの薬剤がある。

「我々はこれらの薬剤の非臨床研究および臨床研究の上っ面をなでたにすぎないのです」とTopalian氏は述べている。

最終的には、本治療法と癌ワクチンなどの抗癌剤を組み合わせることにより、本治療法の有効性を増大させることを試験担当医師らは考えている。

本臨床試験はブリストル・マイヤーズスクイブ社および小野薬品工業株式会社から資金提供を受けている。研究助成は米国国立衛生研究所(NIH)の米国国立癌研究所(NCI)およびMelanoma Research Allianceからのグラント(CA142779、CA006973)による。

Topalian氏、Brahmer氏以外に2件の試験に関与した試験担当医師は以下の通りである。
Charles G. Drake, M.D., Drew M. Pardoll, M.D., Ph.D., William H. Sharfman, M.D., Robert A. Anders, M.D., Ph.D., Janis M. Taube, M.D., Tracee L. McMiller, M.S., Haiying Xu, B.A., Shuming Chen, Ph.D., and Theresa M. Salay, B.S., from Johns Hopkins; Stephen Hodi, M.D., from the Dana Farber Cancer Center; Scott N. Gettinger, M.D., Lieping Chen, M.D., Ph.D., and Mario Sznol, M.D. from Yale University; David C. Smith, M.D., from the University of Michigan; David F. McDermott, M.D., and Michael B. Atkins, M.D., from Beth Israel Deaconess Medical Center; John D. Powderly, M.D., from the Carolina BioOncology Institute; Richard D. Carvajal, M.D., from Memorial Sloan Kettering Cancer Center; Jeffrey A. Sosman, M.D., and Leora Horn, M.D., from Vanderbilt University; Philip D. Leming, M.D., from Cincinnati Hematology-Oncology Inc.; David R. Spigel, M.D., from the Sara Cannon Research Institute/Tennessee Oncology; Scott J. Antonia, M.D., Ph.D., from the H. Lee Moffitt Cancer Center; Alan J. Korman, Ph.D., Maria Jure-Kunkel, Ph.D., Shruti Agrawal, Ph.D., Dan McDonald, M.B.A., Georgia D. Kollia, Ph.D., Ashok Gupta, M.D., Ph.D., Suresh Alaparthy, Ph.D., Joseph F. Grosso, Ph.D., Susan M. Parker, Ph.D., Stacie M. Goldberg, Ph.D., and Jon M. Wigginton, M.D., from Bristol-Myers Squibb; Scott S. Tykodi, M.D., Ph.D., Laura Q. M. Chow, M.D., Shailender Bhatia, M.D., Renato Martins, M.D., M.P.H., Keith Eaton, M.D., Ph.D., from the University of Washington and Fred Hutchinson Cancer Research Center; Wen-Jen Hwu, M.D., Ph.D., and Patrick Hwu, M.D., from the MD Anderson Cancer Center; Luis H. Camacho, M.D., M.P.H., from the St. Luke’s Episcopal Hospital Cancer Center; John Kauh, M.D., from the Winship Cancer Institute of Emory University; Kunle Odunsi, M.D., Ph.D., from the Roswell Park Cancer Institute; Henry C. Pitot, M.D., from the Mayo Clinic; Omid Hamid, M.D., from the Angeles Clinic

Brahmer氏、Topalian氏、Drake氏、Pardoll氏はブリストル・マイヤーズスクイブ社の相談役であった。Topalian氏はMelanoma Research AllianceのChief Scientific Officerである。これらの取り決めの用語は利害関係の方針に従いジョンズホプキンス大学により管理されている。

関連するニュースリリース:Some Melanomas Use Cloaking Protein to Hide from Immune Cells

メディア連絡先:
Johns Hopkins Kimmel Cancer Center
Office of Public Affairs
Vanessa Wasta
410-614-2916, wasta@jhmi.edu

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張知子 訳
田中謙太郎(呼吸器・腫瘍内科、免疫/テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)監修
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原文

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