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ハイブリッドワクチンが乳癌再発を予防する可能性/MDアンダーソンがんセンター

  • 2012年7月19日

    新規補助療法が乳癌罹患歴のある女性に対する第2相臨床試験で効果を示す
    MDアンダーソンがんセンター
    2012年5月16日

    テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らによる新しい臨床試験の結果、これまでに様々なHER2発現レベルの女性において強力な免疫応答を惹起することが確認されていた乳癌ワクチンが、再発率改善効果と補助療法としての良好な忍容性が示された。

    この結果は2012年5月16日に公表され、6月4日月曜日、2012 年米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO)にて口頭発表される。今回の試験は、AE37として知られるワクチンが、安全かつ有効にヒト上皮成長因子受容体2(HER2)に対し免疫応答を高めたという、これまでの研究の追加試験である。HER2は腫瘍増殖を促す腫瘍性タンパク質であり、乳癌の75-80%に何らかの発現が認められる。

    今回の研究によると、経過観察期間の中央値が22カ月の時点で、乳癌の推定再発率はワクチン接種群で10.3%、コントロール群で18% であった。つまり再発危険率として43%減少した。

    「このワクチンはHER2を外部侵入者として認識するよう免疫系を誘導する」と、MDアンダーソン外科腫瘍学助教であり、本臨床試験の米国試験責任医師であるElizabeth Mittendorf医師は述べた。「乳癌罹患歴のある女性にこのワクチンを投与することで、あらゆる再発癌細胞を即座に認識し、攻撃を開始するよう免疫系を構築することが、われわれの目的である。」

    強力なワクチンの作成
    この研究に用いられたAE37ペプチドワクチンは、HER2を発現している癌細胞に対する特異的免疫応答の誘導能を高めた、ハイブリッド遺伝子組み換えワクチンである。MHCクラスIIエピトープであるHER2タンパク断片(AE36)とIi-Key ペプチドの複合体を形成させる。複合体として作用することで強力にCD4+ T細胞反応を刺激し、腫瘍細胞を探し出し破壊するように免疫系を活性化する。

    また、T細胞によるAE37の認識能を高めるため、研究者らは顆粒球マクロファージコロニー刺激因子 (GM-CSF)として知られる免疫刺激剤を、ワクチンに組み合わせた。ワクチンは破傷風予防接種と同様に皮下に注射した。初期クールは毎月1回6カ月間接種し、その後6カ月に1回のブースター接種を4サイクル実施した。

    乳癌再発予防
    ほとんどの試験薬物は、転移を伴う患者でまず評価される。その状態では既に腫瘍が急激な変化をきたしており、その中には、免疫回避機構という、腫瘍細胞が免疫系による排除から逃れる作用も含まれる。「AE37のようなひとつの単体ペプチドワクチンが、この病態にある腫瘍に打ち勝つ可能性はほとんどない」とMittendorf氏は言う。「このことから、既に存在する大量の癌細胞を治療するよりも、ワクチンを用いて再発を防ぐ方がより現実的である。」

    第2相ランダム化臨床試験では無病状態にある乳癌患者201人を対象とし、103人がAE37ペプチドにGM-CSFをアジュバントとして加えたものを投与され、コントロール群98人がGM-CSFを単独で投与された。患者全員が種々レベルのHER2を発現していた。

    その結果、ワクチンは患者に良好な忍容性を示し、毒性は軽微であった。短期副作用は注射局所の発赤、感冒様症状、および骨痛であった。ワクチンによる有意な免疫応答は過去のデータと一致し、さらに本研究では、ワクチンが再発率に与える影響についても明らかにされた。

    ワクチンはいずれのHER2レベルの女性に対しても再発予防効果を示すと思われる。さらに、今回の結果は、現在MDアンダーソンで次の段階の臨床試験が進行中の他のワクチンと同等であった、とMittendorf氏は述べた。MDアンダーソンでは現在、異なるタイプのHER2由来ペプチドワクチン3種が様々な段階で試験および開発中である。その中で、AE37は唯一CD4+ T細胞を標的としている。

    既存法の応用が可能
    ペプチド由来のワクチンの利点としては、製造と投与の簡便性、および他の使用可能なワクチンに比べて社会に流通させやすい点があげられる。Mittendorf氏の記述には樹状細胞ワクチンの場合には、大量の血液を採取するため、患者は病院に行き、複雑で高価な処理工程を行うプロセシング施設に運ばれなければならないが、一方のペプチドワクチンは「既製品」で患者に投与できる。

    他にも、このワクチンが現行の補助療法より有利な場合がある。「現在行われている乳癌の補助療法は継続的に行うものである。それにもかかわらず、その発癌抑制効果は限定的である」とMittendor氏は言う。「免疫療法の場合、理論的には、一度反応すれば、繰り返し投与することなく長期持続効果が期待できる。」

    「実験室から臨床へと研究が進むにつれ、免疫療法には興奮させられる。ワクチンと抗体の場から、これらの治療法を組み合わせ、奏効率を改善する臨床的な免疫系の場へと移行し、われわれは熱意を新たにしている」
    この結果はBrooke Army Medical Center のTimothy J. Vreeland医師によりASCOにて発表される。臨床試験はワクチン技術の特許を有する Antigen Express社により一部助成を受けた。本研究に基づき、Antigen Express社は米国FDAにワクチンに要する第3相臨床試験の継続のため特別なプロトコールを適用する予定である。

    本研究の他の研究者は以下の通りである。
    Diane Hale, M.D., Alan Sears, M.D. G. Travis Clifton, M.D., Nathan Shumway, D.O. and George Peoples, M.D., from Brooke Army Medical Center; Sathibalan Ponniah, Ph.D., from Uniformed Services University of the Health Sciences; and Sonia Perez, Ph.D., Michael Papamichail, M.D., Ph.D. and Alexandros Ardavanis, M.D. from Saint Savas Cancer Hospital, Cancer Immunology and Immunotherapy Center in, Athens, Greece.

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    武内優子 訳
    大野 智(腫瘍免疫/早稲田大学・東京女子医科大学)監修
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    原文


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