JAK2阻害剤が骨髄線維症を効果的かつ持続的に制御することが示される/M.D.アンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

JAK2阻害剤が骨髄線維症を効果的かつ持続的に制御することが示される/M.D.アンダーソンがんセンター

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JAK2阻害剤が骨髄線維症を効果的かつ持続的に制御することが示される/M.D.アンダーソンがんセンター

同剤は脾臓の縮小、QOLの向上、骨髄性疾患の症状緩和をもたらす
M.D.アンダーソンがんセンター
2009年12月5日

最新の経口薬により、稀ながら消耗性で致死性の骨髄性疾患である骨髄線維症の患者の症状が有意に、かつ持続的に緩和される、とM.D.アンダーソンがんセンターの研究者らが本日開催の米国血液学会第51回年次集会で発表した。「これまでは、骨髄線維症を起こす悪性細胞の異常なシグナル伝達経路を標的とできなかったため、この病気には治療法が一つもありませんでした」と、臨床試験責任医師でM.D.アンダーソン白血病部門准教授のSrdan Verstovsek医師/医学博士は述べた。骨髄線維症患者の平均余命は5〜7年、現在受けられる治療は主として緩和ケアである。

JAK1およびJAK2の阻害剤であるINCB018424の第1相/第2相臨床試験では、JAK2遺伝子におけるJAK2V617F変異によって引き起こされる異常なシグナル伝達を標的とする。JAK2V617F変異は2005年に骨髄線維症や同様の骨髄増殖性疾患の患者で発見された。

「肥大した脾臓は本薬剤によってかつてないほど縮小し、患者の体重が増加、疼痛が減少し、運動能力の向上を享受するなど、生活の質の改善が得られました」とVerstovsek氏は述べた。

「骨髄線維症は悪性細胞の集積によって引き起こされ、結果として骨髄が瘢痕(はんこん)化し、造血が制限され貧血をきたします。脾臓などの器官が血液細胞の産生を肩代わりしようとするため、脾臓が腫大します。患者の生活の質は低下し、倦怠感、体重減少のほか、腹部、骨、筋肉の疼痛や、寝汗、ときに激しいかゆみがあります。末期患者は重度の栄養失調と似ており、腹部が膨満し、手足がやせるといった症状がみられます」と、Verstovsek氏はこのように述べた。

実験的JAK2阻害剤INCB018424(424)の臨床試験は2007年6月に始まり、153人の患者が登録された。治療期間全体をとおして臨床反応は維持され、115人が臨床試験を現在も継続中である。

患者調査に基づく症状スコアとしての脾臓の大きさと、6分間歩行による運動能力の計測により、薬剤に対する反応を評価した。すべての患者で治療の効果があり、最適投与量において次のような効果があった。

・ 治療6カ月の時点で磁気共鳴画像法(MRI)により測定した脾臓容積の減少率中央値は33%、患者の48%で35%以上の容積減少。触診(脾臓の大きさを測定するためによく行われる臨床検査)により測定した胸郭下における脾臓の長さの減少率中央値は52%で、MRIの成績と合致。
・ 症状スコアが速やかかつ持続的に改善。51%の患者は1カ月間で症状スコア50%減を達成、6カ月の時点で58%の患者が50%減の状態を維持。
・ 6分間歩行における歩行距離の延びの中央値は1カ月で33メートル、6カ月で70メートル。

追加分析で、脾臓の縮小は症状スコア、運動能力、倦怠感の大きな改善と関連していることが示された。症状の改善は、病態に関連するさまざまな炎症性サイトカインが急速かつ持続的に低下した時期と一致していた。

唯一の明らかな副作用として、一部の患者で血球数の減少が認められたが、これは投与量を減らすか一時的に治療を中止することにより改善が可能である。

「JAK2V617F変異は骨髄線維症に関連する変異のうちの一つで、もっとも一般的であり患者の半数で発見されます。しかし、この変異だけが病気の原因ではありません」とVerstovsek氏は述べた。「骨髄線維症はとても複雑なため、1種類の薬のみで排除することはできません。」

「今回の治療法は骨髄線維症における根本的な異常に対処する設計になっており、確かにほとんどの患者で病気のコントロールがうまくいきました。しかしながら、骨髄線維症の治療にはおそらく他の治療法との併用が必要でしょう。」とVerstovsek氏は語った。

通常、JAK2は必要に応じてさまざまな増殖因子により活性化され、新しい血液細胞を産生させる。JAK2V617F変異があるとJAK2酵素が恒常的に活性化した状態となり、結果として骨髄線維症の最たる要因である骨髄細胞の過剰な増殖をきたす。

当初、JAK2阻害剤はJAK2変異のある患者に限って効果があるものと考えられていたが、変異の有無にかかわらず効果が見られた。「このことは、特定の変異がない患者においてもなお非常に活性化したJAKシグナル伝達経路が存在しており、そのためにJAK阻害の効果が得られた可能性を示唆しています」とVerstovsek氏は述べた。「しかしながら、この薬は正常なJAK2の働きも阻害してしまうため、血球が減少し投与量を減らさざるを得ない可能性もあります。」

骨髄線維症におけるINCB018424に関するpivotal試験の登録研究が現在進行中である(www.comfortstudy.com)。

米国では骨髄線維症の新規症例が年間約3,000例ある。今回の多施設共同臨床試験は骨髄線維症の試験としては過去最大規模のものである。

本臨床試験はIncyte社の資金援助を受けている。Verstovsek氏もIncyte社から研究資金の援助を受けている。

Verstovsek氏の他の共著者は以下のとおりである。
Hagop Kantarjian, M.D., Deborah Thomas, M.D., Zeev Estrov, M.D., and Jorge Cortes, M.D., of the M. D. Anderson Department of Leukemia; Ruben Mesa, M.D., of Mayo Clinic in Scottsdale, Ariz.; Animesh D. Pardanani, M.B.B.S., Ph.D., and Ayalew Tefferi, M.D., of Mayo Clinic Department of Hematology in Rochester, Minn; and Edward C Bradley, M.D., Susan Erickson-Viitanen, Ph.D., Kris Vaddi, Ph.D., and Richard Levy, M.D., of Incyte Corporation.

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橋本 仁(獣医学) 訳
朝井鈴佳(獣医学・医学生理学)監修
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原文


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