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2012/07/10号◆各界のトピック「意見交換の場:ASCO年次総会を最大限に活用する若き腫瘍医たち」

  • 2012年7月17日

    同号原文

    NCI Cancer Bulletin2012年7月10日号(Volume 9 / Number 14)

    日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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    ◇◆◇ 各界のトピック ◇◆◇

    意見交換の場:ASCO年次総会を最大限に活用する若き腫瘍医たち

    毎年、米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で討議される斬新な研究の多くは、各分野で頭角を現してきた研究者による発表だ。

    ほとんどの研究者はポスターセッションで研究内容を展示し、少数の選ばれた研究者は公式の口頭プレゼンテーションを行う。いずれにしてもこの会議は、最大規模の国際的な癌研究フォーラムの一つで、若き医師、研究者は自らの研究データについて議論し、その正当性を護る機会を与えられる。

    約3万1000人もの腫瘍学専門家が集まる会議を巡回し、その経験を最大活用することは容易ではない。

    「非常に大きな会議で、事前に入念な準備をしていったとしても、圧倒されてしまいます」と、Dr. Ayca Gucalp氏は話した。同氏はスローンケタリング記念がんセンター(MSKCC)の乳癌医療サービスのフェロー研究員として3年目で、ASCOへの参加は今年が2回目だ。「昨年はとにかく(どこをどう回るかを)予習し、そのすべてを見て、私が読んだことのある論文を書いた研究者にできる限り多く会うことで精一杯でした」と話した。

    「とにかく、途方もなく大規模」と、MSKCCで悪性黒色腫を研究する血液学と腫瘍学のフェロー研究員であるDr. James Harding氏も賛同する。同氏は今年初めてASCOに参加した。「ここには多くの権威がきていて、沢山の興味深い研究が飛び出します。どこに行くべきかで迷いますが、とてもエキサイティングです」。

    過去にASCOの年次総会に出席したことのある参加者は、たいてい計画を立ててやってくる。

    コロラド大学がんセンターで肺癌を研究する臨床研究員のDr. Andrew Weickhardt氏は、初めてASCO総会に参加した時は、口頭プレゼンテーションのみに出席したと話した。

    「次の時には、色々な研究者に会い、研究に関して精力的に話せるため、ポスターセッションが非常に役立つことを認識しました」と、オーストラリア出身の同氏は語った。「今回は、以前は注意を向けていなかった教育セッションと臨床科学シンポジウムのいくつかで、ある分野についてより深い知識を得ることができたので非常によかった」。

    研究の焦点の補正

    こうした次世代の癌研究者にとって、ASCOは彼らの知見を共有し、どのような新たなアイディアが自らの研究分野を発展させていくかを知る格好の場である。

    事前の広報資料や報道発表を通して、研究者らはASCOで発表される大きな研究が事前にそれとなくわかるが、ポスターや口頭での発表抄録に予期しない研究を発見することもある。Gucalp氏は乳癌発生におけるアンドロゲン受容体シグナル経路の役割という、自分の研究に近いテーマの抄録を5本ほどみつけ嬉しく感じたという。同氏もこのテーマについて、口頭プレゼンテーションを実施した。

    「乳癌のアンドロゲン受容体シグナルに対する注目が非常に高まっていたので、自分の方向性も正しいと感じることができました」と同氏は話した。「前立腺癌の分野で既に使えるようになった多くの薬剤について考えれば、乳癌の研究でも応用可能な選択肢が多数あります」。

    若手研究者にとって、ASCO年次総会という大規模なイベントで研究を発表することは、ベテラン研究者から発表データに対する批評的なフィードバックをもらうよい機会でもある。

    ユタ大学ハンツマンがん研究所の研究レジデントでASCO功労賞受賞者のDr. Benjamin Maughan氏は、尿路上皮癌患者にかかわる臨床試験での代替評価項目に関するポスター発表を行い、有益な経験だと感じた。「ポスターセッションは結果的にとてもよかった」と、同氏は学会後の電子メールに書いた。「このプロジェクトに関して、多くの意義ある議論を行い、貴重なフィードバックを得ました」。

    顔合わせの時間

    しかしASCO総会は、最新の臨床研究の詳細について知るだけの場ではない。

    「ここで発表される内容の直接の重要点は抄録冊子を読んだり、発表の動画サイトを見たりすることでもわかります。これはオーストラリアにいても、ウズベキスタンにいてもできること」と、Weickhardt氏。「重要なのは、むしろ研究者と顔を合わせることだと思います」と話した。

    「会議はほかの研究者やほかのセンターの実習生と交流できる絶好の機会です」と、トロントのプリンセス・マーガレット病院のDr. Irene Brana氏も同意する。同氏はマウスでの標的療法の他剤併用に対し反応性や耐性を示すバイオマーカーの研究で、ASCO若手研究者賞を受賞した。

    「共同で研究した人達に会う時間が持てました」と、Gucalp氏は話した。「共同研究者が異なる国にいる場合もあり、ここが顔を合わせる唯一の共通の場です」と続けた。「私自身が所属する部門の人とも、関係を発展させてきました。仕事中は常に忙しいので、(この会議は)アイディアを発展させ、話し合う時間を与えてくれます」。

    ASCO総会は、フェロー研究者にとって研修後の専攻の選択肢について、情報を得る機会でもある。

    「私は専攻展開モジュールから多くを得ました」と、Harding氏は語った。「学者、地域の医療者、製薬会社の医療情報担当者といった様々な実務経験のある識者パネルから、なぜそうした道を選んだか、いかに指導者をみつけたか、そしてなぜその専攻を選んだかなど、それぞれの人の話を一度に聞けたことは、私のような段階にいる人にとって非常に重要です」。

    初期研修医向けに設定されたイベントは特になかったものの、Maughan氏は多数のフェローや、自分がフェローシップの申し込みを考えている施設のプログラムディレクターに会うことができた。

    ASCOの影響

    こうした若き研究者の多くは、大学の医学部在学中の早くから関心を腫瘍学に定めており、ほとんどが研究の道に進むことを考えている。

    「学問的な環境が好きだ」と、ASCO若手研究者賞を受賞したHarding氏は言う。「この総会に出ればわかるように、(学究的世界)は非常に刺激があり、誰もが多くのアイディアを持ち、あらゆる議論があります」。

    ASCOセッションは、大学研究専攻者の、研究の焦点の絞り込みにまで影響を及ぼす。

    Maughan氏はもともと進行癌患者に対する遺伝子治療の探求に興味を持っていた。しかしながら、臨床試験における乳癌標的療法の最善の設計を模索する一連の発表に出席した後、「大きな影響を与えるチャンスは、長期にわたる再発治療ではなく、早期治療にあることが明白になりました。これは、遺伝子療法技術に関する腫瘍学研究において、私のアプローチを再考させることになったのです」と話した。

    どこから彼らの専攻を独立させるかという問題も、その研究を成功させる上で重要な側面である。Gucalp氏はMSKCCの教員職に就くことを決め、研究フェローとして始めたいくつかのプロジェクトを引き続き発展させていく予定である。一方、Weickhardt氏は、オーストラリアに戻る方向に傾いている。

    — Jennifer Crawford

    【右上段画像下キャプション訳】  米国臨床腫瘍学会の年次総会で、実習生と若手教員のラウンジに集まる出席者達 (写真提供: © ASCO/Scott Morgan 2012)

    【左中段画像下キャプション訳】2012年のASCO年次総会には、100カ国以上から3万1000人以上が出席した。(写真提供: © ASCO/Scott Morgan 2012)   [画像原文参照

    NCIは博士課程修了者にとって、最良の職場の一つに選ばれたThe Scientists誌の2012年博士課程修了者に最良の職場ランキングで、NCIは13位に選ばれた。同誌の調査によれば、専攻を発展させる機会がNCIの強みの一つである。NCIでの研修機会については、癌トレーニング・センターのウェブサイトを参照して下さい。

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    片瀬ケイ 訳
    喜多川 亮(産婦人科/NTT東日本関東病院)監修
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