FDA承認薬により、確立した癌ワクチンの効果が増強することが示される/ペンシルベニア大学 | 海外がん医療情報リファレンス

FDA承認薬により、確立した癌ワクチンの効果が増強することが示される/ペンシルベニア大学

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

FDA承認薬により、確立した癌ワクチンの効果が増強することが示される/ペンシルベニア大学

フィラデルフィア-ペンシルベニア大学のペレルマン医学大学院(Perelman School of Medicine)およびアブラムソン家族性遺伝性がん研究所(Abramson Family Cancer Research Institute)のチームにより、FDA承認薬のダクリズマブ(daclizumab:本邦未承認)が、ダクリズマブを投与しない場合と比べて、癌ワクチンを投与されている乳癌患者の生存率を30%改善したことが示された。この概念実証研究は、今週号のScience Translational Medicine誌にて発表されている。本研究の統括著者は、医学部准教授のRobert H. Vonderheide医学博士および微生物学部准教授のJames L. Riley博士であった。

研究チームは、腎移植に既に使用されているダクリズマブが制御性T細胞(Tregs)を枯渇させ、免疫系の腫瘍と闘う能力を修復することにおいて有効でありうることを提示した。Tregsは、免疫系が役割を果たした時にその機能を停止するように促す白血球細胞の中でも重要な細胞である。この10年間、癌免疫療法が導入されているが、研究者らは、腫瘍を破壊するために免疫細胞がより確実に反応するように免疫系を微調整することに力を注いできた。しかしながら、その間に身体はブレーキをかけてしまい、ワクチンの効果が弱まってしまう。

腫瘍細胞はTregsを活用し、腫瘍周辺に引き寄せる。本質的にTregsは腫瘍にハイジャックされ、最も微小な腫瘍でさえもその周囲を保護するように取り囲み、腫瘍を破壊する他の白血球が腫瘍中心部の腫瘍細胞に到達するのを阻止する。

Tregsはその機能の多くをインターロイキン2(IL-2)という特定のタンパク質に依存する。ダクリズマブはTregsの表面に存在するCD25受容体に結合する抗体であるが、通常、CD25受容体にはIL-2が結合する。Tregsはダクリズマブの存在下ではIL-2が奪われた状態となり、それはダクリズマブがIL-2の代わりにCD25受容体と結合するためである。その一方でTregsを枯渇させる代わりに、Riley博士によって運営されているペンシルベニア大学のバイオバンクからの正常なリンパ球を使用した結果、IL-2の欠損によりTregsは腫瘍を囲むことがない正常なT細胞へ転換させられることをチームは発見した。この転換が起こると、腫瘍を破壊する免疫細胞が腫瘍の中へ入り込むことができるようになると予測された。

この着想を患者へ導入するために、研究チームは共著者である医学部教授のKevin Fox医師が指揮をとることになった臨床試験を計画し、転移性乳癌患者10人を対象に、ペンシルベニア大学で開発および製造された実験的乳癌ワクチンを投与する前にダクリズマブを投与した。

「ダクリズマブは非常に効果的でした」と、Vonderheide医学博士は述べた。副作用は認められず、T細胞変換はダクリズマブ投与群において2カ月間継続して認められた。患者の腫瘍は縮小こそしなかったものの、10人中6人の患者において腫瘍の増殖が停止した。さらに、ダクリズマブを投与した患者では、癌ワクチン単独投与の患者に比べて、生存期間が約7カ月延長した。これまで、Tregsを除去しようとしてきた試みは有害で一時的なものであったが、ダクリズマブの効果は迅速で持続的、かつ確実性があることが認められたと、Vonderheide医学博士は語った。

「今回の取り組みは乳癌患者を対象に検証しましたが、Tregsはほとんどのヒトの癌に対する免疫反応を抑制するとされています。ダクリズマブのような薬は、多くの癌患者にとって、特に他の免疫療法を受けている患者にとって有効です。Tregsは自己免疫の抑制をも促しているものの、本研究では体内の全てのTregsを変換したのではなく、腫瘍を保護するものとして考えられたTregsのみを変換したため、自己免疫反応については観察されませんでした。全てのTregsではなく一部を対象としたことは、本研究の重要で特異的な観点であるといえます。今回の結果を裏付けるためにはさらなる研究が必要ですが、本研究は他の癌における癌ワクチン治療法に重要な影響を与えるものと考えております」と、Vonderheide医学博士は述べた。

現在、ダクリズマブは製造業者から入手不可能となっているが、関連のあるFDA承認薬を使用した2件目の臨床試験が、転移性乳癌患者を対象に、ペンシルベニア大学にて今年の夏に登録を開始する予定である。

本研究は、米国立衛生研究所の国立癌研究所による助成金CA111377、小児糖尿病基金(Juvenile Diabetes Research Foundation: JDRF)、細胞療法連携センター(Collaborative Center for Cell Therapy: CCCT)および1型糖尿病に対する臍帯血移植療法JDRFセンター(JDRF Center on Cord Blood Therapies for Type 1 Diabetes)、乳癌研究基金(Breast Cancer Research Foundation)、およびAbramson Family Cancer Research Instituteによる資金支援を受けた。Vonderheide医学博士および共著者のSusan Domchek氏は、癌免疫療法に対する腫瘍関連抗原としてのヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)に関する特許についての発明に関連する金銭的利益相反の可能性について言明している(hTERTを含む汎用性腫瘍関連抗原を使用した癌免疫療法および診断、米国特許7851591)。

ペンシルベニア大学所属の他の共著者は次のとおり。Andrew J. Rech, Rosemarie Mick, Sunil Martin, Adri Recio, Nicole A. Aqui, Daniel J. Powell Jr., Theresa A. Colligon, Jennifer A. Trosko, Leah I. Leinbach, Charles H. Pletcher, Carol K. Tweed, and Angela DeMichele。

******
栃木和美 訳
大野 智(腫瘍免疫/早稲田大学・東京女子医科大学)監修
******

原文

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  2. 2非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  3. 3卵巣がんの起源部位は卵管であることが示唆される
  4. 4若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  5. 5コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  6. 6がん領域におけるシームレス臨床試験数が近年増加
  7. 7アブラキサンは膵臓癌患者の生存を改善する
  8. 8治療が終了した後に-認知機能の変化
  9. 9ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  10. 10乳がん化学療法後に起こりうる長期神経障害

お勧め出版物

一覧

arrow_upward