抗癌剤が阻害する増殖因子には心臓を保護する役割もある/M.D.アンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

抗癌剤が阻害する増殖因子には心臓を保護する役割もある/M.D.アンダーソンがんセンター

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抗癌剤が阻害する増殖因子には心臓を保護する役割もある/M.D.アンダーソンがんセンター

PDGFRの血管新生への関与が心血管系副作用の発現機序を明らかにする可能性がある
M.D.アンダーソンがんセンター
2010年1月11日

テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの研究者らは、抗癌剤の一般的な標的である増殖因子がストレス刺激に対する心臓血管反応において重要な役割を果たしていることを今週Clinical Investigation誌のオンライン版で発表した。

多くの癌症例では血小板由来増殖因子受容体(PDGFR、細胞増殖を制御するたんぱく質)が過剰産生され、そのために癌細胞が無制限に増殖する。スーテント(一般名スニチニブ)、ネクサバール(ソラフェニブ)、グリーベック(イマチニブ)などのいくつかの化学療法剤はPDGFRを標的とし、これを阻害することにより作用する。PDGFRが阻害されると癌細胞の増殖速度が遅くなると同時に新しい血管の形成(血管新生)も遅くなる。

「最近ではいくつかの標的治療薬と心不全との関連性が認められています。しかしながら、PDGFRの心臓におけるシグナル伝達については今まであまり研究されてきませんでした。」とM.D.アンダーソンがんセンター循環器科の准教授で本試験のcorresponding authorであるAarif Khakoo医師は述べた。

本試験でKhakoo医師らはPDGFR阻害剤には癌細胞の増殖を遅らせる働きがあるが、同時にストレス刺激に対する心臓の応答能を損なう働きもあることを明らかにした。PDGFR阻害剤はしばしば血圧を上昇させるため、心臓にストレス刺激を与えながら、このストレスへの反応能力を低下させるダブルバインドが起きる。

マウスではPDGFRの働きを抑制すると心不全が起きる

Khakoo医師らは、心臓のPDGFRを制限した実験用マウスと正常なPDGFRシグナル伝達能を持つマウスに大動脈縮窄術(TAC、この手技は大動脈弓を結紮して行い、心臓疾患の研究で広く用いられている)を行い、心臓を急性の圧過負荷の状態にした。その結果、PDGFRを制限したマウスには心不全が発現した。

「われわれの試験から、心臓への圧過負荷ストレスへの反応として、心筋細胞におけるPDGFRの発現と活性化が著しく増加することが示されました。また、心筋のPDGFRをノックアウトすると心機能障害や心不全が発現し、ストレス誘発性の心臓血管新生が著しく不良になることも明らかになりました。」とKhakoo医師は述べた。

さらにKhakoo医師らはストレス刺激に対する心臓の反応を助ける新生血管の形成にはPDGFRのシグナル伝達が極めて重要であることを示した。

高血圧はPDGFR阻害剤の投与を受けている患者のリスクを高める可能性がある。

「これらの薬剤の投与を受けている患者の多くは重度の高血圧の形で血管ストレスを受けることを考えると、われわれの発見から、高血圧とPDGFRのシグナル伝達の阻害という2つの要因がPDGFRなどを標的とする抗癌剤治療を受ける患者の心臓障害のカギとなる可能性があることが示唆されます。」とKhakoo医師は述べた。

また、Khakoo医師は試験の結果を受け、高血圧を厳格に管理することで、PDGFR阻害剤により引き起こされる心毒性を有意に減らせる可能性があることも示唆した。

前進と掘り下げ

この試験により心臓障害を防ぐ方法とPDGFR阻害剤の心臓に対する付加的な効果に対する研究の道が開かれた。

Khakoo医師は「心疾患のある患者ではPDGFR阻害剤により心筋症や心不全の発現リスクが高まる可能性があります。これが裏付けられれば、PDGFR阻害剤による治療を考えている癌患者個々の投薬リスクを測る手段を開発する手助けとなる上、心臓障害を防ぐ戦略を開発する手助けにもなります」と述べた。

Khakoo氏の他の共著者は以下のとおりである。Vishnu Chintalgattu, Ph.D.(筆頭著者), Di Ai, M.D., Ph.D., Jianhu Zhang, Ph.D., Tiffany Shih, Iyad Daher, M.D. and Shalin Patel, all of M. D. Anderson’s Department of Cardiology; Robert Langley, Ph.D. of M. D. Anderson’s Department of Cancer Biology; James Bankson, Ph.D., of M. D. Anderson’s Department of Imaging Physics; Anilkumar Reddy, Ph.D., Jennifer Pocius, George Taffet, M.D. and Mark Entman, M.D. of Baylor College of Medicine’s Department of Medicine; Kevin Coombes, Ph.D., of M. D. Anderson’s Department of Bioinformatics and Computational Biology; Shibani Pati, M.D., Ph.D. of The University of Texas Health Science Center at Houston Center for Translation Injury Research; and L. Maximillian Buja, M.D. of The University of Texas Medical School at Houston Department of Pathology and Laboratory Medicine.

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伊藤くみ訳
野長瀬祥兼(工学/医学生)監修
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原文


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