癌性疼痛治療は不十分であることが多い:少数民族では適切な鎮痛薬を投与されていない患者が白人の2倍に上るおそれがある/MDアンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

癌性疼痛治療は不十分であることが多い:少数民族では適切な鎮痛薬を投与されていない患者が白人の2倍に上るおそれがある/MDアンダーソンがんセンター

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癌性疼痛治療は不十分であることが多い:少数民族では適切な鎮痛薬を投与されていない患者が白人の2倍に上るおそれがある/MDアンダーソンがんセンター

ホルモン受容体陽性乳癌の生存に関与する翻訳制御因子の異常
M.D.アンダーソンがんセンター
2012年4月16日

浸潤性癌の患者の1/3以上では疼痛治療が不十分であり、少数民族では鎮痛薬の投与を受けていない患者が白人の2倍に上るおそれがあることが、テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの研究から明らかにされた。

Journal of Clinical Oncology誌(JCO誌)に発表された本研究は、癌の疼痛および関連症状について外来患者を対象に実施されたこれまでで最大の前向き評価である。

Charles Cleeland医学博士(M.D.アンダーソンがんセンターの症状研究科教授・主任)は、ほぼ20年前に癌の疼痛管理の妥当性を評価した最初の包括的な研究結果を発表した。

Cleeland氏は、今回JCO誌に発表された論文の上級著者である。「不十分な疼痛治療は癌治療の過程における公衆衛生上の大きな問題であり、適切な疼痛治療を受けていないリスクが最も高いのが少数民族であることは、もう何年も前から知られている。今回の新たな研究からは、十分な疼痛管理を受けていない患者の割合がほぼ20年前の研究結果から全体で10%しか低下しておらず、わずかな進歩にとどまっていることがわかる」と、Cleeland氏は述懐した。

今回の研究は、M.D.アンダーソンがんセンターの主導下でEastern Cooperative Oncology Groupが実施したものである。米国内の38施設で、病期のどの時点での治療であるかを問わず、浸潤性乳癌、前立腺癌、大腸癌、肺癌の患者を組み入れた。全員が大学関連の医療センターまたは地域の診療所の外来通院患者であった。外来ベースの研究には、研究者の説明によると独自の側面がある。入院患者の著しい疼痛については疼痛の専門家が評価を行うが、外来ベースの通院患者は、通常、治療を担当する腫瘍医が疼痛管理を行う。

患者は質問票に人口統計学的特性と臨床情報を記入した。Cleeland氏が開発した症状評価ツールを用いて、患者の疼痛の強さのほか、鎮痛薬を処方されている場合は、そのレベルも評価した。1カ月後に再度評価を実施した。本研究の主な目的は、外来癌治療における鎮痛薬の使用率を評価することであった。

本研究では、疼痛リスクのある患者3,023名が特定され、そのうち2.026名(67%)が鎮痛薬、いわゆる痛み止めを投与されていた。対象患者の約1/4が少数民族であり、その内訳は、ヒスパニック9%、黒人12%、アジア人1%、その他1%であった。疼痛リスクのある患者2,026名のうち、1,356名(67%)は十分な疼痛管理を受けていた。重度の疼痛を報告した20%の患者は鎮痛薬の投与を受けておらず、初回の評価時点で疼痛治療が十分ではなかったこの406名のうち、31%が以降の来院で適切な治療を受けた。本研究の結果、ヒスパニック以外の白人患者が初回評価および追跡評価の両方で十分な疼痛治療を受けていない確率は、少数民族の患者の約半分であることがわかった。

興味深い点として、年齢および性別の差はなかったが、疼痛のある癌サバイバーにも十分な治療を受けている患者が少なかった。

M.D.アンダーソンがんセンター総合腫瘍科の准教授・主任であり、本研究の筆頭著者であるMichael Fisch医師によると、「疼痛は、癌において最も恐れられている症状であり、患者の生活の質や身体機能に甚だしい影響を及ぼす」という。「本研究の結果、疼痛治療が十分であるかどうかには大きな差があり、少数民族では治療不十分の患者が白人の2倍に上る可能性があることがわかった。この重大な問題が明らかになったことは、医療における大きな機会と捉えて、民族間格差を解消するべく尽力しなければならない」。

格差の理由としては、文化および意思伝達の障壁、医療を受ける機会の有無、薬物中毒の懸念や疼痛を認めたがらないこと、専門家による症状管理や効果的な患者教育の有無など、多数が挙げられている。

医療提供者側における暗黙の固定観念やバイアスも、その自覚や意図はなくても、要因の一つである可能性があるとFisch氏は述べている。しかし、Cleeland氏は、十分な医療を提供できない施設では白人も少数民族も疼痛治療が不十分であったことから、全体的な資源不足が示唆されていると指摘する。

本研究自体にも、対象とした癌の種類が少なく、患者の併存症や社会経済的状態に関するデータを収集していないなど、限界がないわけではない。

よりよい症状コントロールを行うためには、まず、医師が偏見を持たずに患者にとって必要なことを適切に判断するとともに、患者と介護者側がもっと積極的に疼痛の強さやその他の症状を伝えるようにすることから始めなければならないという点では、Fisch氏もCleeland氏も同意見である。両氏は、疼痛以外の症状や精神的苦痛、疲労を観察することによって、今回の研究結果を追跡する予定である。

発表論文は、Fisch氏およびCleeland氏のほか、M.D.アンダーソンがんセンターのTito R. Mendoza医学博士も共同執筆した。その他の共著者を以下に記載する。Ju-Whei LeeおよびJudi B. Manola(ダナ・ファーバー癌研究所)、Matthias Weiss医学博士(Marshfield Clinic)、Lynne I. Wagner医学博士およびDavid Cella医学博士(Northwestern University Feinberg School of Medicine)、Victor T. Chang医師(New Jersey Healthcare System)、Lori M. Minasian医師およびWorta McCaskill-Stevens医師(米国国立癌研究所[NCI])。

本研究では、NCI、米国国立衛生研究所および米国社会保健福祉省からの助成金として一部の資金援助を受けた。利害の対立が発生するおそれがある著者は存在しない。本研究の詳細については、ウェブサイトwww.ecogsoapp.orgを参照のこと。

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市中芳江 訳
林正樹(血液・腫瘍内科/敬愛会中頭病院) 監修
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原文


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