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隠れた乳癌の循環腫瘍細胞を発見する新しい検出方法/M.D.アンダーソンがんセンター

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隠れた乳癌の循環腫瘍細胞を発見する新しい検出方法/M.D.アンダーソンがんセンター

M.D.アンダーソンがんセンター
2009年12月11日

M.D.アンダーソンがんセンターの研究によると、血中の転移性乳癌細胞では上皮受容体が消失することがあり、そのプロセスによって検出されずに血流を流れていくことができるようになるという。[pagebreak]この成果はCTRC-AACRサンアントニオ乳癌シンポジウムで発表された。

循環腫瘍細胞(CTC)は原発腫瘍や転移腫瘍から剥がれ落ちたもので、CTCの量によって治療法の選択をしたり患者の予後が予測されてきた。しかし上皮間葉転換(EMT)を起こしたCTCは現在の検出法では検出されず、従来の予後因子としての価値や治療法選択上の価値は失われてしまう。またこうした癌細胞は化学療法や放射線療法に対してより抵抗性を示す。これらの検出不能な乳癌細胞を確実に検出する方法があれば、乳癌や他の上皮性腫瘍を有する患者において微小転移の根絶に役立つような新たな治療標的を見つけることができるであろう。

EMTと浸潤−転移カスケード

EMTは癌細胞が分化転換(異なるタイプの細胞に形質転換すること)を行うプロセスである。「癌細胞は浸潤−転移カスケードの何段階ものステップを実行できる能力を獲得するために分化転換プログラムを発動させます」と筆頭著者であるM.D.アンダーソンがんセンター元フェローのMichal Mego医学博士は述べている。「EMTの間に上皮細胞は外観が間葉細胞のようになり、運動性と侵襲性が増強されます。」

博士らはEMTをおこしたCTC(EMT-CTC)はこうした変化によって、CellSearch(Veridex社)などの現行の検出法では検出できなくなる、という仮説を立てた。細胞が化学療法や放射線療法に対して耐性を獲得することからも、EMT-CTCが癌原細胞であり、腫瘍転移の原因に関わっていることが示唆されている。さらに博士らは、脳転移を有するか、トリプルネガティブであるか、または炎症性乳癌であるといった高リスクの患者群では血液検査でCTCの増加が認められないことを見出し、このことも博士らの仮説の裏づけとなっている。

EMT遺伝子発現を利用したCTC検出

そこで博士らは乳癌患者の末梢血中のEMT-CTCを同定できる検出方法の開発に着手した。年齢34〜72歳(中央値54歳)の患者27人から約5 mLの末梢血を採取した。16人が転移を、19人が炎症性乳癌を、12人が非炎症性の原発乳癌を有していた。

「末梢血中の造血細胞の大半を補足できる磁気ビーズ標識モノクローナル抗体を用いることによって、CTCが多く含まれた分画を得ました」と現在はスロバキア共和国National Cancer Instituteの研究者であるMego博士は述べた。「次にこれらの細胞からRNAを抽出し、ポリメラーゼ連鎖反応などの分子生物学的手法を使って、上皮間葉転換に関わる遺伝子を検出しました。」

それにより、5個のEMT遺伝子(TWIST1、SNAIL1、SLUG、ZEB1、FOXC2)が同定された。患者の21%で5個のうち1個以上の遺伝子が過剰発現していた。EMT遺伝子の過剰発現は、トリプルネガティブの乳癌患者でそれ以外の患者に比べて高い頻度で認められた。EMT遺伝子の発現と、CellSearchやEp-CAM(上皮細胞接着分子)として知られる癌関連抗原で測定したCTC数との間に相関は認められなかった。

「今回の研究から、現在のCTC検出法では転移に関わる、すなわち癌原性を有する最も重要な種類のCTCを少なく見積もってしまうことが分かりました」とM.D.アンダーソンがんセンター血液病理学科教授で本研究の統括著者であるJames Reuben博士は述べた。「われわれが開発した、EMTを起こした後のCTCを検出できる新しい検出方法では重要な新しい予後に関する情報を得ることができる上、この方法は治療の有効性のリアルタイムでのモニタリングに有用だと思われます。」

M.D.アンダーソンがんセンターとスロバキアNational Cancer Instituteの研究チームは転移性の乳癌・前立腺癌・大腸癌患者を対象に確認試験を開始している。またEMT-CTCの治療標的を同定するためにデザインされた試験も開始している。

M.D.アンダーソンがんセンターのMego氏、Reuben氏の他の共著者は以下のとおりである。Massimo Cristofanilli, M.D., Eleni Andreopoulou, M.D., and Summer Jackson, all of the Department of Breast Medical Oncology; Hui Gao, Ph.D. Changping Li, M.D., Sanda Tin, M.D. and Evan Cohen, all of the Department of Hematopathology; and Sendurai Mani, Ph.D., Department of Molecular Pathology.

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安田詠美 訳
島村 義樹(薬学)監修
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原文


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