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2012/05/29号◆特集記事「S状結腸鏡検査が大腸癌検診に有効」

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2012/05/29号◆特集記事「S状結腸鏡検査が大腸癌検診に有効」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2012年5月29日号(Volume 9 / Number 11)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇

S状結腸鏡検査が大腸癌検診に有効

55~74歳の健康な男女で行われた大規模ランダム化試験において、S状結腸鏡検査は大腸癌の発生率と死亡率を大きく減少させた。追跡期間中央値12年において、大腸癌の発生率は21%、死亡率は26%減少した。NCIが助成する前立腺癌、肺癌、大腸癌、卵巣癌(PLCO)検診試験による今回の知見は、5月21日付New England Journal of Medicine誌電子版に発表された。

S状結腸鏡や大腸内視鏡による内視鏡検診が大腸癌による死亡を防ぐという証拠が集まりつつあるが、今回の結果もその1つとなった。英国での大規模試験において、55~64歳を対象とした1回のS状結腸鏡検査が、大腸癌の発生率と死亡率を大きく減少させることが2010年に明らかとなっている。

PLCO試験において、ピッツバーグ大学癌研究所のDr. Robert Schoen氏らは、S状結腸鏡検査中にはポリープ切除は行わず、検診でポリープや疑わしい癌が発見された参加者は大腸内視鏡検査を受けるようにさせた。ポリープはその後の大腸内視鏡検査の際に切除された。(左側の直腸に近い大腸遠位部の小さなポリープはS状結腸鏡で切除できるが、PLCO試験では行われなかった。)

「PLCO試験で見られた効果の多くは、S状結腸鏡検査により必要と判断された大腸内視鏡検査によるものです」と、NCI癌予防部門の部長でPLCO試験の責任医師であるDr. Barry Kramer氏は説明した。

PLCO試験では、1993年から2001年にかけて平均的な大腸癌リスクの15万5000人を、S状結腸鏡検査を試験開始時に行いその後3年または5年毎に検診を繰り返す群と、(検診を行わず)通常の診療を行う群とに無作為に割り付けた。

S状結腸鏡検査群に割り付けられた7万7445人のうち、84%が初回のS状結腸鏡検査を受け、54%が2回目の検査を受けた。S状結腸鏡検査で異常所見があった参加者の約80%は、異常が指摘された検診から1年以内に主に大腸内視鏡検査による精密検査を受けた。

全体では検診群の22%がS状結腸鏡による検診での異常所見に基づき大腸内視鏡検査を受けた。

この大腸癌検診がPLCO試験中に米国で承認されたため、通常診療群の約半数は本試験以外で内視鏡による大腸癌検診も受けた。この「混入」は検診の効果を弱めるだろうと、NCIの早期発見研究部門の主任でありPLCO試験のプロジェクトを指揮するDr. Christine Berg氏は説明した。しかし、大腸癌の発生率や死亡率は検診群の方でずっと低かった。

興味深いことに、S状結腸鏡検査と引き続き行われる大腸内視鏡検査は、遠位結腸と近位結腸(小腸に近い右側の結腸)両方での大腸癌発生率を減少させたが、S状結腸鏡検診では遠位結腸における癌死亡率だけを減少させた。

大腸内視鏡検査は「右側大腸よりもS状結腸鏡が届く左側大腸での癌死の減少により効果的」かもしれないと、Kramer氏は説明した。

これに対する1つの理由は、近位大腸では内視鏡では発見しにくい平坦なポリープの頻度が高いことである。近位大腸でポリープを促進する遺伝子変異は、より悪性度の強い癌を発生させると、ワシントン大学のDr. John Inadomi氏は付随論説で指摘した。

現在、米国予防医療専門委員会は3つの大腸癌検診法を推奨している。つまり、50~75歳の人が対象のS状結腸鏡、大腸内視鏡、高感度便潜血検査(FOBT)である。FOBTは非侵襲的な検査で、大腸癌を見つけることができるが小さい前癌性ポリープは見つけることができない。

1つ以上の効果的な検診を受けることが重要であると、Kramer氏は述べた。「各人の検診に対する希望を確認して尊重すべきです。人によっては大腸内視鏡検査よりもFOBTやS状結腸鏡検査の方を進んで受けるかもしれません。しかし、どの検診を選択しても検診を受けることが効果的であるという証拠が増えつつあります」。

「大腸内視鏡検査を受けたくないという理由だけで、大腸癌検診を完全に拒否すべきではありません」と、Berg氏は要請した。

最適な検診の実施や間隔を決定するために、さらなる研究が必要であると同氏は付け加えた。例えば、大腸癌リスクが低い人は、生涯に1回だけの大腸内視鏡検査で安全かどうかや、非侵襲的で感度が低いFOBTや免疫便潜血検査は、頻回に実施でき患者から受け入れられやすいので、より多くの癌を発見できるかどうかなどである。

米国では過去10年間にS状結腸鏡の使用が減少した。最近の研究では、調査対象の一次診療医の53%が、2003年以降S状結腸鏡検査の割合が大幅にもしくは若干減少したと報告している。

S状結腸鏡検査の放棄は時期尚早である。「ランダム化比較試験で利益が示されている軟性S状結腸鏡検査や便潜血検査を放棄する前に、大腸内視鏡検査の優位性を示す質の高い証拠がなければなりません」と、Inadomi氏は結論した。

— Sharon Reynolds

進行中の大腸内視鏡検査によるランダム化比較試験今年初めに、大腸癌のリスクが平均以上である人対象の米国での試験の長期追跡結果が明らかとなり、大腸内視鏡検査とポリープ切除は大腸癌による死亡を減少させることが示された。平均的な大腸癌リスクの人を対象とした大規模試験は現在進行中であり以下のものがある。
大腸癌に関する北欧イニシアチブr(欧州)
COLONPREV(欧州)
CONFIRM(米国)
緩下剤なしのCTコロノグラフィは大きなポリープを発見するCTコロノグラフィは、仮想大腸内視鏡とも呼ばれるが、前処置として大腸を空にするために、従来の大腸内視鏡と同様に緩下剤を必要とすることが多い。Annals of Internal Medicine誌5月15日号で発表された研究によると、緩下剤なしのCTコロノグラフィは、緩下剤を用いて前処置を行う、通常の大腸内視鏡検査と同程度に大きなポリープを発見した。605人の試験参加者は数日間、食物繊維が少ない食事をし、造影剤を服用した。この造影剤で便を標識し、コンピュータが便を「取り除いた」診断用画像を作ることが可能になる。また、全ての参加者は可視光による大腸内視鏡検査を受けて、2つの検査の正確性を比較できるようにした。緩下剤なしのCTコロノグラフィは、10 mm以上の腺腫を通常の大腸内視鏡と同様に発見できたが、より小さいポリープの発見には効果が小さかった。2つの検査を評価した465人の参加者のうち、62%は今後の検査として緩下剤なしのCTコロノグラフィを希望した。CTコロノグラフィは検診手段としてはメディケアの対象となっていない

詳細情報:「バーチャル内視鏡」は大きなポリープを検出できる

【上段画像下キャプション訳】

S状結腸鏡検査(左)は、細くてライトが付いたチューブを肛門から直腸、下部結腸へと挿入し異常部位を見つける。大腸内視鏡検査(右)は、同様の装置を用いて大腸全体を見る。(イラストはTerese Winslow氏からNCIに提供) [画像原文参照

【下段画像下キャプション訳】

大腸ポリープは腫瘍であり大腸癌になりうる。平坦であるものや茎があるものがある。(イラストはTerese Winslow氏からNCIに提供) [画像原文参照

 

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野長瀬祥兼 訳
斎藤 博 (消化器内科・検診/国立がんセンター がん予防・検診研究センター) 監修
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