2012/05/15号◆癌研究ハイライト「低線量放射性ヨードが術後の残存甲状腺を破壊」「ゲノム塩基配列研究でメラノーマに関与する遺伝子を特定」「実験的遺伝子治療が化学療法の毒性作用から正常細胞を保護」「(囲み記事)その他のニュース:日光日焼けと室内日焼け装置の利用は依然として多い」 | 海外がん医療情報リファレンス

2012/05/15号◆癌研究ハイライト「低線量放射性ヨードが術後の残存甲状腺を破壊」「ゲノム塩基配列研究でメラノーマに関与する遺伝子を特定」「実験的遺伝子治療が化学療法の毒性作用から正常細胞を保護」「(囲み記事)その他のニュース:日光日焼けと室内日焼け装置の利用は依然として多い」

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2012/05/15号◆癌研究ハイライト「低線量放射性ヨードが術後の残存甲状腺を破壊」「ゲノム塩基配列研究でメラノーマに関与する遺伝子を特定」「実験的遺伝子治療が化学療法の毒性作用から正常細胞を保護」「(囲み記事)その他のニュース:日光日焼けと室内日焼け装置の利用は依然として多い」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2012年5月15日号(Volume 9 / Number 10)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
PDFはこちらからpicture_as_pdf
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◇◆◇ 癌研究ハイライト ◇◆◇

・低線量放射性ヨードが術後の残存甲状腺を破壊
・ゲノム塩基配列研究でメラノーマに関与する遺伝子を特定
・実験的遺伝子治療が化学療法の毒性作用から正常細胞を保護
・(囲み記事)その他のニュース:日光日焼けと室内日焼け装置の利用は依然として多い

低線量放射性ヨードが術後の残存甲状腺を破壊

New England Journal of Medicine誌5月3日号に掲載された欧州のランダム化比較試験2件によれば、甲状腺癌の術後に投与した低線量の放射性ヨードによって、高線量放射性ヨードと同等の効果で残存する甲状腺組織が破壊(焼灼)され、副作用および放射線曝露量も少なかった。両試験とも、放射性ヨードの線量に関係なく、放射性ヨード治療前の甲状腺刺激ホルモン(サイロトロピン)αの投与または甲状腺ホルモンの中止が、甲状腺焼灼に有効であることを示した。

フランスと英国で実施された試験(ここここ)にはそれぞれ、低リスクの甲状腺癌患者752人および438人が参加した。いずれの試験でも、術後数カ月経過した患者を低線量放射性ヨード(1.1 GBq)群または高線量放射性ヨード(3.7 GBq)群に無作為に割り付けた。

放射性ヨード治療から効果を得るには、甲状腺刺激ホルモンが高値でなければならない。このため研究者らは、両群の患者を術後甲状腺ホルモン補充療法中止群(体の自然な甲状腺刺激ホルモン値を上昇させるため)または遺伝子組換え甲状腺刺激ホルモン(甲状腺刺激ホルモンα)投与群に無作為に割り付けた。甲状腺刺激ホルモンαの投与は甲状腺ホルモン補充療法の中止ほど不快感を生じるものではないが、放射性ヨード治療の効果に薬剤が干渉するかもしれないという懸念があった。

両試験とも、放射性ヨードによる焼灼に成功した症例数は低線量と高線量でほぼ同じであった。成功率は、フランスの試験では患者の95%、フランスの試験よりも腫瘍が大きい患者が参加した英国の試験では患者の85%であった。両試験ともに、甲状腺刺激ホルモンα群で比較しても、甲状腺ホルモン補充療法中止群で比較しても、焼灼の成功率は両線量間で有意差はなかった。

局所再発または遠隔再発の危険度が低い甲状腺癌患者では、放射性ヨードを用いて残存甲状腺を焼灼することによって経過観察が容易になるため、米国では使用が増えてきている。最近の研究から、低リスク甲状腺癌の若年患者に対する焼灼術の使用が、1973年の約3%から2007年には約40%に増加したことが判明した。

しかし、放射性ヨード治療によって低リスク患者の生存期間が延長するかどうかは明らかではない。「そもそも甲状腺癌の生存率は良好なので、低リスク患者でその効果を証明するのはかなり難しい」、と両試験の付随論説の共著者であるハーバード大学医学部のDr. Erik Alexander氏が説明している。放射性ヨードによって低リスク患者の無病生存期間が延長するかどうかをみる臨床試験が最近英国で開始された

ゲノム塩基配列研究でメラノーマに関与する遺伝子を特定

転移性メラノーマの腫瘍組織試料を用いて全ゲノム塩基配列を決定する研究によって、メラノーマでよく変異がみられ、腫瘍の増殖および転移を促す可能性がある遺伝子PREX2が特定された。この研究結果は5月9日付Nature誌電子版に掲載され、染色体の再配列がメラノーマの進行および治療への抵抗性に関与している可能性も示していると、著者らは述べている。

この研究を実施するにあたって、ダナファーバー癌研究所およびハーバード大学医学部所属のDr. Levi Garraway氏をはじめ、米国および欧州にある多数の研究所の研究者らが、転移性メラノーマの25の腫瘍組織試料の全ゲノム塩基配列を決定し、同じ患者の正常組織と照合した。

研究者らは、変異遺伝子の数は腫瘍を採取した体の部位によって異なることを発見した。日光曝露をほとんど受けない部位の腫瘍には遺伝子に最小限の変異しかみられなかったが、日光曝露をいつもよく受ける部位から採取した試料にはかなり多くの変異がみられた。慢性的に日光曝露を受けていた患者から採取した試料には、最大数の変異が認められた。

著者らの報告では、同じ染色体内および染色体間の染色体再配列(転座とも呼ばれる)が多く認められた。なかには複雑なものがあることやその場所から、再配列が「メラノーマの発症または進行に大きく関与すると考えられる」と述べている。

染色体再配列はPREX2遺伝子の周囲で高頻度にみられた。最も多い変異遺伝子はBRAFとRASであったが、いずれもメラノーマとの関連は既知であり、PREX2にも多くの変異があった。107のメラノーマ腫瘍組織試料を追加分析したところ、先の結果を裏付けるものであり、腫瘍の約14%にPREX2変異があった。

メラノーマが最初に発生するのは色素産生細胞であるメラニン細胞であるが、研究者らは、PREX2変異があるメラニン細胞を移植したマウスでは、PREX2変異がない同細胞を移植したマウスよりも腫瘍増殖が大幅に加速されたことも明らかにした。

PREX2は癌とよく関連する遺伝子の性質にすっきりとはあてはまらないようであると、研究者らは報告している。共著者であるスローンケタリング記念がんセンターのDr. Michael Berger氏は、「その変異パターンは腫瘍抑制遺伝子により近いようである。ただ、機能解析からは、発癌遺伝子のような振る舞いであった」とニュースリリースで話している。

実験的遺伝子治療が化学療法の毒性作用から正常細胞を保護

化学療法の毒性作用から正常な血液幹細胞を保護するための遺伝子治療のプルーフオブコンセプト(概念実証)試験で、膠芽腫患者3人が高用量の試験薬に忍容性を示した。この種の脳腫瘍は予後が不良であるが、3人とも同種の脳腫瘍患者の生存期間中央値よりも長く生存した。1人の患者は診断後2年以上も増悪せずに生存している。フレッド・ハッチンソンがん研究センターのDr. Hans-Peter Kiem氏をはじめとする研究者らがScience Translation Medicine誌5月9日号に研究結果を発表した。

この3人の患者にはMGMTと呼ばれる遺伝子が過剰発現した腫瘍があった。O6-ベンジルグアニン(O6-BG)と呼ばれる試験薬がMGMTから生成するタンパク質を抑制し、テモゾロミドなどの抗癌剤に対する腫瘍の感受性を高めるが、造血幹細胞をはじめ正常な血液細胞に対する化学療法の毒性作用も増大する。研究者らは、O6-BG治療に忍容性をもたせるために、細胞をO6-BG抵抗性にする P140Kと呼ばれるMGMT変異遺伝子を患者の血液幹細胞に挿入した。

患者はまず腫瘍を最大限切除するための外科手術を受け、続いて放射線治療を受けた。次に患者の血液から幹細胞が採取された。この幹細胞は実験室で培養され、ウイルスを用いて変異遺伝子が細胞内に挿入された。これは形質導入として知られる過程である。次に、患者はカルムスチンによる化学療法を受けた。最後に、形質転換した幹細胞が患者に注入され、患者はさらにO6-BGとテモゾロミドによる化学療法を受けた。

各患者は、少なくとも3サイクルの併用化学療法に忍容性を示し、1人の患者は9サイクルの治療を受けた。幹細胞移植後、最長14カ月間MGMT変異遺伝子を有する正常血液細胞が検出された。研究期間中に白血病の徴候を示す骨髄の変化はなかったが、研究者らは、生存している患者の経過観察で形質転換した幹細胞をモニターしていく予定である。(遺伝子療法で懸念されることのひとつは、正常ゲノムの二次癌発生の引き金となるような場所に外来遺伝子が挿入される可能性があることである。)

患者に毒性がみられず、生存期間が比較的良好であったということは、「この方法によって、この化学療法を複数サイクル、おそらく以前より効果的な高用量でも投与することが可能となり、さらに良好な治療結果が得られることを示唆している」と著者らは締めくくった。

その他のニュース:日光日焼けと室内日焼け装置の利用は依然として多い米国の若年成人が皮膚癌リスクを高める行為をしていることを、新たな報告2件が示している。最初の研究によれば、日光から皮膚を保護するために日焼け止めや日陰を利用したり、足首まである長い衣類を着用する人が多くなっているが、日焼けは相変わらず多い。18〜29歳の全成人の半数がこの1年間に少なくとも1回は日焼けをしていると報告した。2番目の研究では、18〜25歳の非ラテンアメリカ系白人女性の約30%が室内日焼け装置を利用しており、皮膚癌リスクをかなり増大させていることが判明した。両報告とも5月11日付週刊疾病率死亡率報告に掲載された。

 

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ギボンズ京子 訳
後藤 悌 (呼吸器内科/東京大学大学院医学系研究科) 監修
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