2012/05/15号◆特集記事「多発性骨髄腫治療におけるレナリドミドの役割の大きさが複数の研究で裏づけられた」 | 海外がん医療情報リファレンス

2012/05/15号◆特集記事「多発性骨髄腫治療におけるレナリドミドの役割の大きさが複数の研究で裏づけられた」

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2012/05/15号◆特集記事「多発性骨髄腫治療におけるレナリドミドの役割の大きさが複数の研究で裏づけられた」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2012年5月15日号(Volume 9 / Number 10)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇

多発性骨髄腫治療におけるレナリドミドの役割の大きさが複数の研究で裏づけられた

5月10日付New England Journal of Medicine誌に報じられた3つのランダム化プラセボ対照試験結果によれば、レナリドミド(Revlimid)を使った維持療法により、多発性骨髄腫患者の無増悪生存期間が大幅に延長される。(試験の要約は下記の表リンクを参照)。うち一つの試験では全生存も改善したが、これについてはそれほど決定的な結果ではないと複数の研究者が言及した。

今回の研究結果はまた、レナリドミドの維持療法が二次原発癌のリスクを高めることも示唆した。主にこれらの知見への対応として、米国食品医薬品局(FDA)は先週、このリスク情報について医薬品安全情報の改訂版を発行し、医師と患者の注意を喚起した。

二次原発癌を起こす「リスクは小さくとも、実在するリスクである」と、一つの臨床試験の責任医師であるロズウェル・パーク癌研究所のDr. Philip McCarthy氏は語った。この臨床試験は、NCIから資金提供を受けた。

プラセボによる維持療法を割り付けられた患者は、レナリドミドによる維持療法を割り付けられた患者より、多発性骨髄腫が進行するリスク、あるいは死に至るリスクが高かったと、同氏はつけ加え、「医師と患者は、こうした(要因の)バランスを考える必要があります」と話した。「しかし大部分の患者にとっては、レナリドミドによる維持療法を考慮するのが妥当だと思います」。

避けられない進行を遅らせる

多発性骨髄腫患者に対する現行の標準治療は、2種類以上の化学療法薬を使った寛解導入療法から始まる。最近ではレナリドミドまたはボルテゾミブ(ベルケイド:Velcade)、あるいはその両方をステロイドと併用する。患者が65歳以下である場合には、その後に自家幹細胞移植を行うことが多い(幹細胞移植には顕著な副作用が伴う可能性があるため、高齢または全身状態が不良な患者への使用が制限される)。

これらの治療により、多くの患者の癌は安定するか、部分的あるいは完全な寛解状態になる。しかしほぼすべての患者において、大抵の場合は数年以内に再発すると、NCIがん研究センターの多発性骨髄腫部門長のDr. Ola Landgren氏は話した。

寛解導入治療の効果を強固なものにし、できる限り長く癌の進行を食い止めるためのさまざまな維持療法が、これまで研究されてきた。たとえばサリドマイドを使った維持療法は、いくつかの臨床試験で、無増悪生存期間を延長することが示され、全生存を改善する可能性も示唆された。しかしサリドマイドを使った長期的な治療では、重症の末梢神経障害といった衰弱をもたらす副作用を生じると、セント・ルイスにあるワシントン大学サイトマンがんセンターのDr. Keith Stockerl-Goldstein氏は説明した。

「毒性のために多数の患者がサリドマイド治療を中止しています」と、同氏は話した。この毒性が、サリドマイドの使用を限定的なものにしている。「レナリドミドやボルテゾミブのような毒性の低い薬剤なら、副作用なしに生存利益を得るという希望がありました」。

進行を遅らせる

NCIの資金提供により米国で行われた臨床試験と、フランスの研究者が主導して欧州で行われた臨床試験では、自家幹細胞移植を受けた患者(米国の試験は71歳未満、欧州の試験は65歳未満)で、レナリドミドとプラセボによる維持療法を比較した。欧州の試験では、両群ともに維持療法の前に、短期間に大量投与するレナリドミドの「強化」療法が実施された。

欧州、オーストラリア、イスラエルで実施された3つ目の試験は、65歳以上の新たに多発性骨髄腫の診断を受けた患者を対象に、レナリドミドとプラセボによる維持療法を比較した。対象は、寛解導入治療を受けており、自家幹細胞移植の対象にはならなかった患者である。

これら3つの臨床試験すべてにおいて、レナリドミドの維持療法は患者の癌が再び進行するまでの期間を大幅に延長した。(下表を参照)

多発性骨髄腫のレナリドミド維持療法の3つの臨床試験における無増悪生存期間

臨床試験 自家幹細胞移植 維持療法を受けた患者数 無増悪生存期間の中央値
レナリドミド プラセボ
米国 実施 460 39カ月
46カ月
21カ月*
27カ月**
欧州 実施 614 41カ月 23カ月
欧州、オーストラリア、イスラエル 実施せず 248 31カ月 14カ月

*2009年に臨床試験が非盲検化された時からのデータ
**34カ月の中間フォローアップの後。クロスオーバーした患者を含む。

米国の臨床試験では、この臨床試験が非盲検化された(すなわちどちらの治療を受けているかが患者および主治医に知らされた)2009年12月上旬以降にプラセボ群からレナリドミドの維持療法群に移った患者がいたにも関わらず、レナリドミド維持療法は3年後の全生存率の改善(88%対80%)を示した。

この非盲検化は、試験の中間データ分析により、両群の無増悪生存期間に顕著な差が見られたために行われたものである。プラセボに割り付けられた患者は、その際にレナリドミド投与を受ける選択肢を与えられ、約3分の2の患者がレナリドミドの投与を開始した。

しかしこのクロスオーバーが「長期的な全生存改善効果の検出を困難にするかもしれません」と、McCarthy氏は話した。

二次原発癌と未解決の問題

レナリドミドの投与を受けた患者における副作用には、もっと高頻度のものがあるが、最も重篤なのは二次原発癌の発生である。

多発性骨髄腫、およびその前段階で意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症として知られる病態は、急性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群といった二次原発癌の発生に独立して関連することが、これまでの研究により明らかになっている。

多発性骨髄腫に続く二次原発癌のリスクには多数の要因が影響する可能性があると、Landgren氏は言及した。しかしこの3つの臨床試験すべてにおいて一致して、レナリドミドの維持療法ではより多くの患者で新たな原発癌が発生していることから、レナリドミドが要因であることが強く示唆される。しかしながら、この二次原発がんのリスク上昇については、少数の発生例に基づいたものであり、患者と話し合うべき事柄だと同氏は話した。

この臨床試験の結果で、多発性骨髄腫の新たな標準治療を確立するかどうかは、「意見が分かれる可能性がある」と、メリーランド大学グリーンバウムがんセンターのDr. Ashraf Badros氏は付随論説で述べた。

Stockerl-Goldstein氏もこれに同意した。最適な治療期間や、他の2つの臨床試験では全生存の改善が見られなかったこと、無増悪生存期間の延長が生活の質の改善につながるのかといった疑問に対する答えはまだ出ていないと、同氏は強調した。

そうした不明点はさらに、レナリドミドを使った長期治療の費用対効果に対する疑問も投げかけるとBadros氏は書いた。同氏の試算によれば、維持療法の費用は検査や診療等の諸費用を除いた薬価だけでも年間16万ドルになる。

レナリドミド維持療法の後に二次原発癌の発生リスクが高い患者群や、維持療法によって利益を得る可能性の高い患者群を示すバイオマーカーを同定するため、Landgren氏とNCIの研究者らは3つの臨床試験の患者から採取した腫瘍サンプルを分析するプログラムを立ち上げた。この取り組みを加速するため、研究チームは臨床試験に参加していない多発性骨髄腫患者で、二次原発癌が発生した患者からのサンプル分析も考えていると、Landgren氏は語った。

こうした未解決の問題があるにせよ、研究者らは多発性骨髄腫に関するこのところの進歩に興奮している。多発性骨髄腫には長年にわたって顕著な臨床的進歩がなかったが、この10年は治療法の改善により生存率が3倍に上昇したとLandgren氏は語った。

— Carmen Phillips

 

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片瀬ケイ 訳
吉原 哲(血液内科・造血幹細胞移植/兵庫医科大学病院) 監修
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