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転移乳癌にタキサンの併用はアントラサイクリンよりわずかに良好な結果

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転移乳癌にタキサンの併用はアントラサイクリンよりわずかに良好な結果

Taxane Combinations Marginally Better than Anthracyclines for Metastatic Breast Cancer
(Posted: 05/21/2008) Journal of Clinical Oncology誌2008年4月20日号によると、新たに診断された転移乳癌患者においてタキサン投与を受けた患者は、アントラサイクリン投与の患者よりわずかに良好であるとの結果が11の臨床試験の結果をまとめたデータから得られた。

要約
11件の臨床試験結果をまとめたデータにより、新たに診断された進行性乳癌の治療にタキサン系薬剤(パクリタキセルまたはドセタキセル)を投与した患者と、アントラサイクリン系薬剤(エピルビシンまたはドキソルビシン)を投与した患者の生存期間の長さがほぼ同様であることがわかりました。ただし、単剤としてはアントラサイクリンの方が無憎悪生存期間が延長されていました。タキサンベースの併用では、アントラサイクリンベース併用よりも奏効率が良好であり、無憎悪生存期間も延長されていました。

出典
Journal of Clinical Oncology誌 2008年4月20日号(ジャーナル要旨参照)。
(J Clin Oncol.2008 Apr 20; 26(12): 1980-86)

背景
進行性乳癌の女性患者では、疾患が体の他の部位に広がった(転移した)状態です。こうした患者において、治療による治癒はまれですが、症状が軽減し、生存期間が中央値18~24カ月を越えて延長されることもあります。患者の疾患特性により、癌の広がりを制御し遅らせ、その他の症状を軽減する方法として化学療法がよく推奨されます。

長い間、進行性乳癌に対する化学療法のほとんどが、ドキソルビシン(アドリアマイシン)およびエピルビシン(エレンス)のようなアントラサイクリン系薬剤などを使用していました。そして1990年代には、ドセタキセル(タキソテール)およびパクリタキセル(タキソール)などのタキサン類と呼ばれる薬剤が、進行性乳癌の一次(初回)治療と、アントラサイクリンに耐性を示した女性患者の治療に効果的であることがわかりました。

しかし、タキサンの方が高価で、副作用が多いと考えられています。アントラサイクリンも、心臓障害および二次性白血病などの重大な副作用を引き起こすことがあります。では、新たに進行性乳癌と診断された女性に対し、どちらの薬剤を用いるが良いのでしょうか?併用して使用するべきでしょうか、それとも単剤で使用する方がより効果的なのでしょうか?以下の約4,000人の患者を対象とした11件の臨床試験の結果をまとめた分析は、その疑問に対処すべく行われました。

試験
ヨーロッパと北アメリカの研究者らが、進行性乳癌の一次治療においてアントラサイクリンとタキサンを比較した11件の前向き臨床試験のデータをまとめました(メタアナリシスと呼ばれる)。

研究者らは、(2001年末までに患者の受け入れを止めた試験での)医学論文のデータベースを調査し、乳癌および腫瘍学会議の議事録を再検討してこの11件の試験を探し出しました。

うち3件は単剤試験で、ドキソルビシン(アントラサイクリン系)に対し、パクリタキセルまたはドセタキセル(タキサン系)を比較検証したものでした。その他の試験は、各種タキサンベースの併用と各種アントラサイクリンベースの併用との比較でした。

この試験の筆頭著者は、 Jules Bordet Institute(ベルギー・ブリュッセル)のMartine J. Piccart-Gebhart医学博士です。

結果
3件の単剤試験の919人と8件の各種薬剤併用試験の3,034人の患者が、分析に利用できました。単剤としては、1件の試験においてのみ、ドキソルビシンの方がパクリタキセルより良好でしたが、この試験においてパクリタキセルは、その後の標準治療となった毎週投与ではありませんでした。この試験を除けば、単剤を比較したその他すべての試験において、生存期間に差はありませんでした。

薬剤の併用では、腫瘍進行に対してタキサン併用はアントラサイクリン併用よりも8%効果的でしたが、この治療を受けた女性患者の生存期間は延長されませんでした。また、タキサン併用療法を受けた女性の方が、腫瘍の治療に対する反応が27%良好に見え、多少症状が軽減しましたが、生存期間は延長されませんでした。

過去の試験で、患者の特定のサブグループにおいてアントラサイクリンよりもタキサンの方が有益であった可能性を示唆したものもありましたが、今回のメタアナリシスではその結論には達しませんでした。疾患がエストロゲン受容体陰性の患者でも陽性の患者でも有意差はなく、癌が体の他の特定の領域まで広がった(内臓疾患)患者においても差はありませんでした。

制限事項
多数の試験結果を集めても、研究者らは問題の「全体像」しか見ることができません。個体差(患者集団と試験がどのように設計されたか)は、平均される傾向があります。著者らは、結果が「控え目」で、どの治療が乳癌患者の特定のサブグループに最も有効であるか確認するには、さらなる臨床的試験が必要であると強調しています。

コメント
癌研究者は、多くの場合、特定の薬剤または治療の種類が患者の生存期間を延長するかどうかを確認するために臨床試験を利用します。NCI癌治療評価プログラム(Cancer Therapy Evaluation Program)で乳癌試験を監督するJoAnne Zujewski医師は、「多くの女性が『このメタアナリシスの対象となった薬剤』の恩恵を受けています。症状を制御することは、進行性乳癌治療の重要な部分です」と述べました。

また、化学療法を受けている癌患者はそれぞれライフスタイルが異なり、副作用に対する考え方も異なることを指摘しました。「ですから、患者は担当医と共に個々の選択をする必要があるのです」と彼女は説明しました。
「今回の結果により、医師と患者がタキサンを使用するか決定する際、副作用、利便性および費用について考えることができます」

「通常、進行性乳癌を治療することができないという事実は、こうした薬剤にはいくらかの有益な効果があり、生存の質と治療の強度に関して患者に選択肢を提供する知見を無効にするものではありません」と、Zujewski医師は話しました。「患者がこの問題を担当医と共に学んで協議することが不可欠です」

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入江 瑞穂 訳
林 正樹(血液/腫瘍内科医、社会医療法人敬愛会中頭病院 血液・腫瘍科部長)監修

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