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脳腫瘍ワクチンが有望/サンフランシスコ大学

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脳腫瘍ワクチンが有望/サンフランシスコ大学

2012年4月17日
News Office: Jason Bardi (415) 502-6397

患者自身の腫瘍由来の試料を用いることで個々の患者に合わせてつくられた新規の脳腫瘍ワクチンに、数カ月以上の延命効果があることが、多施設共同第2相臨床試験で明らかになった。再発性の多形性膠芽腫の患者が対象の試験であるが、米国ではこの疾患により毎年何千人もの患者が死亡している。

4月17日(火曜日)にマイアミで開催された米国脳神経外科学会(AANS)で発表予定のこの報告は、カルフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のヘレン・ディラー・ファミリー総合がんセンター、クリーブランドのケース大学病院群メディカルセンターにあるセイドマンがんセンター、およびニューヨーク市のニューヨーク・プレスビテリアン病院/コロンビア大学医療センターで治療を受けた40人以上の患者に対するワクチンの有効性を比較したものである。

この臨床試験により、ワクチンを受けた患者の生存期間が、同病院で標準治療を受けた80人に比べて数カ月延長できた(47週対32週)ことが判明した。癌ワクチン投与を受け、1年以上延命した患者も数名存在した。

「これは興味ある成績です。」この研究を率いた、UCSFの脳神経外科医であるAndrew Parsa医学博士は述べる。「この結果により、このワクチンを、ワクチンの免疫応答を高める他の薬剤と併用すれば、さらに延命できかもしれないことが示唆されました。」

次のステップは、再発膠芽腫の標準療法であるアバスチン単独療法と比較して、このワクチンとアバスチンの併用療法の効果を調べるためのさらに大規模な、ランダム化臨床試験であるとParsa医学博士は述べる。その臨床試験は、米国国立癌研究所が実施し、年内に患者の登録を開始予定である。

患者会が臨床試験の費用を助成
UCSF脳神経外科は、U.S. News & World Report誌で世界最高の脳神経外科のひとつにランクされている。UCSF脳神経外科の医師らは脳腫瘍を摘出する脳外科手術を年間1,100件以上行っており、この実績により、この30年間に何千人もの癌患者から採取した組織検体を保有する、米国最大規模の脳腫瘍バンクを築くことができた。

第2相臨床試験の費用の一部は、米国国立癌研究所からUCSFへの年間150万ドルの助成―脳腫瘍SPORE(Specialized Program of Research Excellence:優良研究特化プログラム)―から支払われた。10年目となる今回、脳腫瘍SPOREは、基礎研究と臨床試験の成果を治療を提供し患者の進捗をモニタリングするための最善の方法に応用することを意図して助成を行っている。

第2相臨床試験は、患者会であるアメリカ脳腫瘍協会(American Brain Tumor Association)、Accelerate Brain Cancer Cure、および米国脳腫瘍協会(National Brain Tumor Society)の資金からも一部援助を受けている。Parsa医学博士は、これらの会の率先的な活動に信頼を寄せている。

「今回の成果は、彼らなしでは決して実現しなかったでしょう。」Parsa医学博士は述べる。「患者会は、この疾患について患者に情報を発信するための重要な役割を担っています。実験室と臨床現場の隔たりを埋める実用化研究への財政支援における重要性も高まっています。」

Parsa医学博士は、新規ワクチンを製造しているバイオテクノジー企業であるAgenus社から、この臨床試験のための個人的助成、専門助言の報酬あるいは交通費の補てんを受けたことはない。Parsa医学博士とUCSFは、どちらもこの企業との金銭的利害関係はない。

膠芽腫と癌ワクチンに関する背景
毎年約17,000人の米国人が膠芽腫の診断を受けているが、治療を受けても5年生存率はたった2%である。しかも、癌は必ず再発し、いつ再発するかだけの問題だという。

一般的な膠芽腫の治療では、まず脳から癌組織を除去する外科的切除を行う。手術後には通常、除去しきれずに残存した癌細胞を破壊する放射線治療、続けて化学療法が行われる。治療を行っても数カ月後には多数で癌が再発し、その時点で再度手術が行われ、さらに化学療法が追加される。

癌ワクチンは、この10年間の間に現れた比較的新しい治療法である。2010年に、米国食品医薬品局は前立腺癌に対し初の治療用癌ワクチンを承認し、さらに数種の癌ワクチンが臨床試験中である。癌ワクチンの基本概念は麻疹や流行性耳下腺炎などの病気に対するワクチンと同様である。腕への接種により、特定の病原体と闘えるような免疫応答を誘導する。つまり、この場合の病原体は癌である。効果的な免疫応答が誘導されれば、癌を縮小させ、延命することができる。

これまでは、ワクチンにより効果的な免疫応答が生じなかったため、効果はないと考えられていた。癌細胞のすべてが破壊できなかったか、ある人には効果が認められても別な人には効果がなかった。数年前に患者会のいくつかが資金を出し合って主要ながんセンターの医師らに働きかけ、再発性膠芽腫の新規治療方法の提案を求めたことから新規ワクチンの研究が開始された。Parsa医学博士と研究チームは、熱(ヒート)ショックタンパク質と呼ばれる小さな分子に基づいた新規ワクチンの案を提唱した。

熱ショックタンパク質は、臨床試験において患者から外科的手術で摘出した癌から採取された。Agenus社が患者毎にワクチンを調製してそのワクチンを医師に送り返し、医師が患者の腕に年数回注射した。

発表は、「再発性多形性膠芽腫(GBM)患者に対する自家熱ショックタンパク質・ペプチドワクチン(HSPPC-96)第2相多施設臨床試験により、同等の年齢・KPS(ガン治療効果判定基準)・切除範囲の同時期コホートに比べ生存期間が延長」と題され、Andrew Thomas Parsa、Courtney Crane、Seunggu Han、Valerie Kivett、Anne Fedoroff、Nicholas Butowski、Susan Chang、Michael Prados、Jennifer Clarke、Mitchel Berger、Michael McDermott、Manish Aghi、Andrew Sloan、およびJeffrey Bruceにより報告された。

UCSF医療センターについて
UCSF医療センターは、米国の病院トップ10に常にランクされている。革新的な治療、最新の技術、医療専門家と研究者間の協力、心のこもった患者ケアチームが評価されており、UCSF医療センターはカルフォルニア大学サンフランシスコ校の学術的医療センターの役割を果たしている。同センターの国内随一のプログラムは、小児医療、脳神経疾患、臓器移植、女性のための医療および癌が含まれる。同センターはUCSFにおける自立経営事業として運営されており、患者ケアのための運営費をまかなう収入を得ている。

Facebook:www.facebook.com/UCSFMedicalCenterまたはTwitter:@UCSFHospitals でUCSF医療センターをフォロー

このニュースは、ウェブサイト掲載のために編集されました。

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石岡優子 訳
寺島慶太(小児科/テキサス小児病院)監修
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原文

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