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白血病細胞は脂肪代謝によって細胞死を避ける/M.D.アンダーソンがんセンター

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白血病細胞は脂肪代謝によって細胞死を避ける/M.D.アンダーソンがんセンター

この知見は癌細胞を死滅させる可能性のある新しい標的を提示する
M.D.アンダーソンがんセンター
2010年1月27日

白血病細胞は他の多くの癌と同じようにエネルギー産生をグルコースに依存している。しかし新たな研究によって、これらの細胞はまた増殖と細胞死からの回避を脂肪酸代謝に依存していることが示された。

脂肪酸の酸化を阻害すると白血病細胞は細胞死を引き起こす薬剤に対し脆弱になると、テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターおよびテキサス大学ヒューストン校医学部の科学者らがJournal of Clinical Investigation誌の1月号で報告している。

「これらの知見は治療の面からすると、脂肪酸の酸化を標的にして白血病および癌細胞の代謝をコントロールするようなアプローチにつながる可能性があります」とM.D.アンダーソンの幹細胞移植・細胞治療部の教授で、この研究の統括共著者のMichael Andreeff医学博士は述べた。

「癌細胞の代謝は再び脚光を浴び始めた最先端の研究課題です」とAndreeff医師は述べた。「今回われわれは癌代謝における標的を初めて特定し、さらに動物実験の結果はそれを裏付けるものでした。しかし、まだやらなければならない多くの仕事があります。」

Andreeff医師とテキサス大学循環器内科大学院教授で統括共著者のHeinrich Taegtmeyer医学博士は、これらの研究結果をもとに共同で薬剤開発に取り組んでいる。

「脂肪に対する白血病細胞の貪欲さは恐ろしいほどです」とTaegtmeyer医師は述べた。「さらに重要なのは、脂肪の酸化が白血病細胞の生存を促進しているようであるということです。逆に言えば、脂肪の酸化を止めれば白血病細胞は脆弱化し自滅することになります。これらの初期研究の結果が立証されれば、脂肪酸化阻害剤は白血病患者にとって新しい治療法となる可能性があります。」

正常細胞においては、細胞のエネルギー産生の場であるミトコンドリア内で脂肪酸が処理される際、細胞の主なエネルギー源となる分子ATP(アデノシン三リン酸)が生産される。白血病細胞のミトコンドリアでは、脂肪酸の酸化によって細胞の酸素が消費され、アポトーシスに欠かせないタンパク質の活性化が阻害されると研究者らによって示された。(アポトーシス:欠陥細胞のプログラム化された死で、ミトコンドリア内で開始される。)

エネルギー産生過程では白血病細胞は解糖系に依存しているが、この解糖系ではグルコース1分子は細胞質内で分解されて、その結果ATP2分子とピルビン酸2分子が生成される。次にピルビン酸はミトコンドリア内の一連の化学反応であるクレブス回路(クエン酸回路あるいはTCA回路とも呼ばれる)に取り込まれ、エネルギーに変換される。

一連の研究実験で、心不全治療薬であるエトモキシル(長鎖脂肪酸酸化阻害剤)が、培養中の白血病細胞の増殖を用量依存的に抑制することが示された。またエトモキシルには薬剤に対する白血病細胞の感受性を高めてアポトーシスを起こさせる作用もあった。脂肪酸合成酵素/オルリスタット(脂肪吸収阻害剤)もプログラム化された細胞死を起こすよう白血病細胞を感作する。

エトモキシルは心臓のエネルギー供給を脂肪酸からピルビン酸に切り替えることでミトコンドリアによるエネルギー転換を効率的にして心不全を治療する。

モデルマウスを使った実験では、エトモキシルとアポトーシス誘発性薬剤であるABT-737との併用、あるいは急性骨髄性白血病治療に使用されているシタラビンとの併用により、白血病の負荷が減り、生存期間中央値はそれぞれ33%と67%延長した。

さらに、エトモキシルは急性骨髄性白血病患者から得た血液サンプルの半分で、静止期の白血病前駆細胞を減少させたことがわかった。静止期の細胞には白血病を発症させる能力があり、標準的な化学療法に対して高い抵抗性を持っているため、重要な意味があると研究者らは記している。

「われわれの研究結果から、白血病細胞におけるミトコンドリア機能とアポトーシスに対する抵抗性は脂肪酸のミトコンドリアへの取り込みと緊密に関連していることが分かりました」と幹細胞移植・細胞治療部のフェローで筆頭著者のIsmael Samudio医師は述べた。「長年の間に、白血病細胞は細胞エネルギー(ATP)の産生をグルコースに依存していることがわかってきました。今回のわれわれの研究結果では、白血病細胞のクレブス回路の機能と細胞死からの回避については脂肪酸に依存していることが示唆されました。」

この研究はLeukemia TexasからSamudio医師に贈られたYoung Investigator AwardとAndreeff医師が設立したPaul and Mary Haas Chair in Genetics社から資金援助を受け、また米国国立癌研究所およびNational Heart, Lung and Blood Instituteから助成金を受けている。

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岡田章代訳
朝井鈴佳(獣医学・免疫学)監修
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原文


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