2012/05/01号◆癌研究ハイライト「早期腎臓癌の長期予後に術式が影響する」「乳癌ハイリスク女性はマンモグラフィを40歳で開始すると利益がある」「肝臓癌に対する分子標的薬併用の有効性がマウスで示される」「(囲み記事)癌サバイバーのための食事と運動に関する新しいガイドライン」 | 海外がん医療情報リファレンス

2012/05/01号◆癌研究ハイライト「早期腎臓癌の長期予後に術式が影響する」「乳癌ハイリスク女性はマンモグラフィを40歳で開始すると利益がある」「肝臓癌に対する分子標的薬併用の有効性がマウスで示される」「(囲み記事)癌サバイバーのための食事と運動に関する新しいガイドライン」

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2012/05/01号◆癌研究ハイライト「早期腎臓癌の長期予後に術式が影響する」「乳癌ハイリスク女性はマンモグラフィを40歳で開始すると利益がある」「肝臓癌に対する分子標的薬併用の有効性がマウスで示される」「(囲み記事)癌サバイバーのための食事と運動に関する新しいガイドライン」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2012年4月3日号(Volume 9 / Number 8)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
PDFはこちらからpicture_as_pdf
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◇◆◇ 癌研究ハイライト ◇◆◇

・早期腎臓癌の長期予後に術式が影響する
・Survival Differences Persist Between Black and White Children with Cancer[原文参照」
・Hispanics Have Lower Death Rates for Common Lung Cancer[原文参照]
・乳癌ハイリスク女性はマンモグラフィを40歳で開始すると利益がある
・肝臓癌に対する分子標的薬併用の有効性がマウスで示される
・(囲み記事)癌サバイバーのための食事と運動に関する新しいガイドライン

早期腎臓癌の長期予後に術式が影響する

新しい臨床試験によると、高齢の早期腎臓癌患者は腎臓全体でなく、腫瘍のみを取り除いた方が長く生存することが明らかとなった。しかし、癌特異的生存率は、腎部分切除を行うか根治的腎摘出術を行うかに関係なく、同程度であった。この知見JAMA誌4月18日号に掲載された。

ミシガン大学総合がんセンターのDr. David Miller氏らは、NCIのSEERメディケアデータベースのデータを用いて、1992~2007年の間に、4 cm以下の腎臓癌(ステージ T1a)に対して外科的治療を受けた約7,100人のメディケア受給者を分析した。

筆者らは、統計モデルを用いて2つの治療群間の差を調整した。分析によると、腎部分切除術を受けた患者は、総死亡リスクが46%低かった。このモデルに基づくと、8年の追跡期間中、7人が根治的腎摘出術の代わりに腎部分切除を行う毎に1人の死が避けられたと推定された。

根治的腎摘出術は慢性腎臓病を発症するリスクを大きく増大させることが試験で示されている。今回のJAMAの試験などで見られる生存率の差は、根治的腎摘出術を受けた患者では、心血管イベントなど慢性腎臓病の長期合併症が多く起こることに起因するのではないかとMiller氏は説明する。しかし、生存率の差の原因が本当に合併症によるものかどうかを調べる試験がさらに必要であると注意している。

診療ガイドラインでは現在ほとんどの早期腎臓癌患者に対して腎部分切除が推奨されているが、この術式はまだ普及していない。今回の試験では、腎部分切除を受けていたのは患者の27%のみであった。腎部分切除は根治的腎摘出術よりも技術的に難しく、短期合併症が多いので、どちらの術式を選択するにしても利点と欠点があることをMiller氏は認めている。

診断後すぐには治療せず注意深く腫瘍を経過観察する監視療法が、もうひとつの選択肢になる患者もいる。また、低侵襲のロボット手術も腎部分切除を行う際に用いられつつあると、Miller氏は付け加えた。「ロボット技術により、腎部分切除は技術的にずっと行い易くなったと私は思う」。

乳癌ハイリスク女性はマンモグラフィを40歳で開始すると利益がある

乳癌を発症するリスクが平均の2倍ある女性が、2年に1回のマンモグラフィ検診を40歳で開始することの利益と不利益は、平均的リスクの50~74歳の女性が同じ検診を受けるのと同等であることが新しい試験で明らかとなった。Annals of Internal Medicine誌5月1日号に掲載されたこの結果は、個別化したリスクに基づく検診を推進する重要な知見となるかもしれないと筆者らは述べている。

Annals誌の同号に掲載された比較試験では、40~49歳の女性で、第1近親者(親子、兄弟姉妹)に乳癌患者がいる人、もしくは乳腺密度の高い女性(Breast Imaging Reporting and Data System カテゴリー4 の乳腺密度)では、乳癌リスクが平均の2倍としている。

50~74歳の女性と同様のマンモグラフィ検診により、50歳未満のどのような女性に利益があるのか決定するために、オランダのエラスムス医療センターのNicolien van Ravesteyn氏らは、NCI助成のCancer Intervention and Surveillance Modeling Network(CISNET)を用いて開発した4つの乳癌モデルを用いた。これらのモデルにより、乳癌を発症するさまざまなリスクを想定して、40歳代の女性がマンモグラフィ検診を受けることの利益と不利益を見積もることができる。このモデルは、乳癌サーベイランス・コンソーシアムから得た、検診で撮影されたフィルムとデジタルのマンモグラフィデータも追加して組み込んでいる。

若年女性では乳癌リスクが低いためにマンモグラフィ検診により避けられる死亡は少ないと、筆者らは説明した。だからほとんどの若年女性では、マンモグラフィ検診の不利益は利益よりも大きい。

今回のモデルによると、乳癌発症リスクが2倍ある女性では、「40歳代で2年に1回の検診を行うことの利益と不利益のバランスは、平均的リスクの女性が50歳代で検診を始める場合と同程度であった」と筆者らは述べている。今回のモデルでは検診を毎年行っても利益はほとんど増えず、また偽陽性によるリスクはフィルムよりもデジタルによるマンモグラフィで高かった。

「40歳代での検診を個人的あるいは公的に行うことの判断は複雑である。今回の結果でこれについての判断材料がひとつ増えた」と、NCIのサーベイランス研究プログラム所属でCISNET乳癌グループの科学コーディネーターのDr. Kathy Cronin氏は述べた。「今回の結果は、どのような女性が40歳代で検診を受けるべきかを直接的に示したわけではないが、女性と担当医が相談する上で個人的リスクを考慮することの重要性を強調しているといえる」。

肝臓癌に対する分子標的薬併用の有効性がマウスで示される

1つの標的に対して異なる作用メカニズムを持つ2つの薬剤の併用は、どちらか単剤で使用するよりも、肝臓癌のマウスモデルにおいて腫瘍縮小効果と変化した遺伝子発現を元に戻す作用が強いことが新しい知見で示された。Science Translational Medicine誌4月5日付電子版で発表された、これらの予期していなかった発見に基づいて、研究者らは肝臓癌やその他固形癌の患者にこれら薬剤を併用する早期臨床試験を開始した

これら2つの薬剤のうち1つは、既に多くの癌治療に承認されているエベロリムス、もう1つは臨床試験中の治験薬であるBEZ235であり、細胞増殖や自食作用をコントロールするタンパク質であるmTORを阻害する。mTORシグナル経路は多くのヒトの癌で(肝臓癌ではその40~50%で)活性が強くなっている。エベロリムスやラパマイシンと呼ばれるmTOR阻害剤は、肝臓癌患者において臨床試験中である。

しかし、現在臨床で用いられているラパマイシンは細胞中のmTORシグナルを完全には阻害しないと、今回の新しい試験を行ったシンシナティ大学のDr. Sara Kozma氏は説明した。同氏らによると、最初はBEZ235がラパマイシンよりも効果があるかどうかを見るために研究を開始したという。しかし驚いたことに、2剤を低用量で併用すると相乗効果が認められた。

さらに研究を行うと、2剤併用によりプラセボやどちらか単剤よりも、肝臓癌を抑制すると考えられる自食作用を増強することが示された。自食作用の増強がどのように腫瘍縮小に寄与するのかについてはさらに研究が必要であると、同氏はコメントした。

「BEZ235とすでに診療での使用が承認されている薬剤の相乗効果の発見は、[BEZ235]の臨床使用を早めるかもしれない」とKozma氏は述べた。さらに、低用量での2剤の併用がヒトの癌治療で有効であることが証明されれば、副作用が減少するであろう。

癌サバイバーのための食事と運動に関する新しいガイドラインアメリカ癌協会(ACS)の新しいガイドラインによれば、癌サバイバーは健康的な食事をし、適度な運動をし、健康体重を維持すべきである。このガイドラインはCA: A Cancer Journal for Clinicians誌4月26日号に掲載された。このガイドラインでは、さまざまな癌サバイバーに対して食事、運動に関する推奨がなされており、いくつかの頻度が高い癌での栄養や運動に関する科学的知見がまとめられている。一般的に、飽和脂肪が少なく、果物、野菜、全粒、タンパク質が多い食事と、1週間に150分の中程度の運動や1週間に75分の活発な運動が推奨されている。またこのガイドラインにはアルコール、抗酸化物質、脂肪、サプリメントなどに関するよくある質問も掲載されている。関連情報:「適正バランス:癌サバイバーの適正体重維持のために

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野長瀬祥兼 訳
小宮武文(腫瘍内科/NCI Medical Oncology Branch) 監修
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