2012/05/01号◆特集記事「放射線化学療法によって一部の膀胱癌患者の根治的膀胱全摘術を回避」 | 海外がん医療情報リファレンス

2012/05/01号◆特集記事「放射線化学療法によって一部の膀胱癌患者の根治的膀胱全摘術を回避」

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

2012/05/01号◆特集記事「放射線化学療法によって一部の膀胱癌患者の根治的膀胱全摘術を回避」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2012年5月1日号(Volume 9 / Number 9)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
PDFはこちらからpicture_as_pdf
____________________

◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇

放射線化学療法によって一部の膀胱癌患者の根治的膀胱全摘術を回避

膀胱癌の治療において、放射線療法に化学療法を追加すると、副作用を実質的に増加させずに放射線療法単独よりも再発リスクを低下させる可能性があることを英国の研究者が明らかにした。

放射線化学療法と呼ばれるこの併用療法の試験には、筋層浸潤性膀胱癌の患者360人が参加した。筋層浸潤性膀胱癌は、潜在的に致命的な膀胱癌である。このランダム化第3相試験の結果は4月19日付New England Journal of Medicine誌に発表された。

「この試験の成功は、膀胱を切除しなければならない患者が減る可能性があることを意味します」と共同研究責任者であるバーミンガム大学のDr. Nick James氏は電子メールに書いている。「このアプローチは、外科手術に耐える体力のない患者に、手術に代わる実施可能な治療法を提供することにもなります」。

付随論説の筆者らはこれに同意し、この試験を「歴史的な」研究と呼んでいる。

「これらのデータには、強い説得力がある」と論説委員の一人であるマサチューセッツ総合病院およびハーバード大学医学部のDr. William Shipley氏は述べている。「いまや放射線化学療法は、筋層浸潤性膀胱癌患者とその主治医にとって、検討すべき治療の選択肢の1つとみなすことができます」。

膀胱の温存

この研究で、182人の患者が放射線療法に加えてフルオロウラシルマイトマイシンCによる化学療法を受ける放射線化学療法群に、178人の患者が放射線療法単独群に無作為に割り付けられた。参加者全員が筋層浸潤性膀胱癌の患者であった。

2年以内に膀胱または周囲組織に再発したのは、放射線化学療法群の患者では33%、放射線療法単独群の患者では46%であった。追跡期間中央値約70カ月の結果から、化学療法を追加することで浸潤癌再発の相対リスクはほぼ半分になることも示された。

放射線化学療法群と放射線療法単独群で、全生存率に統計的に有意な差はなかった。再発後、膀胱を外科的に切除(膀胱全摘除術)した患者は、放射線化学療法群より放射線療法単独群のほうが多かった。この手術率の増加が、併用療法によって生存率が改善するかどうかの判断を難しくしている可能性があると研究者は指摘している。

この試験は、放射線化学療法と膀胱の外科的切除を直接比較するものではないが、筋層浸潤性膀胱癌の患者はかなりの割合で根治的膀胱全摘術を回避できるという証拠を追加するものになる、とNCIの放射線研究プログラムの臨床放射線腫瘍学科の長を務めるDr. Bhadrasain Vikram氏はいう。

「これらの試験は、筋層浸潤性膀胱癌が比較的稀であること、(特に米国で)多くの泌尿器科専門医が膀胱の切除は可能であれば望ましい治療であると確信していることから実施が難しいのです」とVikram氏は続けた。(非筋層浸潤性膀胱癌は致命的でなく、多くの場合、膀胱鏡下での簡単な手術が有効である。)

肛門癌でも同様の結果

膀胱癌に対する放射線化学療法試験の背景にある理論的根拠は、他のいくつかの癌腫ですでに実証されているように、化学療法が放射線療法の効果を高めるであろうというものであった。実際に、この新たな結果は、外科手術で肛門を切除する心的外傷を回避できた肛門癌患者での実績と重なるとShipley氏はいう。

米国において膀胱癌を化学療法で治療する場合、医師はこれまで、フルオロウラシルとマイトマイシンCの併用ではなく、シスプラチンを中心とした併用療法を用いてきた。放射線化学療法でどの薬剤を使用するかの判断は、個々の医師に委ねられることになるだろうと論説委員らは述べている。

どの薬剤を使用するかにかかわらず、外科手術は、臓器を温存する方針で治療を受ける患者にとって今後も重要な選択肢であり続ける。放射線化学療法を受けた後に再発した患者は、外科手術など追加の治療が必要となる。ただし、すべての患者が外科手術の対象となるわけではない。

「放射線化学療法は手術を受けられない患者にとって選択肢の1つとなりますが、本研究は特にこの患者層を対象とするものではありません」とノースカロライナ大学ラインバーガー総合がんセンター(ノースカロライナ州チャペルヒル)の泌尿器腫瘍学プログラムの共同責任者であるDr. Matthew Milowsky氏はいう。「この治療法は必ずしもすべての患者を対象としているわけではないため、膀胱温存療法を行う患者を適切に選択することが重要です」。

患者と治療法のマッチング

診断時にこの治療法の候補者を特定するために役立つ腫瘍マーカーとなりそうな物質が、今後の研究によって評価されるであろう。Shipley氏によると、有望なマーカーの1つは、放射線で誘発されるDNA損傷への細胞応答に関連する、MRE11と呼ばれるタンパク質である。

その間にも、今回の新たな知見によって、膀胱の温存を目指す治療方針への関心が高まる可能性がある。「膀胱の切除は患者のその後の一生に関わる大手術です」と、共同研究責任者で、英国癌研究所および王立マースデン英国保健サービス(NHS)基金トラストのDr. Robert Huddart氏は声明で述べている。

米国では膀胱温存療法は十分活用されていないとシダーズ・サイナイ医療センターの放射線腫瘍学に講座を持つDr. Howard Sandler氏は指摘する。手術の適応のある患者の圧倒的多数は手術を受けるが、その理由の1つとして、放射線を中心とする治療法と手術を比較する良質な研究がほとんどないことが挙げられる。

「この研究から得られることは、筋層浸潤性膀胱癌の患者は、化学療法と放射線療法を併用する膀胱温存術が果たす役割について主治医と相談すべきだということです」とSandler氏は述べている。

—  Edward R. Winstead

******
月橋純子 訳
榎本 裕(泌尿器科/東京大学医学部付属病院) 監修
******

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1乳がん化学療法後に起こりうる長期神経障害
  2. 2非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  3. 3がんに対する標的光免疫療法の進展
  4. 4「ケモブレイン」およびがん治療後の認知機能障害の理解
  5. 5若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  6. 6BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  7. 7治療が終了した後に-認知機能の変化
  8. 8ASCO、がん臨床試験に対する適格基準の緩和を推奨
  9. 9コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  10. 10リンパ腫患者の余命は、診断後の無再発期間2年経過で通...

お勧め出版物

一覧

arrow_upward