発表された研究において抗癌剤の心毒性に関する副作用は過小報告されている/スタンフォード大学 | 海外がん医療情報リファレンス

発表された研究において抗癌剤の心毒性に関する副作用は過小報告されている/スタンフォード大学

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発表された研究において抗癌剤の心毒性に関する副作用は過小報告されている/スタンフォード大学

2012年3月26日

スタンフォード大学医学部の2人の研究者によると、抗癌剤の潜在的な副作用である心毒性の過小報告は、患者の心不全のリスクを増加させる。

3月26日に発表されたJournal of Clinical Oncology誌のオンライン版の論評において、スタンフォード大学の研究者は、Lancet誌やNew England Journal of Medicine誌など、権威ある科学雑誌に掲載されている誤解を招くような結果の公表を防止するために、臨床試験における抗癌剤の潜在的毒性の測定方法を標準化するための早急な改正が必要であると述べた。

「臨床試験において有害事象がカウントされていないことは大きな問題であり、この結果、心不全や他の有害な心毒性に関するリスクの深刻な過小評価につながる」と循環器内科の助教でその論評の筆頭著者であるRonald Witteles医師は述べた。

Witteles氏はStanford Hospital & Clinicsの循環器専門医であり、共著者のMelinda Telli医師は腫瘍学の助教かつスタンフォードがん研究所の一員でもある。この二人の研究者は、抗癌剤のスニチニブ(sunitinib)による治療を受けている患者の中に、驚くべき数の心不全患者がいることを確認し始めたとき、その懸念を抱くようになった。

「私たちははじめこの結果に驚きました」とWitteles氏は述べた。

スニチニブは米国食品医薬品局(FDA)から承認を受け、過去5年以上にわたり腎癌やある種の膵臓癌、消化管間質腫瘍の治療を適応として、スーテント(Sutent)の商品名でファイザー社により販売されている。

2人の著者が発見したことは、学術論文とFDAの医薬品添付文書の間の心毒性の発現頻度に関する報告の完全な食い違いである。医薬品添付文書では、その薬剤を服用している患者において、医師は潜在的な心毒性の副作用に注意すべきであるとの警告が促されており、これは学術論文で示されていた報告とかなり異なる。

「それは全く意味がないことである」とWitteles氏は述べた。「医薬品添付文書では臨床試験における心不全の高い発現頻度を警告しているが、学術論文中ではその言及すらされていない」。

スニチニブは抗癌剤の臨床試験における心毒性の副作用を測定する現行の方法がどれだけ不適切であるかを示す好例である、と著者らは述べた。論評中ではスニチニブにのみ焦点を当てている一方で、著者らは他の抗癌剤の臨床試験でも測定方法に関する同様の問題が存在し、スニチニブと同じように副作用の過小報告の傾向があると考えている。

「私たちは決して有用な薬剤でないと言おうとしているのではない」とWitteles氏は述べた。「これは多くの異なる種類の癌に対する実に画期的な治療薬である。しかし、一点の疑いも無く確かに生じたことは、学術論文において心毒性の発現頻度が誤って伝えられており、今でも医療従事者の間でこの問題に対する認識が実際に不足していることである」。

「これはとてもよい事例なので、有効利用するつもりである」と彼は付け加えた。

この論評は、Witteles氏とTelli氏がスニチニブの臨床試験で心毒性が過小評価されていると考えている、Lancet誌とNew England Journal of Medicine誌の両方で発表された論文を引用している。

例えば、2006年10月、Lancet誌で発表されたスニチニブの最初の第3相臨床試験結果では、心臓の健康状態を調べるための一般的な検査であり、心臓がいかに正常に血液を送り出しているかを示す左室駆出率の測定値の低下に関するエビデンスは無かったことが述べられていた。

しかし、FDAの2007年のスニチニブの腎癌治療の使用に対する医薬品添付文書においては、同じ臨床試験の同じデータセットに基づいているにも関わらず、スニチニブ投与群の被験者の11%、プラセボ群の被験者の3%が正常下限値を下回る駆出率の測定値を呈したことが記載されていた。

この食い違いに関する最も厄介な点は、多くの医師が新薬に関する学術論文を読む一方で、医薬品添付文書を読む人はほとんどいないことである、とWitteles氏は述べた。

「私は、学術論文におけるこの過小報告がとても現実的な重大性をもっていることをここで強調したい」とWitteles氏は述べた。「この薬剤の心毒性の結果として、多くの患者の罹患率や死亡率が高くなっている。これらは非常に有用な薬剤であるが、医師は、心機能を適切にモニターし、必要に応じて循環器系治療薬の投与の開始や抗癌剤治療の完全な維持を検討できるように、起こり得るすべての心毒性に関する副作用を知る必要がある」。

この論評で引用された3つのスニチニブの臨床試験は、2つがNew England Journal of Medicine誌、1つはLancet誌に掲載されたものである。この3つの試験すべてがファイザー社から資金提供を受けており、そのことが利益相反の可能性を提起している」とWitteles氏は述べた。

「利益相反がこれらの不一致に影響を与えたかどうかを知ることは困難である」とWitteles氏は述べた。

報告におけるこれらの不一致が、少なくとも原因の一部であることは明らかである。不適切な測定方法により、異なる施設における個々の研究者の有害事象の評価にあまりにも多くのばらつきが生じることになる、と著者らは指摘している。

例えば、有害事象が何であるかを定義する際や、もし有害事象が薬物治療により生じたかどうかに疑問がある場合、その有害事象を無視するかどうかを定義する際の不一致が存在する。

さらに、近年、画像所見や臨床検査などの一次データセットの結果を報告する必要がないため、個々の施設の研究者によりなされた判断に、より多くの信頼が置かれている。

「データが検証されたならば、施設の研究者の独自の判断よりも一次データを信頼する方がよいだろう」とWitteles氏は述べた。「しばしば有害事象は見逃される。・・・特にもしそのデータを入手できない場合、新規抗癌剤を報告している学術誌がこれらの不一致に気づかないことは容易に起こり得る」。

一方でFDAは、一次データによって反映されているように、実際の心機能の低下に基づいて医薬品添付文書の数値を報告しており、そのため、当局が心毒性を発現した実際の数を決定しやすくする、と著者は書いている。

彼らの推奨している改正案のリストの中で、Witteles氏とTelli氏は、薬剤の臨床試験において心毒性の兆候がみられたときはいつでも、その試験に定期的な心機能のモニタリングを組み込むべきだと提案している。これは、癌の臨床試験において、心機能の安全性に関して信頼性、正確性、一貫性のある報告を保証するために、彼らが推奨しているいくつかの方法の1つである。

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下野龍太郎 訳
須藤智久(薬学/国立がん研究センター東病院 臨床開発センター)監修
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原文

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