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臨床試験中の分子標的薬が進行の早い悪性リンパ腫に効果を示す

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臨床試験中の分子標的薬が進行の早い悪性リンパ腫に効果を示す

NCI プレスリリース 2012年3月31日

悪性リンパ腫の亜型に対する臨床試験の予備的な結果は、他の治療法では治癒されなかった多くの患者にとって、ibrutinib(イブルチニブ)という薬が緩やかな副作用ながら有意な抗腫瘍効果をもたらす可能性を示している。これらの結果は米国国立衛生研究所(NIH)の一部門である米国国立癌研究所(NCI)の研究者らにより、4月1日に米国癌学会(AACR)2012年次総会の開会プレナリーセッションの中で発表された。

悪性リンパ腫は5番目に多い種類の癌である。それは白血球の異常な増殖が原因であり、年齢を問わず発症し、多くの場合通常より腫れたリンパ節、発熱と体重減少が特徴である。この臨床試験の対象となったびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は、進行が早く、悪性リンパ腫と新たに診断される中で30%から40%を占め、アグレッシブ(中高悪性度)な腫瘍である。DLBCLは体の免疫反応の中で重要な役割をするB細胞に由来する。

10年以上DLBCLの治療には大きな進歩はみられなかった。しかし、この疾病が少なくとも3つの分子的な亜型で構成されており、それぞれが成熟過程中の特異な段階にあるB細胞に由来することが明らかとなったことは、大きな進歩である。DLBCLの活性化B細胞(ABC)様亜型は症例の約40%を占め、現行の治療では最も予後不良である。

最近の遺伝子研究でB細胞の表面にある受容体の慢性的な活性がABC型リンパ腫の進行に重要な役割をすることが発見された。正常なB細胞ではこれらB細胞受容体は細胞が感染を認識するのを助ける。ABCリンパ腫の腫瘍化したB細胞ではこれらの受容体は腫瘍細胞が生き延びるのを促進する重要なシグナルを出す。ABCリンパ腫のうち5分の1以上が、B細胞受容体活性を変化するような変異を有する。これらの知見により、研究者はB細胞受容体が出すシグナルを治療の標的とする方法を探究した。この研究は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)という酵素がABC型リンパ腫細胞が生存するために必要なB細胞受容体経路の鍵となることを同定した。

「われわれの臨床試験は、「精密医療」の重要な例である」と、NCIの代謝系部門の副部門長であるLouis Staudt医学博士は言った。「がん細胞における変化に対する理解が進むことで、個々の患者の癌における遺伝子プロファイルに合わせたより効果的な治療戦略につながるだろう。」

この分子学的な研究を基に、研究者たちはBTK阻害薬として効果のある薬ibrutinib(元PCI-32765)を彼らの臨床試験で使う選択をした。Ibrutinibは高度選択的かつ不可逆的にBTK酵素を阻害する経口薬である。カリフォルニア州サニーベールのファーマサイクリックス社とペンシルベニア州ホーシャムのヤンセンリサーチアンドデベロップメント社はさまざまな種類の白血病、悪性リンパ腫および多発性骨髄腫を含むB細胞悪性腫瘍群を対象にした薬を開発している。

Staudt氏と彼のNCIの同僚のWyndham Wilson医師による研究で、ibrutinibは、まずNCIにおけるABC型DLBCLを対象としたパイロット試験で評価され、現在はDLBCLを対象とした進行中の多施設共同研究で評価が行われているところである。パイロット試験の結果と現在進行中の個々の症例から、ibrutinib単剤の錠剤での使用は少ない副作用で大きな抗リンパ腫効果がもたらすことができたと示されている。

これらの臨床試験の参加者には病状が進行するまで毎日560ミリグラムと一定の用量のibrutinibが錠剤で投与された。IbrutinibはABC型リンパ腫の完全寛解を含む複数の効果を示した。また、非ABC型DLBCLの患者においても寛解が見られた。これはこの種類のリンパ腫におけるB細胞受容体経路の広範な役割を示唆している。最終的な解析は、DLBCLの治療におけるibrutinibの安全性と有効性に関してさらなる知見をもたらすであろう。

「これらの結果は、癌細胞内の分子機構を理解することにより、正常な細胞を残しながら腫瘍細胞を殺すことができる新たな治療法に繋がり、そのことにより患者に対する毒性が大きく減少することを示すのだ」とStaudt氏は言った。

この臨床試験についての詳細(識別子# NCT01325701)はこちらのリンクから http://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01325701?term=PCI-32765&cond=lymphoma&rank=5

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岩崎多歌子 訳
吉原 哲(血液内科・造血幹細胞移植/兵庫医科大学病院) 監修
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原文

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