喫煙の減少が約80万人の命を救った-NIHはタバコ規制政策およびタバコ規制プログラムの効果、さらなる肺癌死亡減少の可能性を検証 | 海外がん医療情報リファレンス

喫煙の減少が約80万人の命を救った-NIHはタバコ規制政策およびタバコ規制プログラムの効果、さらなる肺癌死亡減少の可能性を検証

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喫煙の減少が約80万人の命を救った-NIHはタバコ規制政策およびタバコ規制プログラムの効果、さらなる肺癌死亡減少の可能性を検証

NCIプレスリリース

2012年3月14日 更新2012年8月7日

20世紀のタバコ規制プログラムおよびタバコ規制政策が1975年から2000年までの米国における795,000人以上の肺癌死亡防止に寄与していることが、NIH(米国国立衛生研究所)の一部であるNCI(米国国立癌研究所)の助成金で実施した解析で明らかとなった。

もし、この国の全ての喫煙を1964年のSurgeon General(公衆衛生局長官)報告書の発表後にやめていれば、報告書発表後の36年間に250万人の肺癌死を防ぐ可能性があったことが、今回の解析で明らかとなった。本研究結果はJournal of the National Cancer Institute誌の2012年3月14日号電子版、2012年4月4日号印刷版に発表され、そしてさらに詳しいものがRisk Analysis誌の2012年8月7日号電子版に、分析についてのより詳しい内容と細目が2012年8月号印刷版に発表された。

「今回の知見は、喫煙が我が国に壊滅的な影響をもたらすことと喫煙率の減少が莫大な利益をもたらすことを強力に示しています」とNCI、Division of Cancer Control and Population Sciencesの部門長であるRobert Croyle博士は述べた。「大きな成果があげられてきましたが、歩みを止めることはできません。喫煙予防と禁煙は、医学、科学、公衆衛生の分野における最重要課題であり続けます」。

本研究者ら、一部はNCI助成のCancer Intervention and Surveillance Modeling Network (CISNET)に所属、は比較モデリングアプローチを用いて1890年から1970年に生まれた人々の詳細な喫煙歴を作成し、その後、数学モデルを用いて喫煙歴と肺癌死亡との関連を検討した。これらのモデルを用いて、研究者らはタバコ規制活動による喫煙率の変化が、1975年から2000年の間に肺癌死に与えた影響を推定し得た。1964年の報告書以来、米国のタバコ規制への取り組みには、公共の場での喫煙制限、タバコ税の増税、未成年者の購入制限、および喫煙の危険性についての広報活動などがある。

「これは詳細な喫煙歴の再構築に基づいて、喫煙行動変化の肺癌死亡への影響を数値化した初めての試みです」とシアトルにあるフレッドハッチンソンがん研究センターの筆頭著者であるSuresh Moolgavkar医師は述べた。「本試験の一部として開発されたこの方法は、喫煙の健康への悪影響を研究している他の研究者にとって無くてはならないものであることが証明されるはずです」。

本試験で、研究者らは3つのシナリオを作成した。第一は、現行のタバコ規制であり、米国男女の実際の喫煙行動データを用いた。第二は、いわばタバコ無規制、規制が無い場合の喫煙行動を予測したものある。第三は、完璧なタバコ規制、1964年のSurgeon Generalによる喫煙と健康に関する報告書の発表後、1965年以降完全な禁煙を達成したと仮定した場合に予測される結果を検討した。

タバコ規制シナリオが無い場合の肺癌死亡者数と現行のタバコ規制状況での死亡者数の差で、タバコ規制を行ったことによって避けることができた肺癌死亡者数が推定される。今回、この差が2つの図表となった。これは今回の解析に使用されたモデルの1つを作成したYale Universityのデータに基づいたものである。研究者らは、タバコ規制プログラムおよびタバコ規制政策が行われていなかった場合、1975年から2000年に、さらに男性552,000人、女性243,000人の肺癌死亡増加を推測した。

同様に、タバコ規制が無いシナリオと完璧なタバコ規制シナリオとの差は、もし、すべての人が1965年の時点で禁煙し、誰も喫煙を開始しなかった場合に避けることができたであろう肺癌死亡数推定値を示している。もし、タバコ規制活動が完璧に成功していれば、1975年から2000年にかけて、さらに170万の肺癌死を防ぐができたであろう。全体として、1965年に完全な禁煙が達成できていた場合、肺癌死亡者数を250万人ほど減らすことができたであろう(男性160万人、女性883,000人)

「肺癌死亡のほとんどは、禁煙によって防ぐことができます」 NCIのStatistical methodology and Application支部長で、本試験の著者であるEric Feuer医師は述べた。「タバコ規制プログラムおよびタバコ規制政策による肺癌死亡減少という成果は、1965年に完全な禁煙を達成しえていた場合の約1/3です。今回の知見で分ることは、米国で数十万人の肺癌死亡を防いだことはタバコ規制がなした偉大な功績であり、タバコ規制を継続しさらに努力することでより多くの肺癌死を防ぐ可能性があることです」。

研究者らの推測が2000年までなのは、プロジェクト開始時、近年については詳細で十分なデータが得られなかったためである。しかし、以前の研究から、米国の成人の喫煙率は2000年の23.2%から2008年の20.6%と低下し、近年は横ばい状態なので、2000年以降も肺癌死亡をさらに防いでいることが推測される。これまでの研究で、喫煙率の低下にタバコ規制政策が大いに寄与していることが示されている。さらに、専門誌の論文の範囲にとどまらず、喫煙が関与する他の癌、および心血管疾患、呼吸器疾患のような喫煙関連疾患もタバコ規制プログラムおよびタバコ規制政策により低下している。

2011年、全国肺がん検診試験 (National Lung Screening Trial、NLST)を実施した研究者らは、低線量らせんCTを用いた重喫煙者の検診を行うと、標準的な胸部X線検診に比較して肺癌死亡率が20%減少することをみいだした(詳細は本試験のプレスリリースを参照のこと)。著者らによれば、検診による肺癌死亡減少があるとしても、エビデンスに基づいたタバコ規制政策、計画、サービスを継続的に実施することが、肺癌という人類の重荷を軽くするための重要な取り組みであることに変わりはない。

CISNETは、予防、検診、治療などの癌をコントロールするための介入に関する我々の理解を深めるために統計モデルを使用し、NCIの助成を受ける研究者の協会である。以前のいくつかの試験で妥当性が示されたこのモデル化の方法は、公衆衛生研究における優先順位を決めるために用いることができる。そのネットワークは、重喫煙者を対象としてNLSTで認められた低線量らせんCT検診の有益な結果に基づいて、さまざまな年齢と暴露量毎にグループ分けした喫煙者に対する肺癌検診の有効性を研究するプロジェクトを行っている。

本稿で述べられた結果は、CISNETネットワークのメンバーによって作成された6つの異なるモデルに基づいている。これらのモデルを作成した施設には、Erasmus Medical Center(オランダ)、フレッドハッチンソンがん研究センター(シアトル)、Pacific Institute for Research and Evaluation(メリーランド州Calverton)、Rice University-MDアンダーソンがんセンター(ヒューストン)、マサチューセッツ総合病院-ハーバード大学医学部(ボストン)、Yale University(コネチカット州New Heaven)などがある。モデル構造の詳細は、国際的な学術誌である近日発行予定のRisk Analysis誌の特集号に掲載される予定である。

NCIのCancer Control and Population Sciencesは、認可番号CA097415、CA097432、CA097450、CA097431、CA097416、CA097337、CA152956、CA126147、CA133141の研究に資金を提供している。

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舛田理恵 翻訳
久保田 馨(呼吸器内科学/日本医科大学)監修
岩崎多歌子 更新
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原文

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