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2012/04/03号◆特集記事「一般的なリンパ腫治療に期待される標的薬」

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2012/04/03号◆特集記事「一般的なリンパ腫治療に期待される標的薬」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2012年4月3日号(Volume 9 / Number 7)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇

一般的なリンパ腫治療に期待される標的薬

2つの前期臨床試験で得られた予備的結果から、治験薬ibrutinibが進行の速い非ホジキンリンパ腫(NHL)の一部に有効である可能性が示された。試験では、標準治療で効果がみられなかったり、治療効果が消失したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者の一部において、ibrutinibによる治療後に完全または大幅な腫瘍縮小が認められた。治療による副作用は軽度で、忍容性は良好であった。

この試験結果は、両試験の共同指揮に携わったDr. Louis M. Staudt氏(NCI癌研究センター)が、シカゴで開催された2012年米国癌学会(AACR)年次総会にて、4月1日に発表したものである。試験実施へのきっかけとなったのは、NCI癌研究センター代謝研究科のStaudt氏らによる一連の発見であった。

1つ目の試験は、活性化B細胞様(ABC)DLBCL患者のみ10人を対象とした第1相パイロット試験(予備的研究)である。ABCサブタイプとは、数年前にStaudt氏らが同定したDLBCLの3つの分子サブタイプのうちの1つである。同氏らによれば、ABCサブタイプを有する患者は、DLBCLと診断される患者の約40%を占め、生存率は最も低いとされる。

Staudt氏らは、B細胞受容体(BCR)によって制御される情報伝達経路、すなわち細胞内のコミュニケーションネットワークについても明らかにしており、BCRの活動が過剰になるとABCサブタイプの腫瘍細胞が生存して増殖できるようになる。さらに、ABCサブタイプを有する患者の一部で受容体変異があることを確認しており、DLBCLにこの経路が重要であることを示唆した。最終的には、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)と呼ばれるBCR情報伝達経路の構成要素を阻害すれば、ABC DLBCL細胞が死滅することを発見した。

「われわれは、機能面と遺伝面の両方において、BCR経路がABCサブタイプに重要であることを裏づける証拠を得ました」とStaudt氏は述べる。「ibrutinibに大いに期待するのは、これが強力なBTK阻害剤だからです」。

試験はいずれも、ibrutinibを開発したPharmacyclics社との共同で実施された。同社は、カリフォルニア州に本社を置く。

第1相パイロット試験では、2人に完全寛解、1人に部分寛解が認められた。また、過去の治療で効果がみられなかったもう1人の患者では、大幅な腫瘍の退縮が認められ、症状も大きく改善した。

完全寛解がみられた患者の1人は、連日の経口療法を続けており、16カ月にわたり疾患の兆候は現れていない、とStaudt氏は述べた。また、病状が安定したある患者は、同種骨髄移植の適応となる十分な腫瘍縮小が得られ、現在は完全寛解である。

完全寛解および部分寛解は、2つ目の試験でも認められている。第2相試験には、3月1日時点で47人の患者が登録されているが、ABCサブタイプの患者に限定されておらず、ABCサブタイプ以外の患者でもibrutinibを用いた治療の効果が得られている(後日、詳しい試験結果が公表される予定である)。

この予備的結果から、ABCサブタイプ以外のDLBCL患者でみられた腫瘍増殖について、少なくとも幾分かは、過剰なBCR情報伝達によるものであることを意味しているのでないかは、とStaudt氏は付け加えた。

「これまでの治療で全く効果がなかった(原発性難治性疾患の)患者に腫瘍縮小がみられたことの重要性は、どれほど強調してもし過ぎることはありません」と、本試験の試験責任医師であるNCI癌研究センター代謝研究科のDr. Wyndham Wilson氏は言う。

DLBCLに対する初期治療により、約95%の患者では寛解が得られる。「原発性難治性疾患というのは、最悪中の最悪なのです」とWilson氏は述べる。「こうした患者に対して効果がみられるというのは、実に印象的なことです」。

Ibrutinibの副作用が軽度であることも(最もよくみられるのは軽度の悪心と疲労)、試験から得られたもう一つの重要な知見である。

「われわれは、毒性のために治療を中断するとか用量を減らすという症例に、まだ出会ったことがありません」とWilson氏は続ける。「これには大きな意味があります。患者の大半は、かなりひどい病状だからです」。

今後は、治療開始前にどの患者がBCR依存性のリンパ腫であるのか、この受容体が治療中に影響を受けるのか、を判断するためのテストの開発もなされるべき、とノースウェスタン大学のDr. Jonathan Licht氏は、総会の開会演説で述べた。

Staudt氏とWilson氏は、現在もibrutinibに関する研究を続けている。「すでに次なる試験の計画について議論中です」とWilson氏は言う。こうした計画には、寛解後に癌が再発した患者や初期治療で効果がみられない患者を対象として、化学療法との併用でibrutinibを用いる試験のほかに一次治療におけるibrutinibの使用も含まれそうである。

— Carmen Phillips

【下段引用部分訳】
原発性の難治性疾患というのは、最悪中の最悪なのです こうした患者に対して効果がみられるというのは、実に印象的なことです。
— Dr. Wyndham Wilson

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濱田 希 訳
林 正樹(血液・腫瘍内科/敬愛会中頭病院) 監修
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