Aurora-Aが腫瘍抑制因子を阻害することにより化学療法抵抗性を示す/MDアンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

Aurora-Aが腫瘍抑制因子を阻害することにより化学療法抵抗性を示す/MDアンダーソンがんセンター

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

Aurora-Aが腫瘍抑制因子を阻害することにより化学療法抵抗性を示す/MDアンダーソンがんセンター

テキサス大学MDアンダーソンの研究者が難治性癌に関連するタンパクの分子経路を解明
M.D.アンダーソンがんセンター
2012年2月27

通常、細胞核内で腫瘍抑制因子がDNAの損傷を検出し、損傷のある細胞自身を自ら死滅させるところ、治療抵抗性の癌細胞内では、豊富に存在するあるタンパクにより、細胞核外にその重要な腫瘍抑制因子が存在しているとして、研究者チームがCancer Cell誌の最新号に報告した。

「腫瘍でのAuroraキナーゼ-A過剰発現と、DNAを損傷する化学療法剤への抵抗性との間には相関が認められていたが、この機序については知られていませんでした」と述べたのは、代表著者であり、テキサス大学MDアンダーソンがんセンター分子細胞腫瘍学部門の教授であるSubrata Sen博士である。

「Aurora-Aが腫瘍抑制因子p73の適切な機能を阻害することを見出した我々の発見は、より有効な治療の組み合わせで化学療法抵抗性を理解し、対処するための第一歩である」とSen博士は述べた。Auroraキナーゼ阻害剤は開発中であり、癌の臨床試験が進行中のものもある。

p53のように、そのよく知られている近縁、腫瘍抑制因子p73は、細胞分裂におけるDNAの損傷を監視し、修復不能な損傷を検出した場合、アポトーシス(プログラム細胞死)を誘導する。シスプラチンのようにDNAに損傷を与える類いの抗癌剤は、アポトーシスを誘導するよう設計されている。

「ゲノムの安定性維持におけるp73の役割の理解が近年更に深まり、このp73はp53欠損細胞において、機能的に、より重要な腫瘍抑制因子であると考えられている」とSen博士は述べた。p53の不活化は多くの固形癌種でよく認められている。

p73へのリン酸基結合により細胞核外へ排除
損傷したDNAが検出されると、p73は細胞核内で細胞死を誘導する遺伝子を活性化する。

Aurora-Aはキナーゼであり、このタンパクは1個のリン原子と4個の酸素原子で構成されたリン酸基と特異的結合部位で結合することにより、他のタンパクを調節する。

Sen博士らのチームは、Aurora-Aが特異部位でp73をリン酸化し、次のことが生じることを発見した。
・p73は、DNA結合能と標的遺伝子の転写活性化能を失う
・p73は、細胞質内の核外で固定される
また同チームは、Aurora-Aを過剰発現する肺癌細胞ではp73が核及び細胞質で均一に分布しているが、Aurora-A阻害剤で処理すると、p73は主に核内に認められることも発見した。またAurora-Aの過剰発現が認められる乳癌及び膵癌の細胞株でもこの実験を再現し、同様の結果を得ている。

リン酸化p73を細胞質で固定するモータリン
Sen博士らのチームは、モータリン(Mortalin)と呼ばれるタンパクがAurora-Aによってリン酸化されたp73に結合し、p73を細胞質に移動し、そこに維持する役割を果たすことを発見した。モータリンは腫瘍形成及び不死化との関連性が示唆された。

DNAの損傷のほか、p73は細胞分裂時に染色体の正常な分離に関与し、特定のメカニズムを制御する有糸分裂紡錘体の形成チェックポイントを調節する。Sen博士らのチームは、Aurora-Aによるp73のリン酸化によって、このチェックポイント機能が不活化されることも発見した。

更に同チームは、正常な発現量のAurora-Aは、細胞分裂中の正常な紡錘体形成チェックポイント機能におけるp73のリン酸化に、正常な役割を果たしていることも発見した。

ヒト膵癌でp73に対して認められたAurora-Aの影響
シスプラチンで肺癌細胞を処理した際、リン酸化されたp73が認められる細胞では、化学療法による細胞死に対する感受性が最も低かった。Aurora-Aの過剰発現が認められない場合、細胞はシスプラチンに対してより強く感受性を示した。

Sen博士らのチームはMDアンダーソンでヒト膵管腺癌114サンプルのp73とAurora-Aを解析した。51サンプル(44.7%)でAurora-Aの高発現が認められ、このうち37サンプルでは細胞質にp73が高いレベルで認められた。一方、Aurora-A低発現量の腫瘍試料63サンプルのうち、18サンプル(28.6%)のみが細胞質にp73が高いレベルで認められた。

DNAや紡錘体の損傷で誘導される細胞死経路の不活化により、膵癌が化学療法や放射線治療に抵抗性となることに、Sen博士らは注目。化学療法や放射線に対するp73リン酸化腫瘍の特性及び感受性について更に解析を行うことで標的治療及び併用療法の開発に役立つであろう。

他の研究チームと同様にSen博士らのチームは、Aurora-Aリン酸化は、化学療法又は放射線治療後のp53誘導性細胞死を阻害することも以前に発見していた。この新たな知見から、p53及びp73共にDNAの損傷に対する反応は、モータリンとの相互作用後、Aurora-Aリン酸化により阻害され、細胞質へ移動することが示唆された。

Sen博士との共著者は、筆頭著者のHiroshi Katayama博士、Jin Wang、Warapen Treekitkarnmongkol博士、Kaori Sasai博士、Hui Zhang博士、Shoulei Jiang博士、Sandip Chakraborty及びRalph Arlinghaus博士(以上MD アンダーソン分子細胞腫瘍学部門)、Hidehiko Kawai博士、Fumio Suzuki博士(以上、広島大学原爆放射線医科学研究所)、Hua Wang医学博士、Jinsong Liu医学博士及びHuamin Wang医学博士(以上、MDアンダーソン病理学部門)Henry Adams氏(MD アンダーソン遺伝子学部門)、James Mobley博士及びWilliam Grizzle医師(アラバマ大学バーミンガム校総合がんセンター)。

本研究は、MDアンダーソンがんセンター援助助成金(MD Anderson Cancer Center Support Grant)、及びNCIの早期発見研究ネットワーク賞(Early Detection Research Network award)を含めた米国国立がんセンター(NCI)の研究援助を受けている。

***********
菅原 宣志 訳
須藤智久(薬学/国立がん研究センター東病院 臨床開発センター) 監修
************


原文


センター

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1乳がん化学療法後に起こりうる長期神経障害
  2. 2非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  3. 3BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  4. 4若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  5. 5がんに対する標的光免疫療法の進展
  6. 6「ケモブレイン」およびがん治療後の認知機能障害の理解
  7. 7HER2陽性進行乳癌治療に対する2種類の新診療ガイド...
  8. 8ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  9. 9コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  10. 10治療が終了した後に-認知機能の変化

お勧め出版物

一覧

arrow_upward