薬剤の併用により正常組織を傷つけることなく前癌状態の大腸ポリープが死滅/M.D.アンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

薬剤の併用により正常組織を傷つけることなく前癌状態の大腸ポリープが死滅/M.D.アンダーソンがんセンター

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薬剤の併用により正常組織を傷つけることなく前癌状態の大腸ポリープが死滅/M.D.アンダーソンがんセンター

薬剤併用が、短期の治療で長期にわたり有効な癌の化学予防になりうる
M.D.アンダーソンがんセンター
2010年3月28日

2剤併用療法によって正常組織に影響を及ぼすことなく前癌状態の大腸ポリープが破壊されることがわかり、大腸癌の化学予防薬への新たな可能性への道が開かれたとM.D.アンダーソンがんセンターの研究者らのチームがネイチャー・アドバンス・オンライン版で報告した。
「これまで研究室でマウスモデルとヒトの大腸癌組織で検証されてきたこの治療法は、化学予防薬に関する問題に対処するものです。それは効果を得るためには長期にわたって継続的に薬剤を投与しなければならず、患者を副作用にさらす可能性がある事です」と統括著者でM.D.アンダーソンがんセンターのDepartment of Head and Neck Surgery(頭頸部外科)の准教授であるXiangwei Wu博士は述べた。

またWu博士は「この薬剤併用は、定期的に短期間投与すると長期にわたって有効なため、化学予防薬への新しいアプローチとなるでしょう」と述べた。

研究チームはビタミンAアセテート(RAc)とTRAIL(Tumor Necrosis Factor-Related Apoptosis-Inducing Ligand、腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド)は、腫瘍抑制遺伝子に欠陥のあるマウスの前癌状態のポリープを死滅させ、腫瘍増殖を抑制することを発見した。Wu博士によると、その遺伝子、つまり大腸腺腫様ポリポーシス(APC)およびその下流シグナル分子は、全てのヒト大腸癌の80%で変異または欠損している。

単独では奏効しないが、併用すると効果を発揮

APC欠損マウスを用いた初期の実験で、2剤併用投与または各剤単独投与のいずれも正常な大腸上皮細胞を傷つけないことが示された。各剤単独投与では、腺腫と呼ばれる前癌状態のポリープに対する効果は認められなかった。

RAcとTRAILはともに働くと腺腫細胞を死滅させ、アポトーシスとして知られるプログラム細胞死を引き起こす。研究者らはRAcがポリープの細胞をTRAILに感作させることを発見した。

研究者らはAPC欠損によって起こった分子カスケードを綿密に追跡し、TRAILを阻害するタンパク質をAPC欠損が抑制することにより、細胞をTRAILとRAcに感作させることを発見した。

ポリープの減少で生存が改善される

APC欠損マウスにRAc/TRAILを6週間にわたり15サイクル併用投与した。別のマウスにはRAcまたはTRAILのいずれかを投与し、対照群には何も投与しなかった。対照群のマウスといずれか1剤を投与したマウスの1カ月後のポリープ数は平均して35〜42個だったが、併用投与したマウスでは平均10個であった。

短期療法薬としての薬剤併用の可能性を検証するため、APC欠損マウスに1週間、2サイクル併用投与したところ、2週間後にポリープ数が69%減少した。容量を10倍に増やしてマウスに投与すると、対照群で認められたポリープ数の10%しか残らなかった。

4カ月以上にわたって5剤を併用投与し相対生存率を見るより長期間の試験では、生存日数が対照群の186日から投与群マウスの213日以上に改善され、投与群マウス7匹のうち5匹が8カ月以上生存した。

ヒトの大腸ポリープにおける細胞死

次に研究者らは、正常組織と家族性大腸腺腫症患者(大腸を切除しなければ必然的に大腸癌をもたらす遺伝性疾患)の腫瘍病変の生検標本を処理した。正常組織の処理は細胞死をほとんど引き起こさなかったが、ポリープ細胞の57%はアポトーシスによって死滅した。

Wu博士によると、現在の標的療法は腫瘍増殖を促進する腫瘍のいくつかの局面を阻害することを目的としているが、RAcとTRAILは共に働いて前癌状態のポリープを徹底的に死滅させる。APCは他のタイプの癌でも欠損あるいは変異しているため、併用療法はより一般的な薬剤になるだろう。

「研究チームはヒト臨床試験が検証される前に追加調査を実施して起こりうる副作用を把握し、現在静脈内投与されている薬剤の新たな注射用合剤の開発を模索していくでしょう」とWu氏は述べた。

APC欠損の経路によって活性化される遺伝子の一種であるβカテニンは、幹細胞の自己複製と成体組織の維持に関与している。研究チームは一連の試験を通して、RAc/TRAILがマウスの幹細胞に影響を及ぼさないことを確認した。

「現在、心臓血管の副作用についての懸念があるため、主に大腸癌のハイリスク患者に対する化学予防薬が制限されています」とWu氏は述べた。「われわれは、この薬剤併用の毒性が低いと証明されれば、より幅広く一般の人々に化学予防薬として利用可能になるかもしれないと希望を持っています。」

Wu氏の研究は米国国立衛生研究所(National Institutes of Health grant)、M.D.Anderson institutional funds、Alliance of Cardiovascular Researchersから資金援助を受けた。

Wu氏の氏の他の共著者は以下のとおりである。Ling Zhang, Ph.D.(筆頭共著者), Xiaoyang Ren, M.D., Shaoyi Huang, Zhengming Xu, and Xian-Feng Wen, Ph.D., all of M. D. Anderson’s Department of Head and Neck Surgery; Eckhard Alt, M.D., and Xiaowen Bai, Ph.D., of the Department of Molecular Pathology; Patrick Lynch, M.D., of the Department of Gastroenterology, Hepatology and Nutrition. Wu also is affiliated with the Department of Molecular and Cellular Oncology. Co-author Mary Moyer, Ph.D., is with INCELL Corporation in San Antonio, Texas.

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山本 容子訳
鵜川 邦夫(消化器病学、内視鏡学)監修
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原文


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