2012/03/20号◆スポットライト「白血病における癌細胞進化の遺伝子解析」 | 海外がん医療情報リファレンス

2012/03/20号◆スポットライト「白血病における癌細胞進化の遺伝子解析」

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2012/03/20号◆スポットライト「白血病における癌細胞進化の遺伝子解析」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2012年3月20日号(Volume 9 / Number 6)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ スポットライト ◇◆◇

白血病における癌細胞進化の遺伝子解析

先に骨髄異形成症候群と診断された患者に生じる急性骨髄性白血病(AML)の根底にある遺伝子変異をひもとく新たなヒントが、全ゲノム解析により明らかになった。骨髄異形成症候群は、骨髄が十分な量の正常細胞を産生しなくなるときに発生し、一部の症例はいわゆる二次性AMLへ進行する。

二次性AMLへ進行させる遺伝子変異を特定するため、セントルイスのワシントン大学医学部の研究者らは、骨髄異形成症候群からAMLへ進行した患者7人の異常細胞(骨髄から採取)および正常細胞(皮膚生検で採取)の全ゲノム解析を行った。いずれの患者も、診断名が骨髄異形成症候群であった頃と、後に二次性AMLと診断された時に、検体を採取されている。

各サンプルにおける遺伝子変異を比較することで、癌細胞の遺伝的進化を経時的にとらえることができた。また、最初に癌となった細胞群、いわゆるfounding clone(創始クローン)も特定できた。その後新たな細胞群、すなわちdaughter clone(娘クローン)が出現してくることも観察された。

本知見は3月14日付New England Journal of Medicine誌電子版に掲載され、二次性AMLは骨髄異形成期に存在した遺伝子変異を伴う骨髄細胞由来であることを示唆する。

「これらの疾患は複数のクローンで構成され、各クローン間に関連があります」と本研究の統括著者であるDr. Timothy Graubert氏は話している。「いずれの症例でもfounding cloneの娘細胞群は、最初に癌化した細胞群の持つ遺伝子変異を受け継いでいました」。

治療上の意味

二次性AMLへ進行させることが疑われる遺伝子変異は常に骨髄異形成症候群の細胞群に由来するという今回の知見から、初期の遺伝子変異を標的とすることが、変異細胞の進化を防ぐ最も効果的な方法ではないかと研究者は予測している。進化後の癌細胞にのみ存在する遺伝子変異を標的とした薬剤では、その効果は進化後の癌にしか及ばない可能性があると研究者らは指摘した。

最適な標的を発見するため「ある特定の変異が癌の初期からあったものか、後に生じたものであるかを決定する必要があります」とGraubert氏は説明した。

研究者がこれらの患者の癌細胞で同定した11個の遺伝子変異は、後に他のAML患者でも検出された。すなわち、これらの遺伝子変異が二次性AML(の発症)に関与することが示唆された。このうち4つの変異は、骨髄異形成症候群、白血病のいずれとの関係も今まで示されていなかった。

DNA配列解析に加え、研究者は遺伝子コピー数の変化および遺伝子発現パターンも解析した。個々の癌細胞は何百もの遺伝子変異を有していたが、AMLへの進行に関連する変異はその数%にすぎないだろうと研究者は予測している。

しかしながら、付加的な遺伝子変異は、経時的なクローン進化を追跡するのに必要な検出力を有していた。

「詳細な解析により遺伝子変異の存在が確認でき、遺伝子変異した細胞がサンプル中にどれくらいあるかの予想がつきました」とGraubert氏は述べた。「(癌の)不均一性を説明し、クローン進化モデルの全体像を構築できるかもしれません」。

タンパク質のプロファイリング腫瘍内のタンパク質は遺伝子変異と同様に多様である。患者腫瘍サンプルを用いた最近の臨床研究では、「異なる患者のサンプルのみならず、同一腫瘍内の別サンプルでさえも、タンパク質発現の不均一性は驚くほど多い」ことがわかっている。「この事実はすなわち、1人の患者腫瘍に複数の遺伝子変異が存在する可能性があり、この不均一性はタンパク質レベルでも同様である、ということです」と共同研究者でマサチューセッツ総合病院のDr. Cesar Castro氏は述べた。Castro氏のチームは、癌をすばやく診断するために開発された技術で細胞のプロファイリングを行った。

Castro氏はまた、癌細胞の不均一性を理解するため、侵襲性を最小限に抑え何度も採取可能なサンプル採取法や、サンプルから最大限の情報を引き出す方法が求められる、と述べた。

癌のモデル

本研究では、実験的に確認することが難しかった癌発生のモデルを支持するエビデンスが得られた、とシカゴ大学医療センターのDr. Lucy Godley氏は付随する論説で指摘した。

同モデルでは、癌とは、たった1個の変異細胞から始まった後天的な遺伝子変異やエピジェネティック変化(DNA配列以外の変化に起因する遺伝子機能の変化)が蓄積して病勢が進行したものと説明される。この過程が進むと、細胞の「サブクローン」が新たに化学療法への耐性や転移能力などの有利な性質を獲得する。

この理論は何年も前からある、とGodley氏はインタビューで述べた。「ですが、新しい技術によって以前には質問のしようがなかった質問を投げかけることができます。この手のゲノム研究の醍醐味はそこにあります」。

英国癌研究基金ロンドン研究所のDr. Charles Swanton氏が中心となって進めた最近の別の遺伝子解析研究では、同一の腎臓腫瘍の異なる部分において遺伝子のばらつきが示された。同研究では全ゲノム解析でなく、タンパク質をコードする部分(エクソーム)の解析を行った。

「癌は不均一な場合もあることがわかっており、腫瘍の異なる部位間や白血病の異なる癌細胞間には癌進化上の関連が存在すると思われます」。ワシントン大学ゲノム研究所理事で今回のAML研究の共著者であるDr. Elaine Mardis氏はこう話している。

腫瘍の不均一性に関する今回の知見は、過去の乳癌研究の結果と一致しているとMardis氏は指摘する。例として、Mardis氏らのグループが同一患者から採取したDNAサンプル4本を解析した研究や、別グループが同一患者で採取時期が9年離れたサンプルの比較を行った研究がある。同様に、Mardis氏らの最近の報告では、原発性の(二次性ではない)AML患者が化学療法終了後に再発した場合、再発したクローンは最初の診断時に存在したクローンに由来するものであったという。

未来の可能性

Graubert氏らが研究でも言及しているように、個々の癌細胞のゲノムを解析することで遺伝子の複雑さが明らかになるであろう。遺伝子解析はまだ成熟には遠い技術であるが、最近のパイロット研究でいかに力を発揮するかが示唆されている。

BGI(元・北京ゲノム研究所)の研究者らは、腎臓癌のアジア系男性から提供を受けた細胞25個のエクソームを解析した。その結果、この男性には西欧人集団で腎臓癌と大きな関連があるとされる遺伝子に変異がなかったことなどがわかった。

同研究はCell誌に掲載され、興味深い知見が得られているが、細胞1個の遺伝子解析結果だけでは臨床研究に結びつかない、と共著者でNCI癌研究センターのDr. Michael Dean氏は指摘した。

Dean氏はさらに、「少なくとも一部の癌においては、治療法を決定する判断材料となるような全体像を把握するために、複数のサンプルと複数の遺伝子解析法を用いることが必要であるのは明らかです」と述べた。

Mardis氏もこれに同意している。「これらの遺伝子解析研究はいろいろな方法で(癌に)アプローチできるようになってきているので非常にわくわくします」。

— Edward Winstead

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橋本 仁 訳
吉原 哲(血液内科・造血幹細胞移植/兵庫医科大学病院) 監修
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