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骨髄線維症患者の生存期間と生活の質を改善する薬剤/MDアンダーソンがんセンター

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骨髄線維症患者の生存期間と生活の質を改善する薬剤/MDアンダーソンがんセンター

Ruxolitinibは肥大した脾臓を縮小させ、不治の悪性腫瘍による衰弱症状を軽減する
M.D.アンダーソンがんセンター
2012年2月29日

New England Journal of Medicine誌の3月1日号に掲載された第3相臨床試験によると、骨髄線維症と呼ばれる生命を脅かす骨髄癌の重度症状を軽減させる薬剤は、その患者の生存期間も改善する。

「第1/2相臨床試験により、ruxolitinibは多くの骨髄線維症患者の生活の質を改善することが示され、今回、この第3相試験により、効果的な治療法が不足している患者集団の生存期間を延長することが示された」とテキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの白血病部門の准教授であり、臨床試験主任研究員のSrdan Verstovsek医学博士は述べた。

Ruxolitinibによる治療を受けた患者は、疲労、体重減少、腹痛、重度のかゆみ、寝汗、骨痛を含む骨髄線維症の衰弱症状の軽減も経験した。本薬剤は、多くの症状に関連するこの疾患の特徴である脾臓肥大を縮小させた可能性が高い。

骨髄線維症は炎症応答を惹起する悪性の骨髄細胞の集積が原因であり、骨髄を瘢痕化させ、血液産生能を制限し、結果として貧血を引き起こす。毎年、米国では約3000の骨髄線維症の新規症例が診断されている、とVerstovsek氏は述べた。平均生存期間はさまざまな予後因子により、2年から11年におよぶ。

昨年11月、米国食品医薬品局は、この臨床試験結果の一部に基づいて、中程度また高リスクの骨髄線維症患者を対象に、Incyte社により開発され、Jakafi®の商品名で知られるruxolitinibを承認した。本薬剤は骨髄線維症を適応として承認された初の薬剤であり、それまでは輸血その他の治療法のような有益性が限られている対処療法によって治療がなされてきた。

治療群では死亡率が約半分に低下した
臨床試験では、米国の89施設において309人の患者を登録し、155人をruxolitinib、154人をプラセボへと無作為に割り付けた。

追跡期間の中央値は51週で、ruxolitinib群では13人(8.4%)の死亡があり、プラセボ群では24人(15.7%)であった。解析時において、プラセボ群の患者111人はruxolitinib群へと転向(クロスオーバー)しており、38人は転向せずに試験参加を中止し、2人はプラセボ治療を続けていた。プラセボ群の患者の多くは進行性の脾臓肥大と骨髄繊維症関連症状の悪化を経験した。転向(クロスオーバー)の平均期間は41週であった。

脾臓の縮小
臨床試験の主要評価項目は、核磁気共鳴画像法(MRI)により測定された脾臓容積が、24週時点で35%以上縮小した患者の割合であった。

「脾腫として知られる脾臓の肥大は患者に痛みを引き起こしたり、かがんだり歩いたりすることを困難にするだけではない。」とVerstovsek氏は述べた。「脾臓の肥大により胃腸が圧迫されることで、食欲が抑えられ、体重減少につながる」。

末期の骨髄繊維症患者は、腹部が肥大し、手足がやせ衰えた飢餓状態の人と似ている。

・治療群において、患者の41.9%が少なくとも35%の脾臓容積の縮小を経験し、治療に反応した患者の67%では48週以降も脾臓容積が小さいままであった。
・プラセボ群において、脾臓容積が35%縮小した患者はたった7%であった。
・24週時点で、ruxolitinib群の脾臓容積は平均して31.6%減少していたが、一方でプラセボ群では8.1%増加していた。

症状の改善
患者は、試験の共著者であるMayo Clinic in Scottsdale, ArizのRuben Mesa医師が開発した電子日記である骨髄線維症症状評価シートを毎晩記入した。彼らは、寝汗、かゆみ、腹部不快感、左側の肋骨下の痛み、膨満感、筋肉や骨の痛み、無気力の強度を評価した。

治療群患者の45.9%は24週にわたり、全症状スコアの50%以上の減少を報告したが、プラセボ群では患者の5.3%であった。治療群の患者は体重が増加したが、プラセボ群では減少した。

症状の改善は通常、治療開始から4週間以内に認められ、脾臓が縮小した患者に限定されるわけではないとVerstovsek氏は述べた。

骨髄瘢痕は回復しない
臨床試験の両群において、患者の11%が有害事象のため試験参加を中止しなければならなかった。ruxolitinib投与群患者でより多くみられた副作用は貧血と血小板数の減少であったが、その理由で薬物投与を中止した患者はそれぞれ1人であった。

Ruxolitinibは骨髄線維症の病態生理に重要である骨髄細胞内部のJanus Kinase酵素(JAK1とJAK2)の阻害剤である。第1/2相臨床試験が示したように、患者の50%にみられる共通のJAK2変異があるかどうかに関わらず、患者は薬剤に反応した。

「Ruxolitinibは過剰に活性化したJAK/STAT細胞内シグナル経路をどれでも阻害する」と第1/2相臨床試験も主導したVerstovsek氏は述べた。

本薬剤は治療の臨床上の有益性があるにもかかわらず、骨髄にすでに起こっている損傷を回復させない。「損傷は悪化も改善もしない」とVerstovsekは述べた。さらなる治療の進展には薬剤の追加や併用療法が必要であり、現在、それらのいくつかは臨床試験が行われている。

Verstovsek氏の業績は骨髄増殖性疾患に焦点を当てている。彼は毎年200から250人の新規患者を診療しており、さらに、慈善団体による資金提供を受けて白血病部門に昨年作られた新センターであるClinical Research Center for Myeloproliferative Neoplasiaの代表でもある。M.D.アンダーソンは通常、様々な企業からの骨髄増殖性疾患を治療する薬剤を用いた施行中の臨床試験を10以上行っている。

臨床試験はIncyte社より資金を提供された。

共著者
Co-authors with Verstovsek and Mesa are Hagop Kantarjian, M.D., of MD Anderson’s Department of Leukemia; Jason Gotlib, M.D., Stanford Cancer Institute; Richard Levy, M.D., Kris Vaddi, Ph.D., Susan Erickson-Viitanen, Ph.D., Iphigenia Koumenis, William Sun, Ph.D., Victor Sandor, M.D., of Incyte Corporation, Wilmington, Delaware; Vikas Gupta, M.D., Princess Margaret Hospital, University of Toronto, Toronto; John F. DiPersio, M.D., Ph.D., Washington University School of Medicine, St. Louis; John Catalano, M.D., Frankston Hospital, Frankston, Victoria, Australia; Michael Deininger, M.D., Oregon Health and Science University, Portland; Ph.D., Carole Miller, M.D., Saint Agnes Cancer Institute, Baltimore; Richard T. Silver, M.D., Weill Cornell Medical Center, New York; Moshe Talpaz, M.D., University of Michigan; Elliott Winton, M.D., Emory University School of Medicine, Atlanta; Jimmie Harvey, Jr., M.D., Birmingham Hematology and Oncology, Birmingham, Alabama; Murat Arcasoy, M.D., Duke University Health System, Durham, N.C., Elizabeth Hexner, M.D., Abramson Cancer Center, University of Pennsylvania; Roger Lyons, M.D., Cancer Care Centers of South Texas and US Oncology, San Antonio, Texas; Ronald Paquette, M.D., UCLA Medical Hematology and Oncology; and Azra Raza, M.D., Columbia Presbyterian Medical Center, New York. 02/29/12

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下野龍太郎 訳
林 正樹(血液・腫瘍内科/敬愛会中頭病院) 監修
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原文


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