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ディーゼル排気への大量曝露が鉱山労働者の肺癌死に関連

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ディーゼル排気への大量曝露が鉱山労働者の肺癌死に関連

NCIプレスリリース 2012年3月2日

米国の非金属鉱山労働者を対象とした研究で、連邦政府研究者は、ディーゼル排気への大量曝露は肺癌死のリスクを増大させると報告した。本研究は、米国保健社会福祉省(HHS)の下部組織である、米国国立衛生研究所の一部門である米国国立癌研究所(NCI)および、米国疾病対策センターの一部門である米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の研究者らにより行われた。その結果は、Journal of the National Cancer Institute誌2012年3月2日号に掲載された2つの論文で発表され、2012年3月5日、JNCIウェブサイト上に公開される予定である。

「鉱山労働者への影響に関する研究(Diesel Exhaust in Miners Study)」は、非金属鉱山8施設に従事する12,315人の鉱員を対象とし、ディーゼル排気による癌リスク、特に肺癌への影響を評価するために計画された。施設の場所は、ミズーリ州(石灰石鉱山1施設)、ニューメキシコ州(カリ鉱山3施設)、オハイオ州(岩塩坑1施設)、ワイオミング州(トロナ鉱山3施設:ソーダ灰に利用される鉱石を加工する鉱山)であった。

研究チームが調査背景に地下鉱山を選定したのは、ディーゼル燃料を使用する重機が瀕用されているからである。地下鉱山の極めて閉鎖された環境で、排ガスは、運送トラック倉庫や造船所といった他の職業環境よりかなり高いレベルまで空気中に増加し、一般人が吸入する空気より何倍も高くなる。非金属鉱山に限定したのは、他に肺癌リスクへの関与が考えられるラドン、シリカ、アスベストといった鉱物への曝露レベルが特徴的に低いからである。

ディーゼル排気曝露に関連する健康面の転帰は2つの相補的な論文で報告された。1つめでは、肺癌に重点をおくとともに、全研究母集団のデータからあらゆる死因のリスクが立証された(コホート研究)。2つめ(ケース・コントロール研究)では、コホート研究を受け、肺癌死について報告された。ケース・コントロール研究で、研究チームは、喫煙、他のハイリスクな職業への従事、別の呼吸器疾患歴などの肺癌危険因子について詳細な情報を得た。両論文で、曝露レベル増加によりリスクが高くなる曝露反応関係が報告された。

「肺癌リスク評価のためには、喫煙および他の潜在的関連因子を補正した後、曝露歴の定量的評価に基づきディーゼル排気と肺癌の関係の大規模研究を行うことが極めて重要だったのです」と、ケース・コントロール研究筆頭著者であるNCIの癌疫学・遺伝子学部門(DCEG)職業・環境疫学支部長 Debra T. Silverman博士(Sc.D)は述べた。

各鉱員の曝露を定量するため、研究チームは、各鉱山での数千もの空気中ディーゼル排気成分の計測値を集め、曝露歴の情報とそれらのデータを組み合わせた。重要な点として、ディーゼル排気レベルは、地下鉱山内ディーゼル排気の最適な指標とされる、排ガス主要成分の一つである呼吸によって体内に入る炭素の計測値と概算値により数量化された。 同様の曝露測定が、コホート解析およびケース・コントロール解析の双方に用いられた。この測定方法は、以前、Annals of Occupational Hygiene誌で2010年に掲載された4本の論文で発表された。5本目の論文である「曝露評価の判定(an evaluation of the exposure assessment)」は同誌2012年3月号に掲載された。

NIOSH在職時にコホート研究を主導したMichael D. Attfield博士は、排ガスに大量に曝される地下鉱員の肺癌リスクは、曝露レベルが最も低い鉱員の5倍であることをつきとめた。

ケース・コントロール研究で、コホート研究での肺癌に関する知見が裏付けられた。喫煙や他の肺癌危険因子が補正されたデータは、肺癌死全体のリスクは3倍、大量に曝露する地下鉱員では約5倍であることを示し、すなわちその結果はコホート解析と一致していたのである。

非喫煙者にとって、肺癌死のリスクは、ディーゼル排気への曝露が増加するとともに高くなった。「これらのデータから、非喫煙者に対するディーゼル排気の影響がとりわけ明白になりつつあります」とSilverman氏は述べた。根拠となる例が少数ではあるが、ディーゼル排気への曝露が最高レベルの非喫煙者は、最低曝露レベルの非喫煙者に比べ、肺癌死リスクが7倍であった。

「今回の画期的な研究で地下鉱員の肺癌リスクが判明しましたが、その結果は、米国内や海外でディーゼル排気に曝される他の労働者やディーゼル排気レベルが上昇している都市部に住む人々にまで同様のリスクが及ぶ可能性を示唆しています。」と疫学・遺伝学部門(DCEG)長Joseph F. Fraumeni, Jr.医学博士は述べた。

「鉱山労働者への影響に関する研究(Diesel Exhaust in Miners Study)」
に関するより詳細な情報はhttp://www.cancer.gov/newscenter/pressreleases/2012/DieselMinersQandA
の「質問と回答」を参照のこと。

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佐々木亜衣子 訳
後藤 悌 (呼吸器内科/東京大学大学院医学系研究科) 監修
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原文

 

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