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2012/03/06号◆特別リポート「大腸内視鏡検査によって高リスク患者の大腸癌による死亡リスクが低下」

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2012/03/06号◆特別リポート「大腸内視鏡検査によって高リスク患者の大腸癌による死亡リスクが低下」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2012年3月6日号(Volume 9 / Number 5)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ 特別リポート ◇◆◇

大腸内視鏡検査によって高リスク患者の大腸癌による死亡リスクが低下

大腸癌のリスクが平均より高い患者に対する大腸内視鏡検査の長期研究結果から、前癌性腺腫の切除によって大腸癌のリスクが低下するだけでなく大腸癌による死亡数も半分超減少することが本試験で確認された。この知見は2月23日付のNew England Journal of Medicine誌で発表された。

この全米ポリープ研究(National Polyp Study)の結果は、平均的リスクの一般集団には適用できないかもしれない。しかし、この知見は、平均よりリスクが高い人では前癌性腺腫の切除によって大腸癌死亡リスクが低下するという保証になると代表著者であるスローンケタリング記念がんセンターのDr. Ann Zauber氏は述べた。

「検診で見つかるものの大部分は腺腫で、癌ではないので、大腸内視鏡検査をするときにはそうした腺腫を切除することの(死亡率に対する)影響を知ることが本当に重要だと思います」とZauber氏は言う。(平均的リスクの人の大腸癌検診の利益はいくつかのランダム化試験で検討中である。サイドバー参照)

先に出た全米ポリープ研究の結果により、大腸内視鏡検査と検査中の腺腫の切除は大腸癌の発生を減らすことが示された。しかし、この研究で大腸癌の発生が低下したからといって死亡も低下するかどうかはより長期のフォローアップによってしか判断できない。

この試験で死亡率低下が示されなかったのであれば、大腸内視鏡検査で見つかるのは死亡につながるような侵襲性の癌に進行しない腺腫であったことを示していたといえるとZauber氏は説明した。しかしそうではなく、大腸内視鏡検査と腺腫の切除によって大腸癌死亡率が20年以上のあいだに半分超低下したという知見は、少なくとも確認された一部の腺腫は切除されなかったなら癌に進行していたことを示している。

大幅な死亡減少

1980年に、スローンケタリング記念がんセンターの試験責任医師Dr. Sidney Winawer氏と共同研究者らは7臨床施設で全米ポリープ研究を開始した。この試験は、腺腫切除後の経過観察のための大腸内視鏡検査を行う適切な間隔を決めるためにデザインされた。

もともとの9,000人の参加者のうち、3,778人が1個以上のポリープを切除した。このうち、2,632人に腺腫がみられた。それ以外の776人には良性ポリープがあり、この患者らは研究の追跡調査期間において、初回の大腸内視鏡検査時に腺腫のみられなかった人の生存率を追跡するための内部対照群とされた。

全患者の追跡調査期間の中央値はほぼ16年であった。腺腫を切除した群の大腸癌死亡率を腺腫のみられなかった内部対照群の死亡率と比べた。また腺腫のみられた群の死亡率を一般集団での期待死亡率(NCIのSEER[Surveillance, Epidemiology, and End Results]データベース、全米保健医療統計センター[National Center for Health Statistics]データベース、国民死亡記録[National Death Index]から算出)と比較した。

フォローアップ期間中に、腺腫のみられた群の患者12人が大腸癌で死亡したが、それに比べて一般集団での期待死亡数は25.4であった。このことは、大腸内視鏡検査中に前癌性腺腫を切除した後、大腸癌による死亡のリスクが約53%低下したことと解釈される。

腺腫のみられなかった群で追跡期間中に大腸癌で死亡したのは1人のみであった。初回大腸内視鏡検査後の最初の10年間の大腸癌による死亡のリスクは、前癌性腺腫を切除した患者と腺腫のみられなかった人とのあいだでほぼ同じであった。「私たちは、これは力強い結果だと思います」とZauber氏は述べた。

進行中の大腸癌検診試験北欧大腸癌イニシアティブ(Northern-European Initiative on Colorectal Cancer)(欧州)
COLONPREV(欧州)
CONFIRM(米国)

腺腫切除の自然史のモデルをつくる

腺腫切除による死亡率減少の利益の実際の大きさを検討するためには、理想的なランダム化試験は、腺腫を切除した患者の群の大腸癌死亡率を腺腫が見つかったが切除しなかった患者の群の死亡率と比べるものであろうと、NCI癌予防部門(DCP)Gastrointestinal and Other Cancers Research Group(消化器その他の癌研究グループ)の長であるDr. Asad Umar氏は説明した。しかし、10~24%の腺腫は癌に進行するという明らかな根拠があるのでそのような試験は倫理的ではないとも述べた。

こうした種類の比較は行うことができないので、この試験では、全米ポリープ研究群と同じ年齢で同数の腺腫が確認されたがその腺腫を切除しなかった群での期待死亡数を推測するためにMISCAN-ColonというコンピューターモデルもZauber氏らは用いた。

このモデルは、NCIの助成を受けた癌介入および調査モデルネットワーク(CISNET)が作成したもので、仮説上の集団における大腸癌死亡リスクを算出するために、腺腫から癌への自然進行に関する検証されたデータを用いている。

MISCAN-Colonに基づき、研究者らは腺腫を切除しなかった場合には患者145人が死亡しただろうと推定したが、この試験で腺腫を切除した患者では死亡したのは12人のみだった。このモデルにより、大腸内視鏡検査と腺腫切除によってこの群の高リスク患者の死亡率が92%低下したことが示唆されている。

将来の疑問

一般集団に対する最適な調査の戦略を確立するためには、腺腫が認められる患者で大腸癌に進行するリスクが低い人と高い人を特定する最良の方法を示す別の試験が必要だとZauber氏は述べた。高リスク患者の多くは十分な追加検診を受けていない一方、低リスク患者の多くがその後の経過観察で大腸内視鏡検査を受ける回数が多過ぎることが示されている。「私たちは大腸内視鏡検査を賢明に利用する必要があります。大腸内視鏡検査には確かにリスクがあるからです」ともZauber氏は述べた。

同氏は大腸内視鏡検査の質と基準を改善すべきであるとも考えている。「私たちの(全米ポリープ研究の)が行った初回の質の高い大腸内視鏡検査が、この試験でみられた発生率と死亡率の両方の大幅な低下に確実に貢献したと思っています」とも述べた。

この試験により「大腸内視鏡検査によって大腸癌のリスクが低下し、大腸癌死亡率が低下するという一般に信じられている仮定―私はそれを正しいと思っています―を裏づける根拠がさらに増えています」とDCP部長のDr. Barry Kramer氏は述べた。

この試験でみられた50%のリスク低下は、この特定の試験集団以外には適用できない可能性がある。「試験参加者は平均的集団よりも全体として健康で、そのため彼らの死亡リスクが低下した可能性があります。が、彼らには見つからなかった腺腫様ポリープがあって、それによって死亡リスクが高まった可能性もあるのです」とKramer氏は説明した。

「この試験はランダム化されておらず、しかもこの試験結果を一般集団に適用するのは非常にむずかしいですが、大腸内視鏡検査は大腸癌死亡率を低下させることが、割合はともかくとして、この試験により確認されました。しかし、私たちはまだ『(一般の)人々において、大腸癌死亡率の絶対的低下とは何だろうか』という疑問に正確に答えることはできません」とKramer氏は述べた。

いくつかの大規模集団ベースの大腸癌検診試験の(きちんとした)最終的結果が利用可能となるのは2020年以降であるが、大腸内視鏡検査による検診が一般の人々の大腸癌死亡率を低下させる可能性があることを予備的ながら一部の研究は示している とも同氏は述べた。

— Sharon Reynolds

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鈴木久美子 訳
斎藤 博(消化器内科・検診/国立がんセンター がん予防・検診研究センター) 監修
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