2012/03/06号◆癌研究ハイライト「ベムラフェニブが転移メラノーマ患者の生存期間を延長」「低侵襲な便潜血による検査は大腸内視鏡と同等に有効」「化学療法による認知機能障害は20年以上後までも」「乳癌リスクが高い家系に示唆された新たな遺伝子変異」「mTORタンパクの癌化促進作用を解明する研究」 | 海外がん医療情報リファレンス

2012/03/06号◆癌研究ハイライト「ベムラフェニブが転移メラノーマ患者の生存期間を延長」「低侵襲な便潜血による検査は大腸内視鏡と同等に有効」「化学療法による認知機能障害は20年以上後までも」「乳癌リスクが高い家系に示唆された新たな遺伝子変異」「mTORタンパクの癌化促進作用を解明する研究」

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2012/03/06号◆癌研究ハイライト「ベムラフェニブが転移メラノーマ患者の生存期間を延長」「低侵襲な便潜血による検査は大腸内視鏡と同等に有効」「化学療法による認知機能障害は20年以上後までも」「乳癌リスクが高い家系に示唆された新たな遺伝子変異」「mTORタンパクの癌化促進作用を解明する研究」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2012年3月6日号(Volume 9 / Number 5)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中
PDFはこちらからpicture_as_pdf

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◇◆◇ 癌研究ハイライト ◇◆◇
・ベムラフェニブが転移メラノーマ患者の生存期間を延長
・低侵襲な便潜血による検査は大腸内視鏡と同等に有効
・化学療法による認知機能障害は20年以上後までも
・乳癌リスクが高い家系に示唆された新たな遺伝子変異
・mTORタンパクの癌化促進作用を解明する研究
(囲み記事)
・その他のニュース:タバコ包装の画像警告に違憲判決
・その他のジャーナル記事:エンドポイントとしての無増悪生存期間(PFS)に疑問符

ベムラフェニブが転移メラノーマ患者の生存期間を延長

第2相臨床試験から、より長期間の追跡データが得られた。転移性悪性黒色腫患者で特定の遺伝子変異を有する場合、分子標的薬であるベムラフェニブ[vemurafenib](Zelboraf:ゼルボラフ)が全生存期間を改善させることが、New England Journal of Medicine誌2月23日号で発表された。この変異はBRAF遺伝子のV600変異であり悪性黒色腫と診断された患者の約半数に見つかる。

標準療法が効かなくなった132人の患者の臨床試験において、追跡期間中央値が約13カ月の時点で生存期間中央値は約16カ月であり、これまでの転移性悪性黒色腫患者での生存期間中央値6~10カ月に比べて大きく改善した。無増悪生存期間の中央値は6.8カ月であった。

昨年、大規模第3相臨床試験の結果が良かったため、米国食品医薬品局(FDA)はこの変異がある転移性悪性黒色腫患者に対するベムラフェニブを承認した

今回の試験(製造元のRoche社により資金提供)では、半数以上の患者で腫瘍に効果があり、6%の患者は完全寛解した。治療に反応した患者の多くは2カ月以内に腫瘍が縮小した。

この薬剤を使用している患者の多くはいずれ治療抵抗性を示すだろうと、本試験の筆頭著者であり、テネシー州のバンダービルト・イングラムがんセンターのDr. Jeffrey Sosman氏は語った。しかし、一部の患者では治療開始2年後でも増悪の徴候はないと同氏は指摘した。

本薬剤はおおむね忍容性が良いと研究者らは報告している。しかし、副作用のために45%の患者が本薬剤の用量を減量し、約3分の2の患者は一時的に治療を中断しなければならなかった。多く見られる副作用としては発疹、関節痛、光過敏症がある。また、他のベムラフェニブの臨床試験でも見られるように、約4分の1の患者で癌性あるいは前癌性の皮膚病変が生じた。

これらの患者の多くは、1~2個のみの病変であり、すべての症例で容易に外科的切除できたと Sosman氏は述べた。

低侵襲な便潜血による検査は大腸内視鏡と同等に有効

欧州での臨床試験により、大腸内視鏡検査と便検査のひとつである免疫便潜血検査(FIT)は大腸癌を同程度に検出することが初めて明らかとなった。COLONPREV試験を主導する研究者らは、リスクが中程度の人を対象に、1回の大腸内視鏡検査が2年に1回の便潜血検査と比べて大腸癌による死亡を減少させることができるかを調べている。この試験の初回検診の結果New England Journal of Medicine誌2月23日号で発表された。

便潜血検査群の患者は大腸内視鏡検査群に比べて検診の受診率が高く、それぞれ34.2%と24.6%であった。この2つの検診法の癌発見率は同等であり、発見された癌の病期は両者で差はなかった。しかし、大腸内視鏡検査は便潜血検査に比べて、進行腺腫の発見および、非進行性の腺腫の発見には特に優れていた。しかし、どの程度の非進行性の腺腫が進行性の癌になるのかはまだわかっていない。

「本試験の主要評価項目は10年後の大腸癌死亡率の減少であるため、2つの検診法の相対的な利益とリスクは試験終了時に評価される」と著者らは説明した。追跡は2021年まで続けられる。

これらの結果は期待できると、NCI癌予防部門の部長であるDr. Barry Kramer氏は述べた。なぜなら、低侵襲な便潜血検査(検診参加率がより高い)が、本試験の初期段階で大腸内視鏡検査と同数の癌を発見したからである。

「最終的な証明は死亡率で確認するが、試験が進むにつれて、1回の『大腸内視鏡検査』で見逃され、死亡に繋がる可能性がある癌が、便潜血検査により発見されることは十分想像できる」と同氏は説明した。COLONPREV試験の計画では、大腸内視鏡検査に割り付けられた患者は1回のみの検診だが、便潜血検査に割り付けられた患者は10年に渡って2年ごとに便検査を受ける。

化学療法による認知機能障害は20年以上後までも

一度も癌と診断されたことが無い女性と比較して、術後補助化学療法を受けた乳癌患者に治療後20年以上経ても認知障害が現れることが多い。Journal of Clinical Oncology誌2月27日号電子版に掲載されたこの結果からは、ケモブレインとして知られるこの現象が、癌治療が終了した後数十年経っても残存する可能性があり、癌サバイバーが増加するにつれて増える傾向が示唆された。

化学療法の長期にわたる認知機能への影響を調査するために、オランダのロッテルダムにあるエラスムスMC大学医療センターのDr. Vincent Koppelmans氏らは、オランダの2病院の記録から条件に合う乳癌患者196人を抽出し、彼女たちに学習能力、記憶能力、情報処理能力および精神運動能力を検査する試験に参加するように依頼した。

患者たちは全員、平均21年前にシクロホスファミドメトトレキサートおよびフルオロウラシルCMF)による補助化学療法を6サイクル受けた。この試験へ参加した際の年齢は50歳から80歳の間であった。再発、二次原発腫瘍、遠隔転移した人および補助内分泌療法を受けた人たちは試験から除外された。

オランダで地域住民を元に行われている研究でもあるロッテルダム研究から1,509人の女性が対照集団として選ばれた。これらの女性たちは癌になったことがなく、試験時に50歳から80歳の間であった。

認知症のスクリーニング試験では、研究者たちは2グループ間に違いを認めなかったが、乳癌サバイバーたちは言語的遅延記憶、処理速度そして精神運動速度のいくつかの試験結果で劣っていた。記憶力に障害を持つサバイバーが多く、うつ症状については少なかった。

この障害のパターンは、化学療法終了後早期に行われた他の試験の結果に類似している。しかし、この試験結果が他の化学療法レジメンの長期にわたる影響を表しているかは不明である。

早期乳癌患者に対しては現在、より新たなレジメンが用いられているが、著者は「(CMF)は1990年代まで標準レジメンであり、(そして)シクロホスファミドとフルオロウラシルは現在使われているレジメンに引き続き組み入れられる」と言及した。

NCIの癌サバイバー支援室長のDr. Julia Rowland氏は「この研究は、癌を治療しコントロールすることに集中するだけでは十分でないという重要な注意喚起である」と述べた。「われわれは、治療が長期にわたって健康に影響することと、ますます増加する癌サバイバーの認知機能についても注意を払わなくてはいけないのである」。

関連記事:「ケモブレインのメカニズムについて考察する

乳癌リスクが高い家系に示唆された新たな遺伝子変異

BRCA1および他のDNA修復タンパクと相互作用するタンパクをコードするAbraxas遺伝子の遺伝性変異が、一部の家族の乳癌リスク増加に関連することが新たな研究結果で示された。この結果Science Translational Medicine誌の2月22日号で発表される。

BRCA1とBRCA2の遺伝性変異は乳癌と卵巣癌の遺伝的リスク要素として最もよく知られているが、これらの変異が世界中の家族性乳癌すべての原因というわけではない。

Abraxasの変異が乳癌リスクへ影響するかどうかを調べるため、フィンランドと米国の研究者チームは、北フィンランドのAbraxas遺伝子の遺伝性変異による乳癌の発症歴がある125家族を選別した。いくつかの遺伝子配列変異が発見され、そのうち1つはタンパクの機能異常を来しうることがわかった。

これらのうち3家族にこの遺伝子変異を有することが判明し、さらに調査対象でなかった乳癌患者の集団で乳癌の家族歴のあることが判明した女性1人にもこの遺伝子変異があることが判明した。この分析が行われたうち2家族には、変異と共に乳癌も発見された。北フィンランドの868人の健康な女性たちにはAbraxas変異は発見されなかった。

「AbraxasタンパクはBRCA1タンパクと直接結びつき、細胞核内のDNA損傷部分にBRCA1を運ぶ機能を担っている」とフィンランドのOulu大学のDr. Robert Winqvist氏との共同著者でペンシルバニア大学のDr. Roger Greenberg氏は説明した。「そのタンパク質は変異してもBRCA1および他のDNA修復タンパク質と相互作用するが、変異したタンパク質はそれらがDNA損傷部分に到達するのを妨げる」とGreenberg氏は述べた。

DNA修復過程の欠損は、乳癌および他の癌リスクの増加を可能にする細胞内の遺伝物質の変化を引き起こす。実際に研究者らは、Abraxas変異がみられた家族のうち2家族に乳癌以外の数種類の癌を発見し、このことは、その遺伝子がBRCA1遺伝子と同様に他の癌を発症させる原因となることを示している。

この研究は、北フィンランドの人のみを対象にしているため、「他集団でAbraxas変異を調査することは・・・重要だ」とGreenberg氏は述べた。最後に彼は、Abraxasは乳癌および卵巣癌の罹患歴がある家族の変異を調べる数個の遺伝子のうちの一つになりうるともつけ加えた。

さらに、NCIの癌生物学部門のDr. Richard Pelroy氏は、AbraxasがBRCA1と相互作用する仕組みについての情報を集めることは、標的とするBRCA1欠損を治療する方法の進歩に貢献できると言及している。

mTORタンパクの癌化促進作用を解明する研究

mTORタンパクは、タンパク翻訳を調節する働きがあり、多くの癌で機能亢進している。Nature誌2月22日号電子版で発表された新しい研究によると、mTORは癌細胞が腫瘍から抜け出し、他の組織に浸潤するのを助ける一群のタンパクの産生を増加させる。同じ研究のなかで、転移性前立腺癌のマウスモデルにおいて、INK128というmTORの活性を強力に阻害する研究中の薬剤では、腫瘍縮小や転移抑制が他のmTOR阻害剤に比べてさらに効果的であることが認められた。

INK128やmTORを同様の方法で標的とする開発中のその他の薬剤は、その作用機序のため、転移性癌に特に有効である可能性があると本研究の主導研究者であるカリフォルニア大学サンフランシスコ校のDr. Davide Ruggero氏は指摘した。

研究チームは、細胞中のリボソームによりどのメッセンジャーRNAがタンパクに翻訳されているのかを示すリボソームプロファイリングという新しい技術を用いて、mTOR阻害により翻訳が変化した進行性前立腺癌細胞株で、1つのシグナルノードに集まる4つのタンパクを特定した。

Ruggero氏によれば、この技術により細胞中で機能的に何が起こっているのか、特に細胞活動の主要な原動力であるタンパク産生を分析することができる。「これら4つのタンパクは『mTOR』の下流で翻訳レベルが最も影響される。癌細胞がより転移や浸潤をしやすくなることに、それらのタンパクがどのように機能しているかをひとつずつ示す」。

マウスモデルにおいて、「INK128で治療すると前立腺における前立腺癌の局所浸潤の進行は完全に抑えられ、遠隔転移の総数と大きさが抑制された」と著者らは述べている。

本研究の著者のうち数人は、INK128を開発中のカリフォルニアを本拠とするIntellikine社の研究者である。本薬剤は現在いくつかの第1相試験が行われている」。

その他のニュース:タバコ包装の画像警告に違憲判決

米国連邦地裁のRichard Leon裁判官は、先週、米国食品医薬品局(FDA)がタバコの包装に喫煙の害を警告する画像掲載を義務づける法律は、合衆国憲法修正第1条で保障されている言論の自由の侵害にあたるという判決を下した。昨秋Leon裁判官は同法の施行差し止めを命じる仮処分を出している。これに対して政府は控訴しており、控訴審の新たな判決は60日後に出る。

FDAによる規制は本年秋から全面的に実施される予定であったが、抗訴審の結論が未決の間保留の状態である。FDAの上部組織である米国保健社会福祉省(HHS)は「現政権は、現在も米国における予防可能な死亡原因の上位にある喫煙のリスクを若い国民に警告するため、あらゆる策を講じる決意である。これらの重要な警告の普及を阻止しようとする試みは必ず失敗に終わることを確信している」と声明を出した。

その他のジャーナル記事:エンドポイントとしての無増悪生存期間(PFS)に疑問先週発行のJournal of Clinical Oncology誌のコメントペーパーは、臨床試験のエンドポイント指標に無増悪生存期間(PFS)を使用することを注意深く検討する必要性について論じている。カナダ国立癌研究所のDr. Christopher Booth氏とDr.Elizabeth Eisenhauer氏は、PFSをエンドポイントとする臨床試験が増えており、このような試験結果を基に新薬が承認されていることを指摘した。PFS評価は容易ではあるが、PFSの改善が必ずしも全生存期間(OS)や生活の質(QOL)の改善と同意義とは言えないとし、患者のためではなく新薬承認の基準を下げるためにPFSが利用されている可能性について問題提起した。詳細については次を参照のこと:「無増悪生存期間(PFS):患者の利益か、基準の低下か?

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野長瀬祥兼、山下隆子、[囲み記事]遠藤豊子 訳
小宮武文(呼吸器内科/NCI Medical Oncology Branch) 、原野謙一(乳腺・婦人科癌/日本医科大学武蔵小杉病院)、[囲み記事]林正樹(血液・腫瘍内科/敬愛会中頭病院) 監修
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