MiRNA-21が、ハーセプチン抵抗性となる腫瘍抑制因子の欠損に関連する/M.D.アンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

MiRNA-21が、ハーセプチン抵抗性となる腫瘍抑制因子の欠損に関連する/M.D.アンダーソンがんセンター

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MiRNA-21が、ハーセプチン抵抗性となる腫瘍抑制因子の欠損に関連する/M.D.アンダーソンがんセンター

腫瘍サンプル内のマイクロRNAはPTENを阻害することで乳癌に対する薬剤の作用を弱める
M.D.アンダーソンがんセンター
2010年4月19日

テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの研究者らが2010年米国癌学会の第101回年次総会で示したエビデンスによれば、特異なタイプのマイクロRNAが過剰発現すると、重要な分子が乳癌細胞の増殖にブレーキをかける能力を無効にし、治療が失敗する可能性がある。
この試験では、PTENとして知られるホスファターゼ・テンシン・ホモログ遺伝子を阻害することで、マイクロRNA-21がトラスツズマブ(商品名ハーセプチン)による治療を妨げることが示された。

「PTENは腫瘍抑制遺伝子として働き、細胞の増殖と細胞死の調節に関与しています」と、試験の筆頭著者でM.D.アンダーソンの分子・細胞腫瘍学科の大学院生研究助手であるSumaiyah K. Rehman氏は述べた。「PTENの発現が正常な場合、細胞増殖は遅くなり、老化するか増殖をしなくなります。」

PTEN遺伝子の変異は多くの癌種で発癌作用に関与しており、乳癌の発症および治療への反応の両方に影響をおよぼしている。

「癌細胞には、悪性度と進行を促進するシグナル伝達経路があることがわかっています」と上級著者であり、分子・細胞腫瘍学科の教授で副学科長のDihua Yu医学博士は述べた。「PTENは一遺伝子性のシグナル伝達経路でブレーキの役割を果たしますが、乳癌の40%にPTENの欠損がみられます。PTENの欠損が乳癌患者における臨床転帰の不良に関連することは既に立証されています。」

標的療法を妨げる

マイクロRNA(MiRNA)はRNAの断片で、特異的なメッセンジャーRNA(mRNA)を阻害することで遺伝子発現に影響を与える。メッセンジャーRNAにはタンパク質とその産生物を正しく産生する役割があるが、miRNAが干渉すると正常なタンパク質の産生が妨げされるか変化する。

「MiRNAは私たちの細胞の中にある分子で、数多くの生理学的機能を調節しています」とヒューストンにあるテキサス大学大学院生物医科学科(GSBS)の大学院生Rehman氏は「ほとんどの疾患と全ての癌ではmiRNAの調節機能の混乱がみられます」と述べた。MiRNAの発現変化はシスプラチンなどの化学療法に対する抵抗性の獲得に関連している。

研究者らはmiRNA-21の過剰発現がPTENの減少をまねき、続いてハーセプチンへの抵抗性をもたらすのではないかと疑った。ハーセプチンは転移乳癌の治療に使用されている標的療法の一つである。他の標的療法と同様に、ハーセプチンは腫瘍増殖を遅くするか停止させるために特異的な異常遺伝子に狙いを定める。ハーセプチン療法における標的遺伝子はHER2/neu あるいはHER2として知られるErbB-2である。

「ハーセプチンは癌標的療法の中で最も成功した例です。しかしこの単剤療法による効果を得られるのは乳癌患者の3分の1でしかありません」とYu氏は言及した。これはPTENの欠損が主な原因である。

ハーセプチン抵抗性におけるMiRNA-21の役割

3種類のHER2過剰発現乳癌細胞株で仮説を検証した。一連の実験では、HER2タンパク質が過剰発現した細胞株にmiRNA-21またはある種の対照miRNA、もしくはその両方を導入し発現させた。次にハーセチプチンで細胞を治療した。対照細胞と比較して高レベルのmiRNA-21を有する細胞では、PTENの発現が減少し、また薬剤に対する抵抗性が有意に高くなっていることを研究者らは発見した。

研究者らはまた、乳癌細胞におけるPTEN転写産物の特異的な部位においてmiRNA-21がPTENメッセンジャーRNAを阻害することでPTENの発現を減少させることを特定した。

別の実験では、高レベルのHER2発現細胞においてmiRNA-21を減少させる(下方制御させる)と細胞内のPTENレベルが上がり、対照miRNA細胞と比較してハーセプチンに対する感受性は高くなった。

研究者らは次に、ハーセプチンによる治療を受けているHER2陽性乳癌患者からの腫瘍サンプル内miRNA-21発現レベルを測定することで、彼らの知見の臨床的関連性を確定しようとした。その結果、miRNA-21の発現とハーセプチン治療に対する患者の不良な反応との間に有意な関連性が認められた。またmiRNA-21レベルの上昇と病勢進行の間にも優位な関連性が認められた。

またRehman氏は、腫瘍のmiRNA-21レベルが低い患者では、ハーセプチン治療により部分奏効するか、病勢の安定を得る傾向があることを明らかにした。

Rehman氏およびYu氏の他の共著者は以下のとおりである。Wen-Chien Huang, Brian F. Pickering, Ph.D., and Hua Guo, M.D., Department of Molecular and Cellular Biology at The University of Texas M. D. Anderson Cancer Center, and Wen-Chien Huang, M.D., a surgeon from Taiwan who worked for two years in Yu’s lab as a visiting physician-scientist.
Yu氏はまたGSBSにおいて癌生物学プログラム(Cancer Biology Program)を主導している。これはテキサス大学M.D.アンダーソンと同校ヒューストン健康科学センターとの共同事業である。

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岡田章代訳
上野直人(M.D.アンダーソンがんセンター教授)監修
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原文


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