2012/02/21号◆各界のトピック「免疫療法パイプライン強化のための臨床試験ネットワーク」 | 海外がん医療情報リファレンス

2012/02/21号◆各界のトピック「免疫療法パイプライン強化のための臨床試験ネットワーク」

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2012/02/21号◆各界のトピック「免疫療法パイプライン強化のための臨床試験ネットワーク」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2012年2月21日号(Volume 9 / Number 4)
日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ 各界のトピック ◇◆◇

免疫療法パイプライン強化のための臨床試験ネットワーク

NCIが出資し主導する新たな戦略のもと、抗腫瘍免疫反応を活性化させる癌治療法の開発を加速させるため、最初の臨床試験が年内に開始される予定である。癌免疫療法試験ネットワーク(CITN)には、米国屈指のがんセンターと大学27施設から一流の癌免疫療法研究者が参画して、有望な薬剤の発見、およびその薬剤をテストする試験を立案し実施することを目的として共同研究を行っている。

CITN試験で最初に扱う免疫療法薬が選択され、複数の試験が開始に向け進行中である。「幅広い合意を得て、この分野の経験と『英知』を結集し、」最初の2剤にはインターロイキン-15(IL-15)とCP-870,893を選択したと、CITNの試験責任医師で、シアトルのフレッド・ハッチンソンがん研究センター内にあるCITN中央運営・統計センター(COSC)の部長であるDr. Martin A. “Mac” Cheever氏は述べた。

全てのCITN試験は第1相あるいは第2相試験となる予定である。本ネットワークの目的は、新規治療法が臨床的に有効かどうかを最終的に判定する大規模第3相試験において検証する薬剤パイプライン(道筋)を確立することであると、共同研究者Dr. Kim Margolin氏とともにネットワークで日常業務を行うCheever氏は述べた。これらの試験には、どの患者が治療に反応するかを示すバイオマーカーを探したり、治療がどの程度免疫反応を刺激するかを評価したりする相関研究が組み込まれる予定である。これらは、Cheever氏の共同研究者であるDr. Mary L. “Nora” Disis氏の指導のもとで行われる。

「概念実証や患者の利益を速やかに示すことができ、最終的には系統立った認可への道筋の確立に有用な試験をデザインすることが目標です」と、Cheever氏は述べた。

研究分野が連携

腫瘍を破壊するために患者自身の免疫システムを用いるという概念は、数十年間研究者らを魅了し続けている。しかしつい最近まで、患者自身の癌に対する免疫反応を高めることに注目した治療法は、一部の患者には有効であるものの、幅広く効果を示す治療を多く提供することはできなかった(患者の免疫システムを回復させたり補ったりする血液・骨髄移植は、長年にわたり白血病やリンパ腫の治療法として高い有効性を示している。さらにトラスツズマブ[ハーセプチン]など一部のモノクローナル抗体は、抗腫瘍免疫反応を高めることが効果の1つであるとされている)。

いくつかの出来事が重なりこの分野が前進したと、NCIの癌治療・診断部門(DCTD)に所属し、NCIでのCITNプログラム責任者であるDr. William Merritt氏は述べた。なかでも重要なのは腫瘍免疫学への理解と、腫瘍に対する免疫反応を修飾することが知られる薬剤に対する理解が大いに進んだことであるという。

大きな転機は、2007年に行われたNCI主催の第1回免疫療法薬ワークショップであった。このワークショップには、さらなる研究・開発を行うため、もっとも有望な免疫療法薬を確認すべく、一流の癌免疫学者が一堂に会した。120以上の候補薬の中から20の薬剤を選んだ。開発薬剤のさらなる優先順位付けに役立てるため、NCIは追加のワークショップを開催し、異なる治療法で複数の研究者らに幅広く用いられる可能性が最も高い薬物を選択することを強調したと、Cheever氏は述べた。

さらに、「この最初のワークショップから全てが始まり発展しました」とつけ加えた。

優先順位付けのワークショップを数回経て間もなく、免疫療法研究者らの1グループがNCIの部長Dr. John E. Niederhuber氏に、優先順位が高い薬物の開発を進めるためNCIの支援を強化するよう説得したと、Merritt氏は回想した。Niederhuber氏とDCTDの責任者が合意してCITNの概念が誕生したのである。

さらに、米国食品医薬品局(FDA)は昨年、2つの癌免疫療法薬を認可した。すなわち進行メラノーマ治療におけるイピリムマブ(Yervoy)と進行前立腺癌に対するシプリューセル-T(Provenge)である。

これら薬剤の認可のインパクトは計り知れないものであったと、スローンケタリング記念がんセンターのDr. Jedd Wolchok氏は述べた。「診療所で投与可能であり、製薬会社や業界にとって満足のいく免疫療法の実現は、この分野をまさに変化させました」という。

実験や初期の臨床試験で一定の有用性を示した、研究段階にある様々な免疫療法の試験に、臨床の研究者らがアクセスすることは昔から困難であった。例えば企業がある薬物を開発したとしても、その薬物を癌以外の疾患に用いるための開発を優先させたり、多剤併用療法の1つとしての開発を優先させたりする。

有用性が大きな障壁であるのは明白であった、とシカゴ大学医療センターのCITN 研究者であるDr. Thomas Gajewski氏は述べた。

この状況はいまや変化しつつある。多くの企業が、研究に使用する薬剤の製造や、新しい免疫療法の試験薬を開発することにこれまで以上に関心をもっていると、Wolchok氏は述べた。数社では免疫腫瘍学部門を置くようになった。

「われわれは癌免疫療法研究者のコミュニティーとして、企業がこれらの薬剤をテストする際に手助けできるよう慎重に準備しておく必要がある、それこそがCITNが果たしうる大きな役割である」と続けた。

連携が科学を前進させる

研究者と研究センター間にネットワークがあると、「タイムリーに試験を開始することが可能である。各研究施設で自らの試験を行う資金を得るため、個々の研究交付金を待つ必要がありません」とMerritt氏は述べ、ネットワーク内の多くの施設が各臨床試験に参加するため、患者の登録と試験の完了を大幅に迅速化できることにも言及した。

しかしネットワーク化による利点の可能性は試験の迅速化をはるかに超えるものである、とGajewski氏は強調した。

「ネットワークにより、データが共有され、データの管理および統計解析法は全て統一されます」と彼は述べた。「データ公表の前に、皆で情報を交換するでしょう。このような研究者による相互作用の可能性は計り知れません。研究者間およびプロジェクト間でアイデアがもっと容易に広まるでしょう」。

NIHが出資しフレッド・ハッチンソンが携わる別の臨床試験構想であり、国立アレルギー・感染症研究所の支援を受けるHIVワクチン試験ネットワークからの人的支援により、CITNは大いに利益を得た、とCheever氏は述べた。CITNと、これに類似した国際的癌免疫療法試験ネットワークであり、Wolchok氏が主導する癌ワクチン共同研究機構との間で、すでに共同研究の可能性が議論されている。

CITNは5年間の資金提供を受けており、企業や慈善団体から追加の資金を得るために議論を進めているとCheever氏は述べた。

最初の試験を計画し実施することが重要なステップであると、Merritt氏は述べた。しかしまだ始まったばかりである。「CITNワーキンググループとその運営委員会は、次に進める薬剤群の試験構想を議論中です。これまでの進展に、私は大いに勇気づけられています」という。

— Carmen Phillips

最初の治療薬免疫療法薬は多くの種類が開発されており、IL-15のようなT細胞およびNK細胞成長因子、T細胞を刺激するか樹状細胞を活性化する薬物、イピリムマブのようないわゆる免疫チェックポイント阻害剤、さらに腫瘍により分泌され免疫系を抑制する因子を阻害または無効とする薬物などが含まれる。

CITN主導の臨床試験で用いられる最初の2剤は、2007年のワークショップで特定された20種類の薬物の中から選択され、IL-15およびCP-870,893と称される樹状細胞活性化モノクローナル抗体となるであろう。

ヒトに初めてIL-15を投与する臨床試験が、Dr. Thomas Waldmann氏と Dr. Kevin Conlon氏により、NCIにおいて最近開始された。Waldmann氏は、約18年前にIL-15を発見したグループのメンバーである。この初めての臨床試験では、NCI‐フレデリックキャンパスにある薬物製造施設において、NCIがIL-15を製造している。IL-15に関するCITN試験は、Waldmann氏とConlon氏による試験とは別に実施されるものであるが、CITNの試験責任医師らはWaldmann氏と緊密に協力してIL-15の開発に携わっているとCheever氏は記した。

ファイザー社製のCP-870,893は、特定の免疫細胞表面に存在するCD40抗原を標的とし、既に小規模第1相臨床試験において進行性膵臓癌患者を対象にその有効性が示されている。CITN試験は、ペンシルベニア大学のDr. Robert Vonderheide氏の主導により、手術可能な膵臓癌患者に対する術前治療としてCD40標的抗体の試験を実施する。

他にも、サイトカインIL-7、および特定の免疫細胞表面に存在する免疫チェックポイントタンパク質PD-1を標的とする開発中の薬物など、数種の治療法に関する試験実施の計画および交渉が進行中である。

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大倉綾子、(囲み記事)武内優子 訳
田中謙太郎(呼吸器・腫瘍内科、免疫/テキサス大学MDアンダーソンがんセンター免疫学部門) 監修
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