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炎症性メディエーターは保護遺伝子を抑制することで大腸癌を促進する/MDアンダーソンがんセンター

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炎症性メディエーターは保護遺伝子を抑制することで大腸癌を促進する/MDアンダーソンがんセンター

テキサス大学MDアンダーソンの研究者らにより、炎症とメチル化の分子的関連性が明らかになる
M.D.アンダーソンがんセンター
2012年1月22日

慢性炎症は、抗癌遺伝子をシャットダウンするDNAメチル化と合わさることで大腸癌の発生を促進する、とテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは本日Nature Medicine誌オンライン版で発表している。

研究チームがこれら2つの別々の作用を関連付けることによって、結果的に、大腸癌の治療および予防のより良い併用療法がもたらされる可能性がある。

動物実験から、炎症を促進する化学物質プロスタグランジンE2は、腫瘍を抑制し損傷DNAを修復する遺伝子をシャットダウンすることにより、大腸癌の発生を促進することが明らかになった。また、抗炎症薬剤もしくは脱メチル化剤のいずれも大腸癌マウスにおける腫瘍のサイズおよび数を減少したが、両剤併用時の効果が最大となることも明らかになった。

「慢性炎症が癌発生および疾患進行のリスクを高めることは分かっていました」と、MDアンダーソン学長兼副所長で主席著者のRaymond DuBois, M.D., Ph.D.氏は述べた。「腫瘍抑制遺伝子がヒトの大腸癌で不活化されることも分かっていました。しかし、このような炎症性メディエーターと、DNAメチル化の影響による遺伝子発現の変化もしくは遺伝子の不活化とを分子的に関連付けて考えたことはありませんでした。」

癌を予防する可能性
動物実験で使用された2つの薬剤-抗炎症薬セレコキシブ(商品名セレブレックス)および脱メチル化剤アザシチジン(ビダザ)-については、両剤共にヒトへの使用が承認されている。

「一つの可能性として、遺伝的素因があるなど大腸癌の発症リスクが極めて高い患者のリスクがこれらの薬剤治療によって低減するかどうかを検証する臨床試験に対して、私たちの研究を応用できるでしょう」と、DuBois氏は述べた。

プロスタグランジンE2とメチル化

プロスタグランジンE2(PGE2)は、免疫細胞が集まる炎症部位に高レベルで存在する脂質メディエータ-である。DuBois氏らは、PGE2レベルと、メチル基(1つの炭素原子と3つの水素原子で構成される)を遺伝子のプロモーター領域に付加して遺伝子発現を遮断する、DNAメチルトランスフェラーゼと呼ばれる酵素のクラスとの相関関係を模索した。

「ヒト大腸癌の検体において、PGE2レベルがDNMT1およびDNMT3の2つのメチルトランスフェラーゼレベルと相関していることを発見しました」と、DuBois氏は述べた。

その後の実験で、PGE2について以下の点が明らかになった:

・ヒト大腸癌の細胞株3種において、2つのメチル化酵素のレベルを直接上昇させた;
・メチル化により腫瘍抑制遺伝子CNR1およびDNA修復遺伝子MGMTの不活化を促進した;
・また、他のさまざまなDNA修復遺伝子のメチル化を引き起こし、最も重要なことには、CDKN2BおよびDNAミスマッチ修復遺伝子MLH1を不活化させた。

PGE2がマウスの保護遺伝子を不活化
結腸腫瘍を発症するように遺伝子操作されたマウスにPGE2を投与すると、以下の点が認められた:

・腫瘍細胞において、メチルトランスフェラーゼ遺伝子の発現レベルが上昇した;
・腫瘍細胞において、4つの腫瘍抑制遺伝子のメチル化が亢進し,対応するメッセンジャーRNAおよびタンパク質レベルの発現を抑制した;また
・前癌性ポリープのサイズおよび数が増大した。

これらのマウスに脱メチル化剤アザシチジンを与えると、腫瘍の増殖、並びに腫瘍抑制およびDNA修復遺伝子の不活化に及ぼすPGE2の影響は低減された。

アザシチジンの単独治療を受けたマウスは、60%で腫瘍が縮小し、セレコキシブ単独治療のマウスでは77%が縮小した。両剤の併用治療では、93%で腫瘍の数が減少した。3つのレジメンすべてで腫瘍の平均サイズは縮小したが、併用療法による減少が最大であり、腫瘍サイズは半分になった。

ヒト大腸癌において同様の相関関係が明らかに

研究者らは、PGE2および別の炎症物質PTGS2による炎症促進、メチルトランスフェラーゼDNMT1およびDNMT3B、並びにCNR1、MGMTおよびMLH1のメチル化など、マウスで観察されるさまざまなプロセスがすべてヒト大腸癌においても同じように正に関連していることを見いだした。

「私たちは、マウスを使ったこれらの研究から、ヒトの治療に役立てるために今回のデータを外挿しても差し支えないと楽観的に考えています」と、DuBois氏は述べた。「癌の進行におけるPGE2の役割およびDNAメチル化の制御を深く理解することによって、対象患者群を治療し、ハイリスク患者群における癌の発生もしくは再発を防ぐ併用療法を開発するための基盤がもたらされるかもしれません。」

DuBois氏の共著者は、MDアンダーソン癌生物学科の、筆頭著者Dianren Xia, Ph.D.氏、Dingzhi Wang, Ph.D.氏、Sun-Hee Kim, Ph.D.氏、およびHiroshi Katoh, Ph.D.氏である。DuBois氏は、癌生物学科および消化器腫瘍内科を兼任する。

本研究は、米国の国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所、国立癌研究所およびテキサスのCancer Prevention and Research Instituteから資金提供を受けた。

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豊 訳
畑啓昭  (消化器外科/京都医療センター) 監修
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原文


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