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2012/02/07号◆特別リポート「進行性頭頸部癌に対する治療の複雑さが臨床試験で明らかに」

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2012/02/07号◆特別リポート「進行性頭頸部癌に対する治療の複雑さが臨床試験で明らかに」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2012年2月7日号(Volume 9 / Number 3)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ 特別リポート ◇◆◇

進行性頭頸部癌に対する治療の複雑さが臨床試験で明らかに

欧州の大規模ランダム化臨床試験において、局所進行性切除不能頭頸部癌に対する加速放射線療法(放射線治療の治療期間を短く集中して照射する)は、化学療法の併用の有無に関わらず、欧米で標準治療とされている従来の放射線療法と化学療法の併用(化学放射線療法)に比べて病気が進行するまでの期間を延長しないことが明らかとなった。この試験の結果は、Lancet Oncology誌電子版1月18日号で発表された。

米国の腫瘍放射線治療グループ(RTOG)により2010年に発表されたもう1つの試験でも同様の結果が示されたが、これら2つの研究チームは異なった結論を導き出した。このことは現在進行中の臨床試験や将来の共同研究に影響するだろう。

欧州の頭頸部癌放射線治療グループ( European Groupe d’Oncologie Radiothérapie Tête et Cou:GORTEC)の研究者らは、GORTEC 99-02試験で2つの試験的療法を従来の化学放射線療法と比較した。参加した全患者は、ステージⅢもしくはⅣの頭頸部扁平上皮癌で、転移はないが切除不能例であった。

従来の化学放射線療法を受けた244人は、カルボプラチンフルオロウラシルを用いた化学療法3サイクルと70Gyの放射線を標準的な期間である7週間で受けた。

試験的療法の1つでは、245人の患者が標準療法と同様の化学療法を2サイクルと放射線療法を1週間早めて行う「加速化学放射線療法」を受けた。もう1つの試験的療法では、242人の患者が、合計64.8Gyを3.5週間で照射する「超加速」放射線療法のみを受けた。(下表を参照)

GORTEC 99-02試験での治療群

治療群 放射線療法 化学療法
従来の化学放射線療法 70Gyを7週間で照射:
・1日1回2Gy、週5日
3サイクルの
・カルボプラチンとフルオロウラシル
・1サイクルに4日間治療
・各サイクルは、治療の第1-4日目、22-25日目、43-46日目
加速化学放射線療法 70Gyを6週間で照射:
・1日1回2Gy、週5日を合計40Gyまで
・40Gy以降は、1日2回1.5Gy、週5日に変更
2サイクルの
・カルボプラチンとフルオロウラシル
・1サイクルに5日間治療
・各サイクルは、治療の第1-5日目、29-33日目
超加速放射線療法 64.8Gyを3.5週間で照射:
・1日2回1.8Gy、週5日
なし

RTOG-0129試験での治療群

治療群 放射線療法 化学療法
従来の化学放射線療法 70Gyを7週間で照射:
・1日1回2Gy、週5日
3サイクルの
・シスプラチン
・1サイクルに1日間治療
・各サイクルは、治療の第1日目、22日目、43日目
加速化学放射線療法 72Gyを6週間で照射:
・1日1回1.8Gy、週5日
・治療の最後12日間は最初の照射6時間後に、より限局した範囲に1.5Gy追加
2サイクルの
・シスプラチン
・1サイクルに1日間治療
・各サイクルは、治療の第1日目、22日目

加速照射法に関するこれまでの有望な試験に基づき、より集中させた照射は無増悪生存期間と病勢制御を改善すると著者らは仮定した。

しかし、今回の試験は「そのような利益はなく、化学療法と同時に行う1週間早めた加速照射法は従来の化学放射線療法と比べてさらなる利点はありませんでした」と著者らは述べた。治療3年後、従来の化学放射線療法群の患者の37.6%が病勢の増悪なく生存したのに対し、加速化学放射線療法群では34.1%であった。

超加速放射線療法群では従来の化学放射線療法群に比べて、病勢制御が悪く、治療3年後に病勢増悪なく生存していたのは32.2%であった。これらの結果は驚きであり、「超加速放射線療法は従来の化学放射線療法と同等以上の効果があろうと期待していたのです」と著者らは述べた。

結果は同様だが、異なる結論

GORTEC試験は「1つの変数ではなく2つの変数を変えている、つまり放射線療法に加え化学療法も変更されている」ので解釈が幾分難しいと、NCIの癌治療・診断部門放射線研究プログラムの臨床放射線科長であるDr. Bhadrasain Vikram氏は説明した。

加速化学放射線療法群の患者は、3サイクルではなく2サイクルの化学療法(その2サイクルの期間は長いが)を受けたので、従来の化学放射線療法群の患者に比べて受けた化学療法は合計で17%少なかったことになる。

同様の結果となったRTOG試験(RTOG-0129)においても化学療法の投与量は減量されていたが、それは有害事象に対する危惧のみが根拠ではないと、RTOGの研究者でオハイオ州立大学ジェームス総合がんセンター教授のDr. Maura Gillison氏は説明した。

「すべての試験において、放射線と同時に化学療法を行うことの重要性が示されている」と同氏は強調した。化学療法単独では頭頸部癌に対して同等の抗癌効果は認められず、今回の2つの試験における加速化学放射線療法では放射線療法の期間の短縮により3サイクル目の化学療法のための十分な時間がなかった。

従来の化学放射線療法における3サイクルの化学療法を完遂できるだけ体力がある、進行性頭頸部癌患者は60%であること、およびRTOG-0129試験では従来の化学放射線療法と加速化学放射線療法を受けた患者は同等の期間生存したことにより、「われわれの結果はそれなりの進歩となりました」とGillison氏は述べた。「関連する有害事象も同程度で、治療期間は7週間から6週間に短縮可能であり、治療期間の短縮で3サイクル目の化学療法の必要がなくなりました」。

GORTECの研究者らは加速化学放射線療法に利益を見出さなかった一方で、RTOGの研究者らは進行性頭頸部癌の臨床試験での標準療法として加速化学放射線療法を用いるようになった。

米国における臨床試験に対するこの決定は、現在の放射線療法の治療技術の変化にも影響を受けていると、テキサス大学MDアンダーソンがんセンター放射線腫瘍科教授であり、RTOG頭頸部委員会前委員長のDr. K. Kian Ang氏は説明した。強度変調放射線治療(IMRT)が普及してきており、放射線腫瘍医はRTOG-0129試験よりも照射のための通院回数を減らすことができ、患者は治療を完遂しやすくなっていると、Ang氏はつけ加えた。

HPV感染の有無により違いが生じる

ヒトパピローマウイルス(HPV)が口腔咽頭癌の重要な因子であるという最近の理解も、GORTEC試験結果を現行の治療に応用することに制限を加えるものだとDr. Vikram氏は述べた。その臨床試験は「HPV感染の有無が『頭頸部癌』で非常に重要であることが認識される以前に開始されました。この臨床試験での腫瘍の40~50%はHPV陽性と考えられるが、残念なことに論文中にはそのことについて言及されておらず、施行された療法がHPV陽性あるいはHPV陰性の腫瘍患者に対してより効果的であるかどうかは不明です」と同氏は説明した。

口腔HPV感染が増加しつつあるので、患者をHPV陽性、HPV陰性の腫瘍で区別することは、今後の頭頸部癌の臨床試験でますます重要になるだろう。RTOG-0129試験において、口腔咽頭腫瘍にHPVウイルスが含まれていた患者は、HPV陰性の患者に比べて治療反応性がずっとよいことが明らかとなった。

「何年も経てようやく、われわれは『HPV陽性とHPV陰性の腫瘍』は同じ狭い解剖学的領域に存在するにも関わらず、違う種類の癌を扱っていることを理解し始めたところです」とAng氏は述べる。「HPV陽性患者は現行の治療に比較的よく反応するので、現在の主要目標の1つは有害事象を減らすことです。HPV陰性患者に対しては、現行の治療への反応性が非常に悪いので、治療効果を高めるためにどのように治療を強化すればよいかを知りたいところです」。

「このように全く異なる目的があるので、『これら2つの疾患群』を同じプロトコルに入れることはできず、臨床試験を別々に行う必要があります」と同氏は続けた。RTOGは最近HPV陽性患者だけの初めての臨床試験(RTOG-1016)を開始し、シスプラチンの代わりに分子標的薬のセツキシマブを用いることで腫瘍を抑制しつつ副作用を減らすことはできないかを確認しようとしている。

大きな挑戦として「頭頸部癌は非常にまれであり、われわれはそれをさらに細かく分類しているところです。十分な患者を集めるためには国際的な臨床試験が必要になるでしょう」とAng氏は述べた。

国際的な資金提供、品質管理、腫瘍標本の輸送を始めると同時に、実際に何を試すべきかについて合意を得なければなりません。「研究者は、科学的に最も解明すべき問題は何であるかについて意見をまとめる必要があるでしょう」とAng氏は結論した。

-Sharon Reynolds

【画像キャプション訳】

放射線治療技師が患者にロングフェイスマスクを装着している。ロングフェイスマスクは頭頸部への放射線治療中に患者の頭部を固定する。(写真はDaniel Sone氏提供)[画像原文参照

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野長瀬祥兼 訳
中村光宏(医学放射線/京都大学大学院医学研究科) 監修
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