転移性大腸癌で効果を示すセツキシマブは進行した病期の腫瘍以外では有効性確認できず/メイヨークリニック | 海外がん医療情報リファレンス

転移性大腸癌で効果を示すセツキシマブは進行した病期の腫瘍以外では有効性確認できず/メイヨークリニック

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転移性大腸癌で効果を示すセツキシマブは進行した病期の腫瘍以外では有効性確認できず/メイヨークリニック

メイヨークリニックの研究者らはこの結果は予想外で困惑させるものだと述べる
2010年6月7日

メイヨークリニックの研究者らによって実施された米国国内臨床試験によると、驚いたことに転移性大腸癌患者に効果をもたらす標的療法は進行度のより低いステージ3癌患者には奏効しなかった。事実、化学療法に薬剤(セツキシマブ)を併用投与した患者の転帰は、化学療法単独治療の患者よりもわずかに劣っていた。
米国国立癌研究所(NCI)の援助による第3相North Central Cancer Treatment Group (NCCTG)試験は、標準化学療法にセツキシマブを追加投与しても有効性が認められないことが示されたため、計画されていた中間解析を行った後、2009年11月に患者募集を打ち切った。試験における最初の公開討論と結果が、米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次総会で6月6日に行われた記者会見で発表された。

理論上では、本試験に組み入れた患者の多くに対し化学療法にセツキシマブを併用することで効果が得られるはずであったと、本試験を主導したメイヨークリニックの癌専門医であるSteven Alberts医師は述べている。試験に組み入れた患者らすべての大腸癌はリンパ節周辺まで転移していたが(ステージ3)、それ以上には進行していなかった。第一に手術で癌が完全に切除可能な患者を、試験適格とした。また、これら患者の腫瘍は正常(野性型)なKRAS遺伝子を有していた。これまでにこの遺伝子は、セツキシマブで効果を得るためには不可欠であることが示されている。

「転移性大腸直腸癌に対する試験のこれまでのデータの要約により、セツキシマブはKRAS遺伝子野生型を有するステージ3の患者に効果があることが示されていました。つまり私たちの知見は予想外のものだったのです。転移性癌の患者に奏効する薬剤が、どのようにすれば進行度の低い癌患者で有効でないのかを理解するのは困難なことです。現段階では、私たちはこれら知見の生物学的説明を明確にすることに重点を置いています」Alberts医師はこう述べている。

3,000人以上の患者が組み入れられた本試験は、大腸癌患者に対し術後に標準的に使用されるFOLFOX化学療法と併用した場合のセツキシマブの効果について検証した、最も大規模な臨床試験の一つである。FOLFOXにセツキシマブを追加投与することでステージ3の大腸癌患者に効果が認められ、この適応症に対し米国食品医薬品局(FDA)の承認が得られることが期待されていたと、Alberts医師は言う。現在、セツキシマブのFDAの承認は転移性大腸癌に対してのみであり、臨床上治療が適切可能な施設で使用され続けていると、Alberts医師は述べている。

「この知見に基づいて言えば、ステージ3の大腸癌に対していかなるセツキシマブの投与も本試験の結果からは裏付けられません」医師はこう述べている。

Alberts医師によれば、これは米国のみで行ったステージ3大腸癌患者での化学療法とセツキシマブ投与を比較した結果であるが、ヨーロッパでの臨床試験が現在行われていて、来年にも最初の結果が出る予定とのことである。

この無作為化臨床試験には複数の群が用意されたが、最も重要なのはセツキシマブの有無とFOLFOXを検証した二つの群であった。この特定解析は、正常KRAS遺伝子を有する組み入れた1,864人の患者のみで比較検討された(化学療法単独治療群に909人、化学療法とセツキシマブ投与の併用治療群に955人)。

治療後3年の時点における転帰の統計解析結果に基づくと、無増悪生存率(生存して疾患の再発なし)は、化学療法単独治療(セツキシマブ投与なし)の患者では76%、対して併用治療を受けた患者では72%であることがわかった。これまでの全患者の全生存期間についても、セツキシマブを投与されなかった患者のほうが良好であった。しかし、この試験が約2年(中央値)の追跡期間後の早期に終了したため、「現時点では生存に関する追跡期間が短い」とAlberts医師は述べている。

さらに研究者らは、毒性について70歳未満の患者では治療群間に差異は認められなかったが、70歳以上の患者では毒性の増加および転帰に差異が認められたと結論づけた。

研究者らはステージ3大腸癌患者でなぜセツキシマブの効果が得られなかったかについて理論は挙げられるが、そのエビデンスはまだ確認されていない。二つの有力な説として、セツキシマブが細胞の増殖を促進する分子経路においてスイッチを入れたか、または活性を高めたか、または化学療法の効果に対する忍容性の可能性があることなどが挙げられる。

「この試験から得た最も重大な問題は、ステージ3の患者間でなぜ差異があるのか、どんな点でセツキシマブは有効でないのか、転移性癌患者にはセツキシマブはどう効果が得られるのか、などです。私たちの目的はこれらを見いだすことです」と、Alberts医師は述べている。

本試験は、NCIからの資金援助に加え、Bristol-Myers Squibb社、ImClone Systems社、Sanofi-Aventis社、Pfizer社からの援助を受けた。研究者らは、この他の資金提供は受けていないことを宣言する。

映像情報:Steven Alberts 医師が研究について語るインタビューの抜粋を含む、音声・画像資料は
メイヨークリニックニュースブログ
で参照可能である。

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山下裕子 訳
辻村信一(獣医学/農学博士、メディカルライター)監修
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原文


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