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卵巣癌に対する新たな治療標的が発見か/M.D.アンダーソンがんセンター

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卵巣癌に対する新たな治療標的が発見か/M.D.アンダーソンがんセンター

細胞分裂を調節するタンパク質を阻害することで、タキサン系抗癌剤による化学療法の効果を増強することができる
M.D.アンダーソンがんセンター
2010年8月16日

塩誘導性キナーゼ2(SIK2)は細胞分裂において重要な役割を担い、さらに卵巣癌の化学療法に対する反応を調節することもあることが初めて明らかになった。
これらの結果は、テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの研究者らによりCancer Cell誌の8月号にて報告された。本研究により、細胞周期の異なる段階を標的とする併用療法は、最適な癌治療を行う上で不可欠であるという証拠がまたひとつ増えた。

研究者らは、卵巣癌におけるSIK2を枯渇させると、細胞分裂を阻害する化学療法薬として一般に処方されているパクリタキセルの癌細胞に対する感受性が上がり、パクリタキセルの持つ癌の成長を阻止する作用がさらに高まることを発見した。卵巣癌の約30%ではSIK2タンパク質レベルの上昇がみられ、これは卵巣癌を患う女性の低い生存率と関連している。

「癌細胞の薬剤に対する感受性を変えることで、既存の化学療法の有効性が改善する機会が広がります」と、本研究の統括著者で、M.D.アンダーソンのトランスレーショナルリサーチの副主任でもあるRobert C. Bast, Jr. 医師は述べた。「その感受性の原因となるタンパク質に関するわれわれの研究において、SIK2は細胞分裂に必要不可欠であり、そのSIK2を阻害することで、卵巣癌に対する化学療法が改善されるという、さらなる研究の価値がある新しい手法が生みだされることを発見しました」。

種々の癌を治療するために有糸分裂阻害薬が使用され効果を上げているが、タキサン系抗癌剤が有効な卵巣癌患者は約50%にとどまり、事前に薬剤が有効な患者を特定することはまだ不可能である。その結果、化学療法薬の併用治療の一端として多くの患者が適宜にタキサン系抗癌剤を投与されている。

これまで知られていなかった細胞分裂を調節するSIK2の役割

Bast医師および、以前はBast医師の研究室の博士研究員で、現在はオックスフォード大学の教職員を務める筆頭著者のAhmed Ashour Ahmed医学博士は、約780の低分子干渉RNA(siRNA)プールを解析し、パクリタキセルの感受性を変化させるタンパク質の同定を行った。静止細胞において活性化するAMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)ファミリーに属するとされているSIK2は、パクリタキセルの感受性を調節し、癌細胞の増殖中におけるDNA複写後の細胞分裂を阻止することがわかった。SIK2は、各娘細胞へ染色体の分配を行うために分裂しなければならない細胞の中心体に存在していた。

「SIK2が細胞周期の調節に関与しているという発見は革新的です。なぜならSIK2は細胞代謝およびエネルギー収支に関係しているとこれまで考えられてきたからです」とAhmed氏は述べた。「タキサン系抗癌剤の抗癌効果が増強することに加え、われわれの結果は、癌細胞代謝と有糸分裂機能は連結しているという新たな証拠を裏づけるものです。」

研究者らによると、将来的な臨床試験を可能にするためにはSIK2を阻害する薬剤が必要とされるという。そのような薬剤はまだ存在しないが、正しい標的を知ることは重要な第一歩となる。

本研究は、卵巣癌研究基金、米国癌研究基金、the Zarrow Foundationからの助成金を受けた。また、M.D.アンダーソン卵巣癌SPORE(Specialized Program in Research Excellence)は米国国立癌研究所から資金援助を受けた。

Bast氏およびAhmed氏の他の共著者は以下のとおりである。Zhen Lu, M.D., Xiao-Feng Le, M.D., Ph.D., Pablo Vivas-Mejia, Ph.D., Gabriel Lopez-Berestein, M.D., Geoffrey Grandjean, Geoffrey Bartholomeusz, Ph.D., and Warren Liao, Ph.D., Department of Experimental Therapeutics, The University of Texas MD Anderson Cancer Center; Nicholas B. Jennings and Anil K. Sood, M.D., Department of Gynecologic Oncology, MD Anderson Cancer Center; Dariush Etemadmoghadam, Ph.D., and David Bowtell, Ph.D., Cancer Genomics and Genetics Laboratory, Peter MacCallum Cancer Centre; Luisa Capalbo and David M. Glover, Ph.D., Department of Genetics, University of Cambridge; Rodrigo O. Jacamo, Ph.D., and Michael Andreeff, M.D., Ph.D., Department of Stem Cell Transplantation and Cellular Therapy, MD Anderson Cancer Center; Nuno Barbosa-Morais, Ph.D., Computational Biology Group, Department of Oncology, University of Cambridge; and the Australian Ovarian Cancer Study Group.

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栃木和美訳
林 正樹(血液・腫瘍内科)監修
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原文


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