テキサス大学MDアンダーソンの研究により、トリプルネガティブ乳癌患者でBRCA遺伝子変異を有する女性の再発リスクは低いことが明らかになった/M.D.アンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

テキサス大学MDアンダーソンの研究により、トリプルネガティブ乳癌患者でBRCA遺伝子変異を有する女性の再発リスクは低いことが明らかになった/M.D.アンダーソンがんセンター

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

テキサス大学MDアンダーソンの研究により、トリプルネガティブ乳癌患者でBRCA遺伝子変異を有する女性の再発リスクは低いことが明らかになった/M.D.アンダーソンがんセンター


M.D.アンダーソンがんセンター
2010年9月28日

トリプルネガティブ乳癌でBRCA遺伝子に変異がある患者は、有害な遺伝子変異がない同一病症の患者に比べて再発のリスクがより低いことが、テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの研究者らにより明らかになった。
この結果により、トリプルネガティブ乳癌患者の中でもこの抽出されたグループにおける個別化治療に対する研究の方向性が示され、また患者集団における特有の遺伝子検査の必要性が強調された。この結果は、M.D.アンダーソンのBreast Medical Oncology and Systems Biology(乳癌腫瘍内科およびシステム生物学科)の准教授であるAna M. Gonzalez-Angulo医師により、2010年度乳癌シンポジウムに先立ち発表された。

「BRCA 遺伝子変異を有する乳癌患者で、同時にトリプルネガティブ乳癌でもある患者数のデータがあります。その一方、任意抽出のトリプルネガティブ乳癌患者におけるBRCA1およびBRCA2遺伝子変異の発生率については把握されていません」と、本研究の筆頭著者かつ 責任著者であるGonzalez-Angulo氏は述べた。「現在、トリプルネガティブ乳癌の治療においてより効果が期待できる新薬が存在しますが、BRCA遺伝子変異の有無が、これらの治療に奏効する可能性のある患者の選択に重要な手段となるかもしれません。」

トリプルネガティブ乳癌とは、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、およびHER2/neuが全て陰性である乳癌のことであり、全乳癌患者の約15%を占める。現在、トリプルネガティブ乳癌は、乳癌学会でも多くの関心を集めている研究分野である。その理由として、抗癌治療に効果を示す有効な標的が存在しない、化学療法が効果を示すのは患者の約40%のみであり、さらに再発した患者の場合その病症は非常に難治性であり死亡までの期間が短いことが挙げられる。

PARP阻害剤は癌研究において関心が高まりつつある薬剤の分類に属するが、BRCA遺伝子変異を有する患者およびトリプルネガティブを有する患者の双方において有望な薬剤である。PARP阻害剤は、BRCA遺伝子変異を有する患者においてより効果があると思われ、それはPARP酵素およびBRCA遺伝子により産生されたタンパク質がDNAの修復に関与していることによる。このことから、MDアンダーソンの研究結果は、トリプルネガティブ乳癌で治療が最も奏功する可能性のある患者をいかにして見極めるかという手掛かりを早期に与えてくれる見込みがある。

Gonzalez-Angulo氏の現在進行中の実験プロジェクトMolecular Characterization of Triple Negative Breast Cancer(トリプルネガティブ乳癌の分子特性)の一部である本研究では、研究者らはBRCA遺伝子の生殖細胞系列変異(遺伝性)および体細胞変異(腫瘍組織のみ)を同定するために、トリプルネガティブ乳癌女性77人の腫瘍組織と正常組織をMyriad Genetics Inc.(ミリアド・ジェネティックス社)へ送付した。77人中、15人(19.5%)で変異(生殖細胞系列変異14人、体細胞変異1人)がみられ、BRCA1遺伝子変異は12人(15.6%)およびBRCA2遺伝子変異は3人(3.9%)であった。

M.D.アンダーソンでは1987年から2006年の間にトリプルネガティブ乳癌患者の治療が行われ、1人を除く全ての患者に対して同一の術後化学療法レジメンが施された。追跡期間中央値は43カ月であった。いずれかのBRCA遺伝子変異を有する患者の5年無再発生存率および5年生存率はそれぞれ86.2%と73.3%であったのに対し、変異を有さない患者ではそれぞれ51.7%と52.8%であった。

これは研究者たちにとって予想外の結果となったが、これまで行われてきた研究はBRCA遺伝子変異を有する全タイプの乳癌患者に対する症例対照研究であったと、Gonzalez-Angulo氏は指摘した。MDアンダーソンによる研究は、任意抽出のトリプルネガティブ乳癌女性のみを調査した初めての研究となった。

もう一つ驚くべきことは、トリプルネガティブ乳癌患者集団におけるBRCA遺伝子変異の発生率が予想以上であったことと、Gonzalez-Angulo氏は言及した。

「興味深いのは、これらの患者の大部分は遺伝カウンセリングを受けるよう指導されていなかったということです。中には、遺伝子検査対象基準に達していない患者もいましたが、それらの患者にもBRCA遺伝子変異が存在していました」と、Gonzalez-Angulo氏は述べた。「恐らく、これからの課題として、遺伝カウンセリングを受けるトリプルネガティブ乳癌患者さんの基準を下げ、特に50歳未満の女性においては、他の検査のように有意な家族歴を有していなくても変異の有無について評価を行う必要があるでしょう」。

追跡調査として、現在進行中の、シグナル経路、RNA、DNA、および乳癌の他の遺伝子変異を対象とした研究を継続していく旨をGonzalez-Angulo氏は示した。

Gonzalez-Angulo氏以外のMDアンダーソンの共著者は以下のとおりである。Gabriel Hortobagyi, M.D., professor and chair of the Department of Breast Medical Oncology; Banu Arun, M.D., professor in the Departments of Breast Medical Oncology and Clinical Cancer Genetics; Jennifer Litton, M.D., assistant professor, Department of Breast Medical Oncology; Huiqin Chen, Department of Breast Medical Oncology; Funda Meric Bernstam, M.D., professor in the Department of Surgical Oncology; Kim-Anh Do, Ph.D, Department of Biostatistics. Myriad Genetics Inc.社:Jerry S. Lanchbury, Ph.D; Jennifer Potter, Ph.D., Kirsten Timms, Ph.D.

Gonzalez-Angulo氏は現在、Myriad Genetics, Inc.社と共同研究を行っているが同社からの研究助成は受けていない。

******
栃木和美訳
上野 直人(乳癌、幹細胞移植・細胞療法)監修
******


原文


printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1乳がん化学療法後に起こりうる長期神経障害
  2. 2非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  3. 3BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  4. 4若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  5. 5がんに対する標的光免疫療法の進展
  6. 6「ケモブレイン」およびがん治療後の認知機能障害の理解
  7. 7HER2陽性進行乳癌治療に対する2種類の新診療ガイド...
  8. 8ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  9. 9コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  10. 10治療が終了した後に-認知機能の変化

お勧め出版物

一覧

arrow_upward