JAK阻害剤は骨髄線維症患者の症状を迅速かつ長期的に軽減する/M.D.アンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

JAK阻害剤は骨髄線維症患者の症状を迅速かつ長期的に軽減する/M.D.アンダーソンがんセンター

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JAK阻害剤は骨髄線維症患者の症状を迅速かつ長期的に軽減する/M.D.アンダーソンがんセンター

致死性の骨髄悪性疾患に承認されている治療法はいまだ存在せず
M.D.アンダーソンがんセンター
2010年9月15日

新しい経口剤が、消耗性で致死性骨髄疾患である骨髄線維症を伴う患者に対し、有意で長期的な症状緩和をもたらすことがテキサス州MDアンダーソンがんセンターの研究者らにより9月16日発行New England Journal of Medicine誌に報告された。
骨髄線維症は炎症反応を惹起する悪性の骨髄細胞が蓄積することにより発症し、骨髄を瘢痕化しその造血能が制限され貧血を生じる。

「困ったことに、骨髄線維症の患者さんに有効な、承認されている治療法は現在のところありません」とMDアンダーソンがんセンターの白血病部門准教授であり本臨床試験責任医師のSrdan Verstovsek医学博士は述べた。骨髄線維症患者の平均余命は5年から7年。他の疾患に承認されている治療法を適用すれば多少の反応がみられるものの、主に緩和療法である。

「この試験薬は骨髄線維症を起こす悪性細胞の根本的な異常の一部を標的とした初めての薬です」とVerstovsek氏は述べた。「この薬は、今までに例がないくらい疾患の主要な性質である脾臓の腫大を縮小し疼痛や疲労、他の症状を和らげ患者のQOLを改善します」

脾臓の腫大が痛みと栄養障害を引き起こす

「興味深いことに、他の臓器、主に脾臓が血液細胞の産生を肩代わりするようになります。骨髄が脾臓内に形成するのです」とVerstovsek氏は述べた。悪性細胞はそこにも蓄積する。「大きくなった脾臓が痛みだけでなく、患者に明らかな障害を与えます。胃や腸を圧迫するため、患者は栄養不良に陥り、体重が減少します。歩行能、前屈能にも影響し体全体が衰弱します」

末期の患者は重症栄養不良状態に似て腹部が膨大し、四肢はやせ細る。試験に参加した患者は投薬により体重が増加した。

Incyte社により開発されたJAK1、JAK2阻害剤であるINCB018424の第1/2相臨床試験では最大耐用量、次いで至適投与レジメンが確立された。本薬剤は、2005年、骨髄線維症患者で発見されたJAK2遺伝子変異により起こる異常シグナルを標的とする。

臨床試験は2007年6月に始まり、MDアンダーソンがんセンターとメイヨークリニックにおいて、進行性または新たに中〜高リスク骨髄線維症と診断された153人の患者が登録した。臨床反応は今も維持し115人の患者(75%)が試験継続中である。

全患者が本薬剤の至適用量試験に良好な反応を示した。

・ MRIで測定した脾臓容積の縮小率中央値は6カ月時点で33%であり、48%の患者が縮小率35%以上であった。これは日常診療でよく用いられる触診による胸郭下の脾臓の長さ縮小率中央値52%に合致した。
・ 迅速かつ持続する脾臓の縮小。至適投与探索レジメンにおいて3種類の量のいずれかを投与された患者 の70〜82%が投与開始から2カ月以内に少なくとも25%縮小し、1年以上持続した。
・ 早期から持続する症状スコアの改善。1カ月で51%の患者が50%改善し、58%の患者がその改善率を6カ月持続した。
・ 6分間歩行測定による運動能の大きな改善。歩行距離の中央値は1カ月で34 m、6カ月で71 m延長した。
・ 1年後の体重増加範囲の中央値は14.5から20.6ポンド(約6.6〜9.4 kg)であった。

症状は、病態に関する種々の炎症性サイトカインが急速かつ持続的に低下すると同時に改善した。

主な副作用としては、血液細胞数減少が一部の患者にみられたが、投与量の減量または一時的な治療の中止により可逆的に改善し得た。

「JAK2V617F変異が骨髄線維症に関する変異のうちのひとつで、これが最も多く約半数の患者に見られます。しかし、これが本疾患の原因の全てではありません。骨髄線維症はひとつの薬剤でコントロールするには複雑すぎるため、おそらく複数の治療法の併用が必要でしょう」とVerstovsek氏は付け加えた。

通常、JAK2は必要に応じて血液細胞新生のための種々の増殖因子により活性化される。JAK2V617F変異によりJAK2酵素は恒常的に活性化し、骨髄線維症の主要な病態である骨髄細胞の増殖をきたす。

JAK2阻害剤は、JAK2変異のある患者に対しその作用が期待されたが、変異の有無にかかわらず効果がみられた。「遺伝子特異変異のない患者もJAKシグナル伝達経路が非常に活性化しており、JAK阻害によりベネフィットが得られることを示唆しています」とVerstovsek氏は述べた。「しかし同時に正常なJAK2も阻害するため血球数が減少し投与制限する必要が出てくるかもしれません」

骨髄線維症に対するINCB018424についてピボタル試験の第3相臨床試験が米国、カナダ、オーストラリア、ヨーロッパで実施中である。(www.comfortstudy.com)

米国では年間約3000人が新たに骨髄線維症を発症している。第1/2相臨床試験は本疾患に対して実施された最大規模の試験である。

本臨床試験はIncyte社より資金提供、Verstovsek氏は同社より研究資金提供を受けた。

Verstovsek氏の他の共著者は以下のとおりである。
Hagop Kantarjian, M.D., Deborah Thomas, M.D., Zeev Estrov, M.D., and Jorge Cortes, M.D., of the MD Anderson Department of Leukemia; Ruben Mesa, M.D., of Mayo Clinic in Scottsdale, Ariz.; Animesh D. Pardanani, M.B.B.S., Ph.D., and Ayalew Tefferi, M.D., of Mayo Clinic Department of Hematology in Rochester, Minn; and Edward C Bradley, M.D., Susan Erickson-Viitanen, Ph.D., Kris Vaddi, Ph.D., and Richard Levy, M.D., of Incyte Corporation.

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武内優子訳
吉原 哲(血液内科/造血幹細胞移植)監修
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原文


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