慢性骨髄性白血病(CML)の薬物療法における前進:2006年米国血液学会からの報告 | 海外がん医療情報リファレンス

慢性骨髄性白血病(CML)の薬物療法における前進:2006年米国血液学会からの報告

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

慢性骨髄性白血病(CML)の薬物療法における前進:2006年米国血液学会からの報告

キャンサーコンサルタンツ
2006年12月

はじめに

グリベック®[Gleevec®](イマチニブ[imatinib])は骨髄性白血病(CML)の初発患者に対する第一選択の標準治療薬である。グリベックによって高い確率で細胞遺伝学的寛解および分子学的寛解が得られ、また、無増悪生存率や全生存率が改善した。しかしながら、PCR検査で検知される全てのBcr-Ablクローンをグリベックで殺すことはできない。さらに、少数ではあるものの有意の数の患者でグリベック耐性が生じたり、グリベックに不耐容であったりする。グリベックが効かない、あるいは不耐容の患者には現在、同種造血幹細胞移植の他に治療の選択肢がある。

 

ふたつの薬剤がBcr-Abl陽性のCML(CML)および急性リンパ芽球性白血病(ALL)を治療するために新たに開発された。ニロチニブ[nilotinib] (AMN107))とスプリセル®[Sprycel®](ダサチニブ[dasatinib])で、グリベックでうまくいかない患者の治療におおいに有望であると思われる。ニロチニブもスプリセルもこれまでにCMLの初発患者で評価が行われており、また、チロシンキナーゼ阻害剤の併用療法に関しての評価も行われるであろう。薬剤耐性の発生を減らすためグリベックと他の抗癌剤との併用にもまた関心が寄せられている。

 

CML治療におけるグリベック

MDアンダーソンの研究者らは3つの連続した臨床試験のデータを詳しく検討し、CMLの初発患者にはグリベック800 mg/日が有益であると結論した。[1] 彼らは、400 mg/日に比べて、高用量のグリベックは高率の細胞遺伝学的完全寛解、分子学的寛解、および分子学的完全寛解に相関したと記した。主な有害作用は治療の初期段階で比較的多く認められた骨髄毒性であった。

 

Children’s Oncology Groupの研究者らは、グリベックは未治療の小児で忍容性が良好であること、また、成人と同じような治療成績をもたらすことを確認した。[2]

 

IRIS(International Randomized Interferon versus ST1571)試験に関与する研究者らは、400 mgのグリベックを投与された患者では治療の時間経過とともに有害事象の起きる割合が減ることを報告した。[3] 報告によると、試験開始時の登録患者の28%がグリベック治療を中止したという。中止した理由としては、6%の患者のCMLあるいは治療に関連した有害事象または死亡、および11%の患者の不十分な治療効果などであった。薬剤有害作用のためにグリベックを中止したのはわずか2.4%であった。有害作用が起きた患者は、最初の年の14%に比べて、4年後には8%であった。こうしたデータは、早いうちに治療を中止した患者以外では、薬剤関連の毒性はまれにしか起こらなくなることを示唆している。

 

12ヶ月および18ヶ月で分子学的寛解を伴う細胞遺伝学的完全寛解が得られたことと、非常に良好な生存率とは相関したとするIRISのデータもあった。[4] 患者の中には治療に対する反応が認められるまで時間がかかった人もいたこと、そしてこのタイプの人たちを同定することが重要であったという報告もあった。試験結果からは、グリベック治療の最初の12ヶ月で細胞遺伝学的完全寛解を得られなかった患者は病状悪化の確率が高くなることもわかった。[5] 著者らによると、12ヶ月で細胞遺伝学的完全寛解を得られない患者はグリベックに代わる治療薬、たとえばスプリセルやニロチニブなどを試すのに適しているという。このふたつの分析は互いに異なることを示唆しているようで、また、細胞遺伝学的完全寛解に達するのに時間がかかる人の誰が予後良好で誰が予後不良であるかを見きわめるのは困難なこともあるように思える。

 

フランスの研究者らは492人のCMLの初発患者で以下の4つの群から成るランダム化試験を実施している。[6]

・グリベック-400 mg/日
・グリベック-600 mg/日
・グリベック-400 mg/日およびシタラビン
・グリベック-400 mg/日およびペグ化インターフェロン

 

この試験はまだ継続中で各群のくわしいデータは発表されなかったが、試験に参加している患者全体で高い分子学的寛解率(44%)が認められたという報告があった。

 

フランスの研究者らによると、グリベックによる治療で白血病細胞が分子学的に2年間検知されなかった患者15人のうち8人が、グリベックを中止してから6ヶ月以内に分子学的に再発したという。[7] “ほとんどの”患者はグリベックの再投与に反応した。別の7人の患者はこれまでの9ヶ月から20ヶ月間グリベック非投与で再発はないという。

 

中国の研究者らはTrisenox® [トリセノックス®](亜ヒ酸[arsenic trioxide])とグリベックの併用療法を行った14人の患者の治療成績を報告した。[8] それによると、グリベック単剤投与と同じ程度の効果があったが、トリセノックスを併用投与された患者では耐性が起こらなかったという。これが確認されたら、重要な観察になる可能性がある。

 

CML治療におけるスプリセル:グリベック不成功の患者およびCMLが進行した患者

2006年6月29日に米国食品医薬品局(FDA)はCMLまたはフィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ芽球性白血病(ALL)をもち、グリベック耐性もしくは不耐容の患者の治療薬としてスプリセルを承認した。スプリセルは上記疾患の適応でオーファンドラッグとみなされる。

 

スプリセルはグリベックの325倍の活性でBcr-Abl遺伝子を阻害すると報告されている。最近の研究で慢性期CMLを有し、グリベック治療で不成功だった患者40人のうち37人で血液学的完全寛解が得られた。また、進行したCMLあるいはALLの44人の患者のうち31人で血液学的寛解が認められた。細胞遺伝学的寛解は、慢性期の患者の45%、白血病が進行した患者の35%で認められた。寛解の状態は、慢性期に治療を受けた患者の95%、移行期に治療を受けた患者の82%で維持された。ALLあるいは急性転化期CMLのほとんどの患者がこの報告が行われた時点で再発していた。主な有害作用は骨髄抑制のようであった。[9]

 

米国食品医薬品局(FDA)は、グリベックに反応しなくなった400人以上の患者が参加して行われた4件の単一群試験を根拠にスプリセルを承認した。スプリセルによる寛解率は慢性期CMLの患者で45%、寛解は6ヶ月以上持続した。進行したCMLおよびALLでは寛解率は比較的低く、寛解もそれほど長くは続かなかった。

 

CA 180013 ‘START-C’第2相臨床試験に携わる研究者らは慢性期CML(CML)でグリベック耐性もしくは不耐容の患者の治療成績を報告した。[10] この試験には387人の患者が登録した。血液学的完全寛解率は91%で、58%が細胞遺伝学的寛解を得た。細胞遺伝学的寛解はグリベック不耐容の患者の80%、グリベック耐性患者の51%で認められた。細胞遺伝学的完全寛解率はグリベック不耐容患者で74%、グリベック耐性患者で38%だった。寛解はBcr-Abl遺伝子に起きた突然変異の様々の型で認められた。12ヶ月無増悪生存率はすべての患者について90%だった。

 

CA 180-005 ‘START A’第2相臨床試験の研究者らはCMLの移行期(AP: 加速期)にあるグリベック不耐容もしくは耐性患者をスプリセルで治療した成績を報告した。[11] これまでにおこなわれた試験から、CMLの移行期におけるグリベック治療は、およそ9ヶ月の無増悪生存期間と半数の患者に耐性が生じるという結果であることがわかっている。今回の試験には174人の患者が参加したが、そのうち93%がグリベック耐性、7%が不耐容だった。13%はそれまでに造血幹細胞移植を行い不成功であった。移植を受けたことのない患者の血液学的完全寛解率は40%だった。細胞遺伝学的完全寛解は、移植を受けたことのない患者の34%、移植を受けたことのある23人の患者のうち17%で得られた。無増悪生存期間の中央値にはまだ達していなかった。1年間生存率は、移植の経験の有無にかかわらず80%を超えた。この試験に参加した患者のおよそ半数がスプリセル治療を続けている。

 

START-Rランダム化試験の研究者らは、グリベックに耐性ができた患者に対しては高用量のグリベックよりスプリセルのほうが効果があることを示唆するデータを発表した。[12] この試験では、慢性期CMLでグリベックに耐性のある患者が2対1の割合でスプリセル投与群もしくは800 mgのグリベック投与群にランダムに割り付けられた。グリベックで細胞遺伝学的寛解を得たことのある患者グループで、細胞遺伝学的完全寛解が得られたのは、スプリセル投与群35%、高用量のグリベック投与群では7%だった。グリベックで細胞遺伝学的寛解が得られなかったグループでは、スプリセル投与群で44%、高用量のグリベック投与群で7%が細胞遺伝学的寛解を得た。グリベック耐性を引き起こす明白なBcr-Abl遺伝子変異を有する患者についてもスプリセルのほうが効果が大きかった。グリベック投与群の45人がクロスオーバーしてスプリセルの投与を受け、グリベック投与群の7人がクロスオーバーしてスプリセルの投与を受けた。 (サイト注:原文記事のミス。2006年米国血液学会発表要旨では以下の記述となっている。 [グリベック投与群の38人がクロスオーバーしてスプリセルの投与を受け、スプリセル投与群の7人がクロスオーバーしてグリベックの投与を受けた。] )スプリセルにクロスオーバーした患者のうち45%が細胞遺伝学的寛解を得たのに対して、グリベックへのクロスオーバー組ではひとりもいなかった。これは、グリベックに耐性が生じたCMLの治療にはスプリセルが高用量のグリベックに比べて明らかに優れていることを示している。別の試験によると、スプリセルの主な有害作用は血球減少で、これはNeupogen® (filgrastim)あるいはNeulasta® (pegfilgrastim)の投与で対処できるという。[13]

 

初発患者治療におけるスプリセル

MDアンダーソンの研究者らは慢性期CMLの初発患者27人の治療成績を報告した。[14] この試験に参加した患者の年齢の中央値は41歳で最高齢の患者は76歳であった。73%の患者が試験開始後3ヶ月以内に細胞遺伝学的完全寛解が得られ、95%が6ヶ月以内に得られたという。15人の評価可能患者のうち4人が治療開始から9ヶ月で分子学的寛解を得た。85%の患者が6ヶ月で細胞遺伝学的完全寛解が得られたが、高用量(800 mg/日)のグリベック投与を受けている患者では61%であった。半数近い患者に主に骨髄抑制、胸水、発疹あるいは発熱が認められたため、一時的にスプリセルの減量が行われた。著者らは、スプリセルは27人の患者のうち23人を迅速な細胞遺伝学的完全寛解に導き、その反応はグリベックで観察されたより早く起きたと結論づけた。

 

CMLにおけるニロチニブ(AMN107)治療:グリベック不成功の患者

慢性期CMLをもち、グリベックに耐性があるかグリベック不耐容の患者132人をニロチニブで治療した多国間試験の報告があった。[15] 半数近くの患者がCMLを5年以上患っていてグリベックを服用した期間の平均は978日だった。62%の患者がニロチニブ治療を続けている。治療の開始時に寛解の状態になかった患者の69%で血液学的完全寛解が得られた。細胞遺伝学的寛解が42%で認められ、そのうち25%が完全寛解だった。毒性に関しては耐えうるという。

 

移行期CMLをもちグリベックが効かなかったか不耐容だった患者をニロチニブで治療した多国間試験の報告があった。[16] 58%で血液学的寛解が得られ、うち23%が慢性期への移行を伴う完全寛解だったという。細胞遺伝学的寛解が36%で認められ、うち22%は細胞遺伝学的完全寛解だった。12ヶ月生存率はおよそ70%で、病状悪化までの期間の中央値にはまだ達していなかった。

 

CMLの移行期または急性転化期にあってグリベックもスプリセルもどちらも奏効しなかった患者50人をニロチニブで治療した多国間試験について2006年の米国血液学会で報告が行われた。慢性期に治療を受けた患者の3分の1で細胞遺伝学的寛解が認められた。急性転化期にあった患者の18%で血液学的完全寛解が認められた。著者らは、ニロチニブはグリベックおよびスプリセルが奏効しなかった患者において有意の活性を有し、また、スプリセル耐性を克服する可能性があると結論づけた。

 

急性転化期にあるCMLの患者120人をニロチニブで治療した多国間試験の結果が報告された。[17]急性転化期骨髄性白血病患者87人、急性転化期リンパ性白血病27人が含まれていた。急性転化期骨髄性白血病患者の21%、また、急性転化期リンパ性白血病患者の26%で血液学的完全寛解が得られた。CMLの慢性期への移行率は、それぞれ9%と7%だった。

 

ある試験でグリベックもスプリセルも奏効しなかった患者でニロチニブの中等度の活性が認められ、2006年の米国血液学会で発表された。[18]

 

初発患者におけるニロチニブ

ニロチニブはBcr-Ablタンパク質のATP結合部位を標的にするよう特別にデザインされた経口剤である。ニロチニブはグリベックよりも高い活性を有する。ニロチニブはほとんどのBcr-Abl変異細胞株に対してもin-vitroで活性を有する。グリベックに不耐容もしくはグリベックに耐性をもつ患者の30%以上で細胞遺伝学的寛解が認められた。

 

MDアンダーソンがんセンターの研究者らはCMLの初発患者をニロチニブ(AMN107)で治療して得られた初めての結果を報告した。[19] 14人のCMLの初発患者がニロチニブの投与を受けた。100%の患者で血液学的完全寛解が3ヶ月以内に得られ、また、6ヶ月までには100%の患者で細胞遺伝学的完全寛解が得られた。6ヶ月までに54%の患者で分子学的寛解が得られた。これらの寛解は1日800 mgのグリベック投与で認められたよりも早く得られたようだった。しかしながら、9ヶ月の段階でグリベック800 mgもニロチニブもどちらもおよそ40%の患者で分子学的寛解に至った。著者らは、ニロチニブの投与では治療開始後早い段階で完全寛解に至る確率が高いと結論した。毒性のため、2人の患者が試験からはずされ、6人が用量を減らした。

 

分子学的寛解をもたらすという点において、ニロチニブは高用量のグリベック(800mg/日)と少なくとも同等の有効性があると思われる。著者らは強い毒性は認められていないと言うが、試験の対象となった患者の数は少なく、毒性は有意にあるように思われる。CMLでニロチニブが果たす役割を正しくつかむためにはさらに試験が必要であろう。将来的にはチロシンキナーゼ阻害剤の併用療法に関する研究が行われるかもしれない。

 

要約

2006年の米国血液学会ではCML治療におけるグリベックの役割と限界を明らかにする上で大きな前進がみられた。CML治療にスプリセルとニロチニブが加わったことは大いなる成果だった。グリベックと化学療法を併用する研究は、これでグリベックに耐性をもつクローンの発生を遅らせることができるかという点に関心が向けられるであろう。

 

参考文献(原文ページをご覧ください)

 


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳なかむら

監修林 正樹(血液・腫瘍科)

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

関連薬剤情報

一覧

週間ランキング

  1. 1BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  2. 2非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  3. 3若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  4. 4コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  5. 5がんに対する標的光免疫療法の進展
  6. 6ニボルマブとISA101ワクチン併用療法が中咽頭がん...
  7. 7乳がん化学療法後に起こりうる長期神経障害
  8. 8がん領域におけるシームレス臨床試験数が近年増加
  9. 9ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  10. 10治療が終了した後に-認知機能の変化

お勧め出版物

一覧

arrow_upward

ユーザー 病名 発信元種別 発信元名 治療法別 がんのケア がんの原因・がんリスク がん予防 基礎研究 医療・社会的トピック 注目キーワード別 薬剤情報名種別

女性のがん
消化器がん
泌尿器がん
肉腫
血液腫瘍
その他
民間機関
その他