2012/01/10号◆クローズアップ「部分乳房照射への問題提起」 | 海外がん医療情報リファレンス

2012/01/10号◆クローズアップ「部分乳房照射への問題提起」

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2012/01/10号◆クローズアップ「部分乳房照射への問題提起」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2012年1月10日号(Volume 9 / Number 1)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ クローズアップ ◇◆◇

部分乳房照射への問題提起

過去30年にわたる早期乳癌手術の流れは「縮小」の一語に集約できる。乳房温存手術(BCS)に放射線治療を併用する治療法は、乳房全摘(乳房切除術)に代わる標準治療となった。近年では、腫瘍の浸潤を判定して補助療法の方針を決める方法として、侵襲性の高い腋窩リンパ節郭清に代わって、センチネルリンパ節生検が広く普及している。

ここ10年、研究者は「縮小」を放射線治療にも適用できるかどうかに注目し始めた。BCS後の放射線治療の有効性は、複数の研究で一貫して示されている。しかし、従来の乳房全体への放射線治療は有効ではあるが治療に週5日、最長7週間を要する。このスケジュールでは、治療施設から遠く離れた場所に住んでいる患者や、治療中も仕事を続けている女性患者、確実な交通手段がない患者にとって、治療を完遂することは不可能に近い。

放射線治療にかかる時間が短縮されれば、多くの女性患者に恩恵をもたらすだろう。最近のランダム化試験で、一部の女性患者に対して全乳房照射を3週間で行った場合(少分割照射)の安全性と有効性は、6~7週間で行う場合は同等であることが示された。別のアプローチとして研究されているのは加速部分乳房照射(APBI)であり、これは乳房全体ではなく、腫瘍のあった部位を含む周辺領域だけに対して短期間(1週間以内)で照射する。少分割照射とAPBIはいずれも、1回の治療(分割)で従来の全乳房照射よりも高い線量を照射する。

「患者の大部分は現在も全乳房照射を受けていますが、この領域で乳腺部分照射が広がりつつあることに疑問の余地はありません」とNSABP(National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project)の医務部門副部長であるDr. Thomas Julian氏は述べている。

どの治療もそうであるように、APBIにも利点と欠点がある。APBIの利点は、患者が1週間以内に放射線治療を完遂できることに加えて、肺や心臓など、乳房に近い他臓器への照射を低減することである。しかし欠点は、APBIの安全性と有効性に関する長期間のデータが、現在進行中の大規模ランダム化からまだ得られていないことがある。

普及は時期尚早だったか

最近、APBIの一種である乳房小線源治療が、治療法の安全性と有効性に関する有効なエビデンスを先行して利用されているのではないかという問題が提起された。乳房の小線源治療では、手術でできた腔内に放射線を出す小さなシードを一時的に埋め込み、数日間にわたって限局的に照射する。

2002年に米国食品医薬品局(FDA)が乳房小線源治療用のマンモサイト(MammoSite®)バルーンカテーテルと呼ばれる装置を認可した後、乳房の小線源治療の施行が増加し始めた。FDAの承認が必須である抗癌剤とは異なり、治療を容易にするための装置は、基本的な安全性要件を満たさなければならないものの、標準治療と比較した有効性を証明しなくても認可される。メディケアが2004年にマンモサイトによる治療の支払いを承認した後、乳房小線源治療の施行がいっそう増加した。

複数の新しい研究によると、乳房小線源治療の施行率は上昇している。2011年1月に発表された研究では、メディケアの補足保険に加入している受給者約7,000人のデータを分析した結果、乳房小線源治療の施行率は2001年では患者の1%未満であったが2006年には10%に増加したと報告されている。

昨年8月に発表された別の研究では、SEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results)データベースの120,000件以上のデータを分析した結果、乳房小線源治療の施行率は2000年の1%未満から2007年の6.8%に増加したことを明らかにしている。

先月開催された2011年度サンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)では、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのDr. Benjamin Smith氏らによる研究から、小線源治療の増加には無視できない問題点があることが示唆された。

この研究では、2000~2007年に浸潤性乳癌と診断された66歳以上の女性のメディケアへの請求を精査した。この研究で分析対象とした130,535人の女性全員が、BCSの後にAPBIまたは全乳房照射のいずれかを受けていた。APBIを受けた女性は、2000年に1%未満であったのに対し、2007年には13%に上った。

研究者らは、放射線治療後に乳房切除術が施行された場合に乳癌が再発したものとみなし,これを再発の代替指標とした。追跡した5年以内に、APBIを受けた女性では4%が再発後乳房切除手術を受けたが、全乳房照射を受けた女性では2%であった。APBIを受けた女性は、術後合併症、感染症、肋骨骨折、乳房痛など、治療による早期および晩期副作用のリスクもいずれも高かった。

「われわれの研究結果は、小線源治療を受けた患者で乳房切除のリスクが高いことを示唆しています。これに対する最も直観的に理解しやすい説明は、小線源治療を受けた一部の患者には、小線源治療の標的体積外に残存腫瘍細胞があった、ということです」とSABCSの記者会見でSmith氏は述べている。

記者会見の中で、Smith氏はこの研究の限界をいくつか挙げた。Smith氏が強調したのは、この研究が観察研究であることに加えて、追跡期間が限られており、化学療法の施行は考慮に入れているが、ホルモン療法の施行は考慮に入れていないことである。また、データは外部照射や術中照射を含む「すべての部分乳房照射法に当てはまるわけではない」ことも指摘している。

しかし、Smith氏が重視しているのは、その後の談話で述べたように、「このデータによって、小線源治療によるAPBIは有効性が低い上に副作用プロファイルも不良であることが示された—この[併用]は治療についての考え方に変化をもたらす」ということである。

「乳房切除の比率が2倍になるのは、レトロスペクティブなデータだとしても重大なことだと考えます」とNCIの癌治療・診断部門で、放射線研究プログラムの臨床放射線腫瘍学科の長をつとめるDr. Bhadrasain Vikram氏はいう。「再発を防ぐためにどの患者に放射線治療が必要なのか医師が予見できると仮定して、該当の患者でその後乳房切除手術が行われた比率を予測すると、おそらくその差は2%より大きくなるでしょう」(実際には、再発を防ぐためにどの患者に放射線治療が必要か予見できないため、すべての患者でBCS後の標準治療となっている)。

エビデンスが待たれる

一部の女性に乳房小線源治療を安全に施行できるかどうかの指針となるランダム化試験のエビデンスがないと、医師は自分自身の経験や小規模な単一機関での研究結果に頼るしかない。2009年に、米国放射線腫瘍学会(ASTRO)のSmith氏と他のメンバーは、ランダム化臨床試験外でAPBI(小線源治療を含むがそれに限定されない)治療を安全に施行できる女性の特定を試みる、意見に基づく合意声明を発表した。

この声明では、2つの患者群についても定義している。「要注意」群は臨床試験外でAPBIを検討する際に注意と配慮が必要であり、「不適合」群は臨床試験外でのAPBIは是認できない。

これらのガイドラインが乳房小線源治療の施行に影響を与えるかどうかは、現時点では不明である。2012年1月4日号Journal of the National Cancer Institute誌に発表された論文では、ボストンのブリガム&ウィメンズ病院の研究者らがSEERデータベースのデータを分析し、2000~2007年に乳房小線源治療を受けた患者の3分の2がASTROガイドラインで定義された「要注意」群と「不適合」群に分類されることを明らかにしている。

「臨床試験に基づく[部分乳房照射の]確固たる転帰データが必要であることには疑問の余地がありません」とJulian氏はいう。NCIが後援する大規模ランダム化試験NSABP B-39/RTOG-0414では、早期乳癌女性で全乳房照射と加速乳腺部分照射を比較するものであり、そのようなデータが得られるはずである。

この試験は、乳房の小線源治療だけを対象とするものではない。試験参加医師は、APBIの施行に2種類の小線源治療のいずれか、または外部照射法である3次元原体照射(3D CRT)を選択できる。興味深いのは、Julian氏の報告によると、患者が増加して試験が終わりに近づいているが、小線源治療を受けている患者は今までのところAPBI群の4分の1にすぎないことである。大部分は外部照射装置によるAPBIを受けている。

「外部照射は、装置がすでにそこにあるため、放射線腫瘍医にとって最も簡単に利用できる方法なのです」とJulian氏は説明している。試験に参加するような大学病院では、小線源治療カテーテルを導入する経済的な動機も乏しいと付け加えた。

しかしJulian氏は、試験への参加を予定した患者数の多さから、小線源治療によるAPBIと外部照射によるAPBIの「安全性と有効性についての結論を導き出すことができる」と期待している、と結論づけている。

「もちろん、広範に普及させるには臨床試験データを待つのが望ましいと考えているが、低リスクの女性で、全乳房照射を受けた場合と比較して、再発の転帰が良好であることが示されるまでには10年以上の部分乳房照射の実績が必要である。しかし、高リスクの女性にはそのデータは利用できない」と同氏は結んでいる。

もっと深刻に受け止め、現時点でのエビデンスでは臨床試験外で実績のない治療法を施行するリスクに対応できないと考える医師もいる。Vikram氏は「確固たるエビデンスを期待するならば、今のところ乳房小線源治療は慎重に検討すべきです」という見解を述べる。「特に、ランダム化試験では、少分割照射および手術中に放射線治療を行う術中乳腺部分照射の良好な早期結果がすでに示されているからです」。7週間の全乳房照射を避けたい患者にとって、これらのほうが安全な選択肢となるという。

小線源治療の長期データが出るまでには長く待つことになりそうである。NSABP B-39/RTOG-0414の治療段階が間もなく終了し、カナダと欧州で進行中の複数の大規模APBI試験も終わりに近づいているが、十分信頼に足る結果が得られるには10年はかかるだろう。

ホルモン療法と化学療法の進歩は乳癌再発までの平均期間を著しく延長したため、「2~3年の追跡期間で報告したのでは、とても十分とはいえません」とJulian氏はいう。「その先の5年後、10年後時点でのイベント発生率を見ないと、実際に何が起こるかはわからないのです」。

— Sharon Reynolds

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月橋純子  訳
中村光宏(医学放射線/京都大学大学院医学研究科) 監修
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