2012/01/10号◆癌研究ハイライト「前立腺摘除術におけるロボット使用は合併症を減少させない可能性」「化学療法に関連する脳の微小変化」「治療困難な慢性リンパ性白血病に対する有望な薬剤」 | 海外がん医療情報リファレンス

2012/01/10号◆癌研究ハイライト「前立腺摘除術におけるロボット使用は合併症を減少させない可能性」「化学療法に関連する脳の微小変化」「治療困難な慢性リンパ性白血病に対する有望な薬剤」

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2012/01/10号◆癌研究ハイライト「前立腺摘除術におけるロボット使用は合併症を減少させない可能性」「化学療法に関連する脳の微小変化」「治療困難な慢性リンパ性白血病に対する有望な薬剤」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2012年1月10日号(Volume 9 / Number 1)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ 癌研究ハイライト ◇◆◇

・前立腺摘除術におけるロボット使用は合併症を減少させない可能性
・化学療法に関連する脳の微小変化
・治療困難な慢性リンパ性白血病に対する有望な薬剤

前立腺摘除術におけるロボット使用は合併症を減少させない可能性

前立腺摘除術をうけた高齢男性は、手術でロボット技術が使用されたかどうかに関わらず、1年以内に失禁や性機能障害を発症するリスクが高いことが、新しい調査により判明した。この結果Journal of Clinical Oncology誌1月3日号電子版で発表された。

前立腺摘除を腹腔鏡下で行う場合、80%以上の割合でロボット技術が用いられる。しかし、ロボット手術は、従来の手術に比べて患者に明らかな利益があることを示すエビデンスがないままに技術が普及したと主張する研究者もいる。

この疑問について調べるためにマサチューセッツ総合病院のDr. Michael Barry氏らは、Medicare claims filesのデータベースから、前立腺癌に対して前立腺全摘術を受けた男性患者の中からランダムに800人を選んで調査票を送った。685人から回答があり、回答者のうちロボット支援手術を受けた人は従来の開腹による前立腺摘除術を受けた人の約2倍であった。

両群の患者ともに、失禁や性機能障害が高率で認められ、ロボット技術はこれらの合併症を減少させないことが示唆された。

「前立腺全摘術に対するロボット手術の急速な普及は、この技術が正確であるので合併症が少なくなるだろうという仮定に基づいているようだ」とBarry氏は述べた。しかし今回の新しい結果は、先行する試験と同じように、その仮定が疑わしいことを示している。実際、今回の研究では失禁に関しては、ロボット手術を受けた男性の方が有意ではないがわずかに多かった。

今回の研究で不十分な点は、前立腺摘除術前の失禁と性機能に関しての患者情報を確認していないことである。今後、もう少し若い男性で前向き試験を行い、従来の手術と比較した前立腺癌に対するロボット手術のリスクとベネフィット、費用効果を調べる必要があると著者らは述べた。

本研究には不十分な点があるが、両方の手術において合併症が高率であったことを考慮すると、今回の結果は「的外れではない」と付随論説の著者らは結論している。またどのような術式でも、その結果は「用いられる技術だけでなく、術者の技量や経験、病院のシステム」に基づくと述べられている。

Barry氏も同様の意見であり、「術式と同等以上に術者のその術式に対する経験が重要であり、ロボット手術であるということだけで他の術式よりも安全で素晴らしいということではない」と述べた。

化学療法に関連する脳の微小変化

癌や癌治療に関連する認知機能の変化には、集中力、記憶力、複数作業の同時処理能力、計画力などの低下があり、”ケモブレイン(化学療法による脳機能障害)”と称される。この一群の症状の根底に、脳の微小な器質的変化があることが示唆されつつあるが、新しい研究で新たな証拠が示された。

ヨーロッパの研究者らは先端的な画像技術を用いて、化学療法を受けた乳癌女性の認知機能の変化が、脳内の神経細胞をつなぐ線維の器質的変化と関連する証拠を発見した。この研究Journal of Clinical Oncology誌12月19日付電子版で発表された。

研究者らは、拡散テンソルMRI(DT-MRI)という核磁気共鳴画像法(MRI)の技術を用いて、脳内の異なった領域の情報伝達を調節する脳白質の変化を調べた。これまでの研究により、白質の損傷は認知機能の変化の原因となることが示されていた。

閉経前の年齢中央値43歳の女性で、初期乳癌で化学療法を予定されている34人の女性群、初期乳癌で化学療法を予定されていない16人の女性群、健康で癌がない19人の女性対照群の3群が試験に参加した。

化学療法前と、治療終了後3~5カ月後に、化学療法で治療された患者は脳全体のDT-MRI検査と、集中力、記憶力、計画力などの能力を測定する一連の神経心理学的検査、認知機能検査を受けた。化学療法を受けなかった患者群と健康な対照群は、同様の検査を同じ間隔で受けた。3群間には治療前に差は認められなかった。

しかし、追跡検査では化学療法を受けた患者群では、両対照群に比べて神経心理学検査の結果が悪く、認知機能障害も多く認められた。この悪い結果は、化学療法を受けた女性の脳白質の微小変化を示すDT-MRI画像検査での所見と相関していた。

「これらの結果は、化学療法を受けた患者の『白質』の微小構造の変化が、認知機能障害の根底にあることを示唆する」と、ベルギーのルーヴェン大学病院のDr. Stefan Sunaert氏が指導する本研究著者らは述べた。

「癌治療を終えた後に持続的な認知障害を訴える患者を無視してはいけない」とカリフォルニア大学ロサンゼルス校のDr. Patricia Ganz氏は付随論説で述べた。しかし「認知機能障害を発症することを恐れて、有効な可能性がある化学療法を思いとどまるべきではない」と同氏は注意を与える。

Ganz氏は「われわれはもはや癌治療のこの長期的な影響の存在を否定できないので、この副作用を最小限にするように治療法を改善する必要がある」と付け加えた。

関連記事:「ケモブレインのメカニズムについて考察する」、「脳スキャンが化学療法の構造的影響を示す

治療困難な慢性リンパ性白血病に対する有望な薬剤

細胞の生存を促進するタンパク質を阻害する現在開発中の薬剤navitoclaxについて、治療困難な慢性リンパ性白血病(CLL)患者を対象とした第1相試験で有望な結果が得られた。本剤の標的はBCL2ファミリーに属する関連タンパク質である。これらのタンパク質は多くの種類の腫瘍細胞に存在し、異常細胞はプログラムされた細胞死(アポトーシス)に至るという本来の流れを阻害する。

Journal of Clinical Oncology誌に12月19日付で掲載された国際研究チームの報告によると、CLLの再発後または他の治療の効果が認められなくなった後にnavitoclax投与を受けた患者26人のうち、9人は部分寛解となり、6人は6カ月以上にわたって病勢が安定していた。また、本試験の開始時にリンパ球増加症(血中のリンパ球数が増加する)の見られた患者21人のうち19人で、リンパ球数が50%以上減少した。主要な用量制限毒性は血小板減少症であった。

著者であるロイヤルメルボルン病院(オーストラリア)のDr. Andrew W. Roberts氏らは、「本試験では、BCL2がCLLの有用な治療標的となることを臨床上初めて証明できた」と述べる。

付随論評にコメントを記載したSt. James’s Institute of Oncology(英国)のDr. Peter Hillmen氏によると、過去に複数の治療を受けていた患者に対して本剤を単独投与したことを考慮すると、navitoclaxの効果は素晴らしい成果である、と述べている。

同氏の話は続く。アポトーシス作用を持つBCL2ファミリーを阻害する戦略は、CLLの治療革命の先駆けとなるであろう。Novitoclaxは、CLL細胞の様々な表面分子を標的とする現在臨床開発中の薬剤の1つである。次の段階は、これらの新規薬剤を最も有効に併用する方法を検討することである。これらの薬剤を論理的に併用することでCLLの治療が劇的に変化し、最終的にはより有効性が高く、かつより毒性の少ない治療法となるであろう」。

CLLにおけるnovitoclaxの生物学的作用機序を付随記事として掲載したダナファーバー癌研究所のDr. Loren D. Walensky氏によると、以前に行われた第1相試験では、治療困難なリンパ腫および小細胞肺癌患者においてnovitoclaxの安全性および暫定的ではあるが一定の有効性が認められた。同氏はまた、本剤は、単独投与、および癌の化学療法耐性を克服するために併用投与での第2相試験に進んでいる」と述べている。

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野長瀬祥兼、 仲里芳子 訳
原 文堅(乳癌/四国がんセンター )、東 光久(血液癌・腫瘍内科領域担当/天理よろづ相談所病院・総合内科) 監修
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