2012/01/10号◆特集記事「ベバシズマブは一部の卵巣癌患者に有効な可能性」 | 海外がん医療情報リファレンス

2012/01/10号◆特集記事「ベバシズマブは一部の卵巣癌患者に有効な可能性」

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2012/01/10号◆特集記事「ベバシズマブは一部の卵巣癌患者に有効な可能性」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2012年1月10日号(Volume 9 / Number 1)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇

ベバシズマブは一部の卵巣癌患者に有効な可能性

分子標的薬のベバシズマブ(アバスチン)が、進行卵巣癌患者の無増悪生存期間を延長することが、2つの第3相臨床試験の結果でわかった。この試験結果は、12月29日付のNew England Journal of Medicine誌で発表された。

両方の臨床試験において、患者は一次治療でベバシズマブと標準的な化学療法を併用し、その後、一定期間にわたりベバシズマブの単剤投与を受けた。いずれの臨床試験においても、この方法が生存期間の延長(全生存期間の改善)につながるかどうかを判断するのに十分な時間が経過していないものの、両試験とも若干の生存延長の可能性を示唆した。

ベバシズマブには、腫瘍に栄養を送り込む血管の形成(血管新生)を妨げる作用があると考えられている。重度の高血圧といった一般的な副作用が、ベバシズマブ投与を受ける患者にしばしば起こるが、通常、薬で対処できると臨床試験研究者は報告している。消化管穿孔などのより重篤な副作用も、ベバシズマブの投与を受けた患者により頻繁に見られるが、こうした合併症は比較的稀であった。治療に起因すると思われる死亡も稀ではあるが、ベバシズマブ投与を受けた患者で起こる頻度が高い。

進行した卵巣癌患者に有効な一次治療を開発する取組みでは、この20年間における成果は限られている。これらの臨床試験は、少なくとも一部の患者に対しては、ベバシズマブがこうした状況を変える可能性を示唆していると、アラバマ大学バーミンガム校の婦人腫瘍科部長のDr. Ronald Alvarez氏は説明した。

「これら2つの臨床試験は、ベバシズマブが(卵巣癌患者に対して)有効性をもつ可能性を示したと考えます」と、Alvarez氏は話した。ベバシズマブがより有効なのが一次治療か、再発後の治療なのかはまだ不明だが、「ベバシズマブは卵巣癌に効果があることは明白です」。

同様の臨床試験、重要な相違

1つは主に米国で、もう1つは欧州で実施されたこれら2つの臨床試験は、類似しているものの、登録基準やベバシズマブ投与量などで重大な違いがある。

規模が大きい方の臨床試験は、NCIとアバスチンの製造元であるGenetech社の資金提供で米国婦人科腫瘍グループ(GOG)が実施したもので、無治療の進行卵巣癌の診断を受けた1900人近い患者を登録した。この臨床研究は、1つの対照群と2つの試験群の3群で実施された。対照群には、標準的な化学療法(カルボプラチンとパクリタキセル)による一次治療に続き、プラセボが投与された。一方の試験群では、化学療法およびベバシズマブによる一次治療に続き、プラセボが投与された。他方の試験群では、同様の化学療法およびベバシズマブによる一次治療に続き、長期にわたりベバシズマブ単剤による治療が行われた。

GOG-0218と呼ばれるこの臨床試験に登録した患者のうち、ベバシズマブ投与を長期間(最長10カ月)受けた患者の無増悪生存期間が最も長く、中央値は約14カ月であった。これは化学療法のみを受けた患者の無増悪生存期間中央値より4カ月近く、またベバシズマブを短期間投与された患者の中央値よりも3カ月近く長かった(表1参照)。生活の質に関する点数は、3群とも同程度であった。

表1 GOG-0218 臨床試験による知見

治療 無増悪生存期間
化学療法及びプラセボ。その後、プラセボ投与 10.3カ月
化学療法及びベバシズマブ(15mg/kg)、その後、プラセボ投与 11.2カ月
化学療法及びベバシズマブ(15mg/kg)、その後、ベバシズマブ投与 14.1カ月

Genentech社の親会社であるRoche社が資金提供したICON7と呼ばれる別の臨床試験では、少ない用量のベバシズマブが用いられた。この臨床試験に登録した1500人以上の患者は、標準的な化学療法を行う群と、化学療法およびベバシズマブを併用した後に、ベバシズマブ単剤の治療を最長7カ月行う群とに、ランダムに割り付けられた。ICON7に登録したほとんどの患者は進行卵巣癌で、それ以外の約30%は早期ステージだが、いくつかの要因をもとに手術後の再発リスクが高いと考えられる患者であった。

ICON7の登録患者の中で、ベバシズマブ治療に関わる無増悪生存期間延長の中央値は2カ月未満であった。しかし病勢進行ハイリスクと考えられる一部集団では、無増悪生存期間および全生存期間においてより顕著な違いが見られた(表2参照)。しかしながら、これは計画外のサブセット解析で、こうした分析は試験開始前に規定されている分析に比較して信頼度が低いと考えられる。

表1 ICON7臨床試験による知見

治療 無増悪生存期間
化学療法およびプラセボ、その後、プラセボ投与 17.3カ月
化学療法およびベバシズマブ(7.5mg/kg)、その後、ベバシズマブ投与 19カ月
*化学療法およびプラセボ、その後、プラセボ投与(ハイリスク患者) 10.5カ月(28.8カ月全生存期間)
*化学療法およびベバシズマブ(7.5mg/kg)、その後、ベバシズマブ投与(ハイリスク患者) 15.9カ月(36.6カ月全生存期間)

*計画外のサブセット解析

実地臨床へのインパクト

卵巣癌治療にベバシズマブを使用するにあたり、重要な不明点が多数残っていると研究者らは指摘する。その中でも最も重要なのは、どの患者がベバシズマブの恩恵を最大限に受け、どの患者で重篤有害事象リスクが高いかを知るための、臨床的あるいは生物学的なマーカーがないことだと、ジョンズホプキンス大学のシドニー・キンメル総合がんセンターのDr. Deborah Armstrong氏は話した。

最も恩恵を受ける患者を特定するマーカーがない状態では、「全員を治療対象にするので、恩恵を受ける集団が希薄になります」。

ベバシズマブは現在のところ、単剤で悪性膠芽腫と腎臓癌の治療、また化学療法との併用で大腸癌および肺癌治療に、FDA(食品医薬品局)の承認を得ている。また昨秋、FDAは転移性乳癌の治療における複数の臨床試験で、ベバシズマブが患者の生存期間延長に寄与せず、重篤な副作用の可能性を示したことから、同薬の迅速承認を取り消した

Genentech社は以前、GOG-0218とICON7の結果をもとに卵巣癌治療でベバシズマブのFDA承認を求める可能性は低いと表明した。しかし、同社の広報担当によれば、全生存期間を含む臨床試験データの完全な評価を行った後で、最終決定するという。

ほとんどの医療保険会社は、FDAの適応承認がない薬剤を保険適用としないため、医療機関が新たに卵巣癌の診断を受けた患者に対してどの程度ベバシズマブを使用するかにFDA承認が大きな影響を与えると、Alvarez氏は言う。年間、最高で10万ドルにも達する治療では、自費で支払える患者はほとんどいない。(欧州では最近、ベバシズマブが進行卵巣癌の一次治療薬として承認された)

それでもベバシズマブは、臨床試験以外でも、手術および化学療法後に再発した卵巣癌患者のあいだで長年使用されてきたと、GOG-0218 臨床試験の主任研究者であり、カリフォルニア大学アーバイン校のDr. Robert Burger氏は語った。

既存のデータを踏まえれば、標準的な手術を受け、ステージ3で腫瘍が完全に切除できなかった患者や、ステージ4の卵巣癌患者の一次治療薬の選択肢として同薬は有望だとBurger氏は言った。しかし、再発卵巣癌患者を対象としたOCEANS臨床試験の最新データを踏まえれば、ベバシズマブは「効果がみられ、許容範囲を超える副作用がない患者では、少なくとも病勢進行まで続けてみるべきものでしょう」と語った。

臨床試験以外では、Armstrong氏はふつう再発卵巣癌患者に対してのみ、化学療法との併用ではなく、ベバシズマブを単剤で使用していると話した。一次治療として使うには、まだ未知なことが多すぎると考えている。

「(ベバシズマブは)生存期間を改善しません。その場合に、標準治療として受け入れられるべきでしょうか」と、同氏は疑問を投げかける。薬剤の費用や潜在する重篤な副作用などを含む要因についても、熟慮が求められる。「そうした事を検討しなければなりません」と、同氏は語った。

卵巣癌治療のために、ベバシズマブを使った異なる療法、異なるスケジュールの臨床試験が多数実施されている。またAMG386、BIBF1120、pazopanib、cediranibを含むベバシズマブとは違う方法で血管新生を標的とする有望な多数の薬剤も、第3相臨床試験が行われているとBurger氏は話した。

—Carmen Phillips

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片瀬ケイ 訳
勝俣範之(腫瘍内科、乳癌・婦人科癌/日本医大武蔵小杉病院) 監修
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