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ある種の筋ジストロフィー患者では、癌リスク上昇の可能性がある

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ある種の筋ジストロフィー患者では、癌リスク上昇の可能性がある

NCIプレスリリース 2011年12月13日

筋ジストロフィーの一種である筋強直性(緊張性)ジストロフィー(MMD)の成人患者で癌発症リスクが上昇する可能性があることが、米国国立衛生研究所の一機関である国立癌研究所(NCI)の研究者らによる研究で示された。研究者らは、MMDを引き起こす遺伝子変化には癌リスク上昇の原因にもなりうるものがあることを示唆しているが、この仮説を裏付けるにはさらなる研究が必要とされる。本研究結果は2011年12月14日付けのJournal of the American Medical Association誌に掲載された。

MMDは遺伝性疾患群のひとつで、成人の筋ジストロフィーではもっとも多い型である。MMDには1型と2型の2つの主な型が存在し、これらは異なった2種類の遺伝子変異が要因となっている。どちらの場合も、あるDNA領域に遺伝子の繰り返し配列が通常よりも伸長することで変異が生じている。遺伝子の繰り返し配列は通常もみられるものであるが、反復の長さが通常の遺伝子機能を妨害するほど伸長している。MMD患者を治療する医師らは良性または悪性腫瘍の発生を目にすることがあるが、これらの癌が筋強直性(緊張性)ジストロフィー症候群の一兆候であるのか、それとも偶然の一致であるのかは明らかにされていなかった。

MMD患者の癌発症リスクが一般集団よりも高いかどうかを究明するため、研究者らは1987年から2004年にthe Swedish Inpatient Hospital Discharge Registerに、または1977年から2008年にthe Danish National Patient Discharge Registryに報告された、この疾患を抱える1,658人のスカンジナビア人患者を特定した。その後それらの患者と、スウェーデンおよびデンマークの癌登録との関連性を調べた。

この試験で研究者らは、すべての癌種での評価および癌種ごとの評価を行った。さらに年齢および性別ごとのリスクについても分析し、MMD患者の癌発症リスクは一般集団の2倍であることを見出した。その過剰の大部分は大腸癌、脳腫瘍、子宮内膜癌および卵巣癌であった。過剰なリスクはスウェーデン人とデンマーク人の両コホートで同等であった。また研究者らは、生殖器の癌を除外すると、MMD患者は男女ともに同等の過剰な癌発症リスクを抱えていることも発見した。

「早期の癌は最も容易かつ効果的に治療できるので、とくに大腸癌について、一般集団で臨床的有用性が示された癌スクリーニング技術をMMD患者において使わない手はない、ということがわれわれの研究で示唆されています。」と、NCI癌疫学・遺伝学部門(DCEG)臨床遺伝学科の主任であるMark H. Greene医師は述べた。

研究者らによると、喫煙などの既知の癌リスク因子についての情報がないため、この研究には限界があるという。また各患者がMMDのどの型であるかの情報も欠けており、それらのMMD患者でみられた癌リスク増大が両方の型に共通するものであるのか特定の型に限定されるものであるのかの判断は不可能であった。

「われわれは、MMD1型と2型で癌リスクとの関係性が異なっているのか、過剰な癌リスクが既知の癌リスク因子で説明されうるのか、DNA領域の繰り返しの長さと癌リスクとの間に関係性があるのかなど、MMDと癌についての多くの重要な疑問点を検討するための試験を実施している。」とGreene医師は述べた。

この研究は米国国立関節炎、骨格筋、皮膚疾患研究所(MIAMS)(契約番号N01-AR-5-2274 およびNO1-AR-0-2250)および米国国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)(助成金 U54-NS048843)に加え、DCEGの家族性・遺伝性癌症候群ポートフォリオの臨床遺伝子研究の一部であり、プロジェクト1Z1ACP010144-13のもと資金提供を受けた。ロチェスター大学(ニューヨーク)医療センターにある神経疾患センター神経科、スウェーデンのソルナにあるカロリンスカ大学病院およびカロリンスカ研究所(the Karolinska University Hospital Solna and Karolinska Institute, Sweden)、デンマーク国立血清学研究所(the Statens Serum Institute, Denmark)などからの研究者らがこの取り組みに参加した。

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NCIは全米癌プログラムを指揮し、予防および癌生物学の研究、新規治療の開発、および新規研究者の教育と指導を通して、癌の負担を劇的に軽減し、癌患者とその家族の生活を改善するNIHの取り組みを率いている。癌に関して、詳細はNCIのウェブサイト www.cancer.govまたはNCIの癌情報サービス1-800-4-CANCER (1-800-422-6237)まで連絡されたい

NIAMSは関節炎、筋骨格、皮膚疾患の原因、治療および予防に関する研究の支援、この研究を行う基礎および臨床研究者の育成、これらの疾患の研究成果に関する情報の普及を行っている。NIAMSに関するより詳細な情報は情報センター (301) 495-4484 または (877) 22-NIAMS (フリーコール)まで連絡するかNIAMSのウェブサイトwww.niams.nih.govを参照のこと

NINDSは脳および神経系研究における,国家的,先駆的出資機関であり、あらゆる年齢層、社会階層、世界中の人々への神経疾患の負担を軽減することを目的としている。NINDSに関するより詳細な情報はNINDSのウェブサイトwww.ninds.nih.govを参照のこと

米国国立衛生研究所(NIH)について:米国の国立医学研究機関であるNIHは、27の施設とセンターから構成されており、米国保健福祉省の1機関である。NIHは基礎医学研究、臨床研究、およびトランスレーション研究を実施、支援する主要な連邦機関であり、一般的な疾患と希少疾患の両者に対してその原因や治療に関する研究を行っている。NIHおよびNIHの研究に関するより詳細な情報はwww.nih.govを参照

Reference: S M Gadalla et al. cancer risk among patients with myotonic dystrophy.JAMA, Dec. 14, 2011

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北川 瑠璃子 訳

廣田 裕 (呼吸器外科/とみます外科プライマリーケアクリニック)監修

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原文

 

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