乳頭経由の乳癌治療法、初期の臨床試験で有望な成果/ジョンズ・ホプキンス大学 | 海外がん医療情報リファレンス

乳頭経由の乳癌治療法、初期の臨床試験で有望な成果/ジョンズ・ホプキンス大学

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乳頭経由の乳癌治療法、初期の臨床試験で有望な成果/ジョンズ・ホプキンス大学

ジョンズ・ホプキンス大学キンメルがんセンターの研究者が10月26日付けScience Translational Medicine誌で報告したところによると、抗癌剤を乳頭から乳管内に投与することにより、初期乳癌の動物モデルで極めて高い効果が得られ、ヒト患者でも重度の副作用はないという。本研究の結果により、初期乳癌に対するいわゆる経乳管療法の臨床試験が進展することが期待される。

「われわれの結果は、乳腺組織への直接投与により、薬剤を必要な部位に高い濃度で到達させることができ、乳腺以外の組織の副作用を激減させられるという説を支持するものです」。キンメルがんセンター腫瘍学(乳癌)教授で乳癌プログラム共同代表の腫瘍医Vered Stearns医師はこのように話している。同氏は本研究の臨床試験部分を監督した。

「実験室と臨床の協同による典型的なトランスレーショナル医療[TA1] でした」と本研究の動物実験を監督した癌生物学者のSaraswati Sukumar医学博士は話している。

Sukumar氏はキンメルがんセンターの腫瘍学教授でStearns氏とともに乳癌プログラムの共同代表を務めており、10年以上前に経乳管治療の研究を開始した。乳癌の大半が乳管の上皮細胞由来であり、初期治療または予防的治療の方法として静脈内接種よりも乳頭経由で投与すべではないかと推測したのがその理由だ。2006年、Sukumar氏らは経乳管治療の技術を用いて初期乳管癌のラットに化学療法薬ドキソルビシンを投与する試験に初めて成功したことをCancer Research誌で報告した。

今回の研究でStearns氏は、Sukumar氏の手技の実行可能性を検証するため乳癌患者17人による小規模臨床試験を組んだ。ブドウ糖(純粋な糖の水溶液)から始め、その後Sukumar氏がラットに対して用いたのと同じドキソルビシン製剤(リポソーム化ドキソルビシン、PLD)の用量を増やした。小さいカテーテルを乳頭から挿入し乳管内に薬剤を注入することができた。本手技は癌治療のために行われたものではない。研究に参加していた患者は全員すでに乳癌があり乳房切除手術を受ける予定となっていたが、Stearns氏は乳管へのPLD単回投与量を確立することができ、その副作用は軽度の乳頭痛や乳房緊満感を来す程度であった。

PLDを経乳管投与した患者12人と標準的な静脈内投与した患者3人を比較しても違いは明らかだ、とStearns氏は話している。「PLDを経乳管投与すると静脈内投与した場合と比べ乳腺内ではるかに高い濃度を達成することができた一方、静脈内投与では血中内でこそ比較的高い濃度でしたが乳腺内ではゼロもしくはごくわずかでした」という。

本研究の動物実験部分として、Sukumar氏らの実験室において標準的な抗癌剤である5-フルオロウラシル(5FU)、カルボプラチン、メトトレキサート、パクリタキセルの経乳管投与の効果についてPLDとの比較を行った。このうち5FUの経乳管投与した場合、ほとんどの検体で未投与ラットまたは静脈内投与ラットと比べ予防効果を示した。また、5FUは乳腺の腫瘍塊も劇的に退縮させ、処置したラット14頭のうち10頭から完全に腫瘍を駆逐した、とSukumar氏は述べた。さらに、同氏は、「予防、治療いずれにおいても、今回の実験で5FUが非常に高い効果を発揮しました」と付け加えた。

5FUには他にも有利な点があり、それはPLDによる乳管の損傷を避けられることだとSukumar氏は話している。PLDは薬用量を投与した際に乳管上皮細胞の大部分を破壊してしまう可能性がある。それ以上に今回の実験でもっとも興味深いと思われるのは、ラットに12個ある乳腺のうち4個に予防的治療を行っただけで、治療を行っていない乳腺に対して強い腫瘍予防効果が得られたことだという。「5FUの乳管内投与により高い濃度を達成したことで、他の乳管における腫瘍形成を抑制するような免疫応答が引き起こされたものとわれわれは考えています」とSukumar氏は述べた。「これは非常に興味深いところです。というのも、女性の乳管の一部は乳頭とつながっていない『盲管』のような状態となっているため、経乳管療法では直接薬剤を到達させることができないからです」。

Sukumar氏とStearns氏は、次の段階は今回の新知見をもとに5FUの臨床試験を行うことと話している。経乳管療法の最終目標は、遺伝的乳癌リスクが高い患者の腫瘍、または乳管の前癌病変を抑え込むことだ。「1人の患者が乳房切除術の代替として乳腺腫瘍を予防するこの治療法を実施できるのは、原則として10年に1回程度と思われます」。Sukumar氏はこのように述べている。

本研究は米国国立癌研究所(NCI)、ウインディ・ヒル医療センター、メアリー・ケイ・アッシュ財団、スーザン・ラブ研究財団から資金提供を受けた。

Sukumar氏およびStearns氏以外に参加した研究者は次のとおり。

Tsuyoshi Mori(共同著者、現・滋賀医大)、Lisa K. Jacobs, Nagi F. Khouri, Edward Gabrielson, Takahiro Yoshida, Scott L. Kominsky, David L. Huso, Stacie Jeter, Penny Powers, Karineh Tarpinian, Regina J. Brown, Julie R. Lange, Michelle A. Rudek, Zhe Zhang and Theodore N. Tsangaris, (以上、ジョンズ・ホプキンス大学)

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橋本 仁  訳
東 光久 (天理よろづ相談所病院)監修
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原文

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