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2011乳癌シンポジウムの重要な発表の概要

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2011乳癌シンポジウムの重要な発表の概要

Caroline Helwick、2011年11月1日、2巻、16号
先日サンフランシスコにおいて、ASCO、米国放射線腫瘍学会(the American Society for Radiation Oncology)、米国外科腫瘍学会(the Society of Surgical Oncology)、米国乳腺疾患学会(the American Society of Breast Disease)、米国乳腺外科医学会(the American Society of Breast Surgeons)、および米国乳腺センター協会(the National Consortium of Breast Centers, Inc)の後援のもと、2011年乳癌シンポジウムが開かれ、多くの専門分野の専門家グループが参加した。その中のいくつかの注目すべき発表の簡単な要約を以下に報告する。

内胸リンパ節の放射線治療

内胸リンパ節の放射線治療の有用性については議論が続いている。バンクーバーのブリティッシュ・コロンビア州癌研究所(British Columbia Cancer Agency)の分析において、転移陽性リンパ節が1つから3つあったサブセットに3%の有意ではないわずかな生存利益が認められたが、内胸リンパ節領域を意図的に含めたことによる有意な差は得られなかったことを明らかにした。1

研究には早期乳癌で局所領域の放射線治療を受けた2,413人の女性が参加し、その治療が内胸リンパ節を含むものであった(n=1,000)か、あるいは含んでいなかった(n=1,413)かに従って評価を行った。平均6.2年の追跡期間において、5年無再発生存率はそれぞれ81%および82%であった。無遠隔再発生存率は各群82%で、全生存率は85%および83%であった(統計学的な有意差はなかった)。転移陽性リンパ節が1つから3つあったサブセットにおいて、内胸リンパ節の放射線治療を受けた患者の全生存率は91%、受けていない患者の全生存率は88%で、22%の有意でないリスクの減少があった。

研究結果を発表したRobert Olson医師は「内胸リンパ節の放射線治療が有効である可能性が最もあるのは、腫瘍量の少ないリンパ節転移陽性の女性である」と述べている。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部(the University of California School of Medicine, San Francisco)の医師で、この研究の公式な討論参加者であったBarbara Fowble医師は、「データに問題があると思われるが、そのことを認めても、利益がないことをこの研究は示唆している」とみている。リンパ節転移陽性患者にみられたこの3%の全生存率向上は必ずしも内胸リンパ節の放射線治療によるものではない、とFowble氏は指摘している。

年齢、病期、グレード、組織型、リンパ管浸潤、ERステータス、外科手術の種類、および全身療法を含む潜在的交絡因子を調整した後も、内胸リンパ節領域を意図的に含めたことによる有意な利益はなかった(HR = 0.95; 95% CI = 0.78-1.15; P = .57)。転移陽性リンパ節が1つからから3つあった患者サブセットの中で、内胸リンパ節の放射線治療を受けた女性は、受けていない女性に比べ、有意ではないが全生存率が優れていた(HR = 0.78; 95% CI = 0.56-1.09; P = .18)。

毒性データは示されなかったが、別の分析では内胸リンパ節の放射線治療が毒性をもたらすことが示唆されている。Fowble氏自身は、患者に陽性の内胸リンパ節があると分かっている場合にのみ内胸リンパ節の放射線治療法を用いている。

研究から乳癌の臨床所見を説明

50才以上だけではなく40代女性を含んだ女性における毎年度の検診マンモグラフィーの重要性について、ミシガン州の乳癌登録女性5,903人を対象とした分析において評価を行った3。乳癌の65%がマンモグラフィーで発見された。全乳癌の26%は50才未満の女性が占め、マンモグラフィーにおいて癌が発見された割合は臨床検査あるいは自己検査で発見された割合と同等であった(前者46%、後者54%)。マンモグラフィーで腫瘍が発見された患者と比較すると、触知腫瘤がみられた患者の触知腫瘤はより遅いステージにおいてみられ(ステージIIで50% vs 18%)、化学療法および乳房切除を受ける割合も多かった(化学療法:22.7% vs 15.7%、乳房切除:45.8% vs 27.1%)。

米国予防医療作業部会(USPSTF)は2009年に、50才前の定期検診受診およびあらゆる年齢において乳癌の自己検診について教えることに対して否定的な勧告を行っており、また乳房臨床検査のエビデンスは不十分であるとの立場を保っている。以上の勧告を受けて、ミシガン州コホートの42%がこの検診に関する勧告案に影響されている可能性がある。

ミシガン州グランド・ラピッズにあるラックスがんセンター(Lacks Cancer Center)のJamie Caughran医師は、記者会見において、その研究がUSPSTFのガイドラインと相反するかどうかについて述べることは避けたものの、USPSTFのガイドラインが検診受診者集団を対象に調査しているのと違い、登録者集団は乳癌と診断された女性であることから「マンモグラフィーで腫瘍が発見された場合には化学療法を受ける可能性が低くなるので、我々は40才から毎年検診マンモグラ―フィーを受けることを今後も薦める人達を支持するつもりだ」と述べた。

この記者会見の司会を務めた、メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(Memorial Sloan-Kettering Cancer Center)のAndrew Seidman医師は、議論は続くだろうが、検診の別の重要な効果、つまり化学療法の必要性が減ることを研究は物語っている、と述べている。「潜在的な生存利益と切り離しても、これは非常に重要な利益である」とSeidman医師は述べている。

ノモグラムによるリンパ浮腫の予測

リスク因子に基づいた一連の新しいノモグラムにより、女性における腋窩リンパ節郭清後のリンパ浮腫発生の可能性を予測することが可能であるとブラジルの研究者らが発表した4。研究者らは、腋窩リンパ節郭清を受けた乳癌患者1,054人を追跡し、いくつかのリスク因子に従ってリンパ浮腫の発生について評価を行った。研究者らは、それぞれ異なる時点(術前、術後6ヶ月以内、術後6ヶ月以上)において用いることが可能な3つのモデルを開発した。モデルには年齢、BMI値、術前あるいは術後化学療法の施行回数、腋窩リンパ節郭清の程度、放射線治療領域の場所、および術後における漿液腫および初期浮腫の発生が含まれた。

腋窩リンパ郭清後5年以内に、30.3%の女性においてリンパ浮腫が発生した。モデルに含まれるすべてのリスク因子がリンパ浮腫の発生と有意に関係しており、精度は70%から74%であった。研究者らはこのモデルを無料の使いやすい計算機の形に既にしており、研究結果の正式な公表後に公になるであろう。

2011年乳癌シンポジウムにおける重要な研究結果
・ブリティッシュ・コロンビア州癌研究所の患者分析において、内胸リンパ節の放射線治療による転帰の改善はなかった;転移陽性リンパ節が1つから3つある女性集団においては、有意ではない、中程度の生存率の改善があった。
・大人数で構成されたミシガン州登録者において、40代女性における毎年の検診マンモグラフィー、同様に臨床検査および乳房自己検査の重要性が示された。
・リスク因子に基づいたノモグラムにより女性における腋窩リンパ節郭清後のリンパ浮腫の発生の可能性を予測することができる。

開示:利害対立の可能性がないことをOlso氏、Fowble氏、Caughran氏、およびSeidman氏は報告している。

参照:

1. Olson RA, Woods R, Lau J, et al: Impact of internal mammary node inclusion in the radiation treatment volume on the outcomes of patients with breast cancer treated with locoregional radiation after six years of follow-up. 2011 Breast Cancer Symposium. Abstract 81. Presented September 8, 2011.

2. Revesz E, Zalles CM, Ivancic D, et al: Relationship of recent pregnancy and cytologic atypia in the contralateral breast of patients with breast cancer. 2011 Breast Cancer Symposium. Abstract 149. Presented September 9, 2011.

3. Smith DR, Caughran J, Kreinbrink JL, et al: Clinical presentation of breast cancer: Age, stage, and treatment modalities in a contemporary cohort of Michigan women. 2011 Breast Cancer Symposium. Abstract 1. Presented September 8, 2011.

4. Bevilacqua JB, Kattan MW, Yu C, et al: Nomograms for predicting the risk of arm lymphedema after axillary dissection in breast cancer. 2011 Breast Cancer Symposium. Abstract 8. Presented September 8, 2011.

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金井太郎 訳
原 文堅 (乳腺科/四国がんセンター) 監修
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原文

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