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癌と戦うp53タンパク質の敵を低分子薬が無力化する/M.D.アンダーソンがんセンター

  • 2011年12月18日

初段階の臨床試験で、RG7112薬剤が白血病患者のMDM2を無力化させることが見出された。
M.D.アンダーソンがんセンター
2010年12月7日

腫瘍抑制因子としてよく知られている、p53を無力化するタンパク質であるMDM2を機能停止に追い込む低分子薬の白血病に対する有効性について、先駆的な臨床試験が実施されている。

テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンター医学部教授であり白血病部門(Department of Leukemia)分子血液学・治療教室(Molecular Hematology and Therapy)室長であるMichael Andreeff医学博士が、第52回米国血液学会年次総会において、進行中の第1相試験に関する初回結果の発表を行った。この臨床試験は現在M.D.アンダーソンがんセンターの他、米国および英国の5つの施設で実施されている。

この新薬の臨床効果は複数の患者で認められ、忍容性も良好ですとAndreeff氏は語った。

Andreeff氏はMDM2とp53との相互関係を5年間研究してきた。この研究がある種の癌に対して、副作用のより少ない有効な新規治療法に結びつくと信じていると、彼は語っている。

「p53は化学療法や放射線治療によって活性化されますが、どちらの治療も二次癌の発症リスクを伴います。遺伝毒性がなく患者のDNAに損傷を与えない方法でこの腫瘍抑制因子を活性化できたら、他の治療法で引き起こされる二次癌の発症を回避できるかもしれません。」と彼は述べた。

過剰のMDM2がp53を分解する

通常、p53は損傷を受けた細胞の細胞分裂を停止させアポトーシスへと追いやるか、その細胞分裂機能を奪う。しかし、多くのタイプの癌で腫瘍抑制因子は機能不全に陥っており、この原因の多くは遺伝子変異もしくはシグナル異常によるものである。

血液癌でTP53遺伝子の変異はまれであるが、高濃度MDM2や他の要因により、p53が分解されることも考えられる。MDM2はp53に結合し、分解を促進する。

これまでの研究から、MDM2のp53への結合阻害によるp53活性化、という新規癌治療戦略が発案された。前臨床試験では、ニュートリン(Nutlin)と呼ばれる低分子MDM2拮抗薬が、固形腫瘍、白血病、リンパ腫に奏効することが示された。

本試験で用いられたRG7112薬剤は、Roche社が開発した新規低分子薬であり、ニュートリン・ファミリーに属する。

観察される臨床効果

再発性もしくは難治性の急性・慢性白血病患者に対して、10日間RG7112を毎日経口投与し、その後18日間の休薬期間を置いた。27人の急性骨髄性白血病(AML)を含む47人の患者は現在でも治療を続けている。

臨床効果を示す科学的根拠も認められており、1人のAML患者には9カ月間、白血病症状が見られなかった。慢性リンパ性白血病(CLL)患者と小リンパ球性リンパ腫(SLL)患者では、リンパ節と脾腫も縮小し、循環血液中の白血病細胞数も減少した。

「RG7112薬剤の忍容性は良好で、有効性も見られます。これまでのところ、われわれが想定していた通りのことが起こっています。これは、患者にも投与できるという科学的証拠を示すものです。忍容性が良好ですので、より高い奏効率が望める投与量に増量して投与することも可能です。」とAndreeff氏は述べた。

次の段階

本試験の被験者登録が現在進行中であり、今後更新される。今後、各種の白血病に対するRG7112薬剤の単剤投与試験と併用試験が計画されている。

Andreeff氏の共著者は、小島研介医学博士(M.D.アンダーソンがんセンター、白血病部門、分子血液学・治療教室)、Susan O’Brien医師(M.D.アンダーソンがんセンター、白血病部門)、GautamBorthakur医師(M.D.アンダーソンがんセンター、白血病部門)、Marina Konopleva医学博士(M.D.アンダーソンがんセンター、白血病部門)、Felipe Samaniego医師(M.D.アンダーソンがんセンター、リンパ腫・骨髄腫部門)、SwaminathanPadmanabhan,医師(テキサス大学サンアントニオ健康科学センター)、Roger Strair医師(ニューブランズウィック、ニュージャージーがん研究センター)、Mark Kirschbaum医師(カリフォルニア、ドアルテ、シティー・オブ・ホープ国立医療センター)、Peter Maslak医師(ニューヨーク、メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター)、Peter Hillmen医学士・外科学士(MBChB)医学博士(英国、リーズ、セント・ジェームズ大学病院)、LyubomirVassilev医学博士(ニュージャージー、ナットリー、Roche社)、Gwen Nichols医師(ニュージャージー、ナットリー、Roche社)である。

本研究でAndreeff氏は、Roche社から一部資金提供を受け、米国国立がん研究所からは助成金を受けた。

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窪田美穂 訳
峯野 知子 (分子薬化学)高崎健康福祉大学薬学部 監修
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原文


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