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2011/12/13号◆スポットライト「米国医学研究会が乳癌と環境の関係について発表」

  • 2011年12月20日

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年12月13日号(Volume 8 / Number 24)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ スポットライト ◇◆◇

米国医学研究会が乳癌と環境の関係について発表

12月7日、米国医学研究会(IOM)が乳癌と環境:ライフコースアプローチ(Breast Cancer and the
Environment: A Life Course Approach
)と呼ばれる報告を2011年サンアントニオ乳癌シンポジウムにて発表した。乳癌団体であるSusan G. Komen for the Cureの科学諮問委員会から依頼され、その分野の専門家15人からなる委員会が実施した20カ月に及ぶ調査の結果が報告された。

IOM委員は「乳癌に対する環境曝露の影響に関する現行のエビデンスを、環境単独および遺伝的要因との組み合わせの両方から再考すること、現在行われているこの種の研究における課題を検討すること」を依頼された。記者会見で司会を務めた委員会のカリフォルニア大学デービス校Dr. Irva Hertz-Picciotto 氏は、この報告書についてこのように述べた。さらに、IOM委員はKomen諮問委員会から「リスクを減らすために実行しうるエビデンスに基づいた方法を探索し、未来に向けて研究を推奨するよう依頼された」と続けた。

IOM委員は「環境曝露」をDNAから直接遺伝するものではないすべての要因と定義した。乳癌の一般的なリスク因子として認められているものの中で、電離放射線、閉経後女性に対するエストロゲン‐プロゲスチンホルモン療法、閉経後の体重増加などには、強力なエビデンスがある。また結論の中で、身体的活動は乳癌を予防する可能性があることを確認し、リスクを減らすために女性ができることの概要について述べている。

「委員が再調査した最も強力なエビデンスのいくつかは、電離放射線に関連した乳癌リスクの増加でした。医療行為としてのX線が一般的な放射線源として増加しつつあり、特に若い女性では、X線画像診断は有益性の証明された状況に限り最小限に実施し、蓄積放射線量をモニタリングすることが重要であると強調しています」とNCI癌予防部門主任でIOM委員の一員であるDr. Barry Kramer氏は述べた。

委員会は医療放射線曝露に対する懸念は、主にCTスキャンのような一部の高線量医療処置を対象としている点を強調した。マンモグラフィや歯科領域のX線など、他の一般的な医療処置には低線量電離放射線を用いるため、治療上勧められた場合にこれらの低線量医療までも避けることを推奨しているのではない、とあらためて主張した。

「エビデンスは乳癌リスクを実質的に減らす機会があることを示唆しています。これらの行為が女性各個人にもたらすリスク減少の可能性は、それぞれの女性によって異なるでしょうが、その行為はささいな、または普通のことかもしれません」とPicciotto氏は述べた。

また乳癌リスクを減らすために行った行為が、意に反して他の疾患リスクを増加させてしまう危険性がある、と委員会のメンバーは説明した。これらの矛盾が知られている例として、抗癌剤タモキシフェンは乳癌リスクを減らすことができるが、同時に子宮内膜癌リスクを増加させる。他の矛盾として、発癌性の疑いのある化学物質、たとえばビスフェノールA(BPA)などへの曝露を避けたために、他の同等またはそれ以上のリスクを有する化学物質に曝露されるかもしれないということに関してはまだ確認されていない。

調査の方向性

報告では、乳癌リスクの研究には多くの課題が存在することを強調し、例えばリスクに影響を与えるかもしれない曝露のなかには女性の人生の初期、子宮内の胎児期でさえも生じる可能性があることをあげている。報告書は、成熟期以降だけでなく全生涯に渡るあらゆる時期において曝露検査をし、さらに乳癌リスクの研究に対し集学的アプローチをとることを推奨している。また可能性のあるリスク要因への曝露を正確に集積し、化学物質や他の物質の発癌リスクを試験するための、疫学的調査の新しい手法も構築中であることを強調した。

ヒト対象研究データは、しばしば応用できないかまたは結論に達していないことがあるため、委員会は乳癌リスクの疑われる多数の化学物質と関連する強力なエビデンスを確認していない。ただ、ベンゼン、1,3-ブタジエン、エチレンオキサイドのみが乳癌リスクの上昇に「関与する可能性あり」と確認されている。BPAや他の化学物質のいくつかは「危険有害性物質として生物学的妥当性あり」とされたが、癌リスクとの関連性を確認したヒトを対象とした研究は存在しない。

「従来から、(動物モデルで)実施されてきた癌の生物学的測定の多くは、幼い時の曝露から開始しており、より早い時期や子宮内あるいは乳房成長の主要な時期の曝露は測定していません」と委員メンバーであるワシントン大学のDr. David Eaton氏 は述べた。「最近の試験ではライフステージを考慮していますが、過去に試験された化学物質の多くは、重要と思われるごく初期の曝露が含まれていないことを理解しておかなければなりません」。

「環境曝露に対する脆弱性のいくつかは、たとえば発生段階など人生のかなり初期に限って起こります」と、テキサスA&M健康科学センターのDr. Cheryl Lyn Walker氏は同様の見解を示した。

「もし理想的な研究を考えるなら、出生時から各個人を対象とするコホート研究を行いその一生を通して経過観察を継続することになるでしょう」と委員会メンバーの一人カリフォルニア大学サンフランシスコ校のDr. Robert Hiatt氏はつけ加えた。さらに、そのようなコホート研究は経費やその他の問題から実現困難であることから、動物モデルとヒト疫学研究のよりすぐれた統合解析が必要であると述べた。

別途進行中の取組み

また、国立環境衛生科学研究所(NIEHS)はNCIと協力し、乳癌に関する環境因子と遺伝因子の研究について今後の方向性を検討中である。2010年9月、政府共同機関Interagency Breast Cancer and Environmental Research Coordinating Committee(IBCERCC)のメンバー19人が議会から任命され、政府関係機関により実施または支援されたあらゆる乳癌研究の再検討を開始した。

「(IOMとIBCERCC)どちらの報告も乳癌と環境に関する最先端科学と、今後の研究に対する推奨を再検討した内容を含むでしょう。しかしIBCERCCは、政府機関全体と他の研究共同機関にまたがる環境因子と乳癌リスクに対する研究の取り組みを、いかに連携させ促進させるかということについて勧告の作成を要請されたのです」とNCI癌制御・人口学部門次長でありNCIでIBCERCCの活動を指導するDr. Debbie Winn氏は説明した。

「わたしたちはこの勧告を作成するに当たり今までの研究、特にこのIOMのように信頼性の高い報告や評価を徹底的に調査しました」とつけ加えた。IBCERCCはこの結果について2012年の初夏までに公開したい考えである。

Sharon Reynolds

[写真下]IOMは12月7日、乳癌と環境に関する最近のエビデンスを報告した;

[右枠内]乳癌リスクを減らす可能性があること

・不適切な医療被曝を避ける。
・治療的妥当性がない限り、閉経後のホルモン混合療法を避ける。
・禁煙する、受動喫煙を避ける。
・アルコール摂取を少量にとどめるか止める。
・身体的運動を継続的に行うまたは増やす。
・閉経後のリスクを減らすために健康的な体重を維持する、または健康に適した体重にコントロールする。
・乳癌リスクを高める疑いのある化学物質への曝露は、職場、消費、環境いずれの場合においても根絶または最小限にくいとめる。同時に代替品のリスクも考慮に入れる。
・もし乳癌のハイリスク群に当てはまるならば化学予防を考慮する。

乳癌と環境:ライフコースアプローチ~より(Breast Cancer and the Environment: A Life Course Approach
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武内 優子 訳
原 文堅(乳腺科/四国がんセンター )監修
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