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p53を無力化するタンパクにより乳腺細胞が癌化/M.D.アンダーソンがんセンター

  • 2011年12月31日

乳癌ではTRIM24の高発現が多く、予後不良に関連している。
M.D.アンダーソンがんセンター
2010年12月15日

最近同定されたTRIM24タンパクは正常な乳腺細胞の急速な細胞増殖を促す働きを担っているが、潜在的には癌化にも関与している。
「Nature」誌の報告によれば、テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターの研究者らのチームはTRIM24(tripartite motif-containing 24)タンパクがエストロゲン感受性遺伝子の発現を後押しすることを突き止めた。この発現を受けて、乳腺細胞は悪性化しやすい状態になる。TRIM24は、エストロゲン応答遺伝子上の特定のコード、もしくはシグナルを読み取り、エストロゲン受容体を介して遺伝子を活性化させる。乳癌の約70%がエストロゲン受容体陽性であり、このタイプの乳癌細胞はエストロゲン・ホルモンにより増殖が促される。

破砕するためにラベルした腫瘍抑制因子
TRIM24はクロマチン制御因子であり、細胞にストレスがかかったりDNA損傷が起こらない限り、通常は腫瘍抑制因子であるp53を低濃度に保つ働きをしている。しかし、TRIM24が異常発現すると、p53が過度に抑制され、細胞は傷つき易くなり、ひいては癌化につながっていく。(さらに)高濃度のTRIM24でエストロゲン受容体も活性化されるため、乳腺細胞は細胞増殖と成長促進の両方の脅威にさらされるのである。

「われわれはp53をユビキチンでラベル(して、そのp53が破壊されることを確認)することで、TRIM24がp53に対して抑制的に働いていることを発見しました。」とM.D.アンダーソンがんセンター生化学・分子生物学部門教授のMichelle C. Barton博士は述べた。「TRIM24の構造ドメインのうち2つは、おそらくヒストン、即ちDNAを小さく巻きつけてクロマチンにするタンパク、と相互作用しているようです。TRIM24はヒストン表面にある、まるでバーコードのような機能を果たす特異的修飾部位を読み取ります。ちなみにわれわれはこれをヒストン・コード、あるいはヒストン・バーコードと呼んでいます」。TRIM24はヒストン修飾が意味する特異的バーコードを読み取り、遺伝子を活性化させるかどうかといった指示を受け取るのだ。

Barton氏はさらに、これらの構造ドメインは、TRIM24がヒストン・コードを単に読み取っているだけでなく、ヒストン・バーコードにある通常はめったに見られない暗号も現に解読していることを示唆していると述べた。この異常なヒストン・シグナルは、エストロゲン応答配列−エストロゲン受容体と結合するDNAに存在する−に出現し、TRIM24により過剰刺激を受ける種々のエストロゲン応答遺伝子を制御している。これらの遺伝子により、細胞増殖状態に陥り、おそらく腫瘍化にもつながるのだ。

TRIM24の過剰発現は生存率を低下させる
研究者らが数々の乳癌細胞株を調べたところ、TRIM24の過剰発現はどの細胞株でも認められることがわかった。「基本的に、TRIM24は正常細胞では検出できません。ですから、(TRIM24が)過剰発現していること自体、すでにp53が抑制され、エストロゲン受容体が過剰刺激され、そして細胞増殖が起こっている状態なのだ、と我々は考えています。」とBarton氏は述べた。

M.D.アンダーソンがんセンター分子細胞腫瘍学部門の責任者であるMien-Chie Hung博士との共同により、乳腺細胞の増殖と腫瘍生成に果たすTRIM24の役割に関する研究がさらに深められた。病理学者のWeiya Xia氏が乳癌患者128人の生検所見に関するスクリーニングを行ったところ、TRIM24の過剰発現が認められた患者は70%であった。これらの患者における全生存率の中央値は50カ月−すなわち患者の半数が少なくとも50カ月以上生存したという意味になる−であった。

30%の女性患者では、TRIM24は検出不能、もしくは非常に低濃度であった。これら2つの患者群では乳癌は非転移性であり、90%の患者が50カ月間生存していた。

今後の研究動向
「我々はTRIM24が一つのすぐれた治療標的になるだろうと言いたいのです。なぜなら、もしあなたがTRIM24を消滅させるか不活性化させることができれば、乳癌細胞の中でp53の機能を再開させ、エストロゲン受容体の機能も低下できるのですから」、とBarton氏は述べた。「(また)エストロゲン受容体(ER)陰性腫瘍なら、p53でいけるチャンスがあるし、p53陰性の乳癌ならエストロゲン受容体いけるかもしれません」。
続けてBarton氏は、「われわれはTRIM24が腫瘍の発達を促進すると主張しています。現在われわれはマウス・モデルで、乳腺上皮細胞にTRIM24の過剰発現させる実験を行っています」と述べた。

本研究は米国国立衛生研究所、George and Cynthia Mitchell財団、中国医科大学および同付属病院のSister Institution Fund、スター財団、白血病リンパ腫協会、マックス・プランク協会、Sowell-Huggins財団からの資金提供を受けた。

Barton氏の共著者は以下である。本記事中のXia氏はとHung 氏は、M.D.アンダーソンがんセンターの生化学・分子生物学部門の遺伝子発達プログラムおよび生物医学化学大学院所属のWen-Wei Tsai, Teresa Yiu医学博士とXiaobing Shi医学博士である。 また、M.D.アンダーソンがんセンターの癌エピジェネティクスセンターおよび幹細胞発達生物学センター所属のKadir Akdemir氏、メモリアル・スローン・ ケタリング癌センター構造生物学プログラム所属のZhanxin Wang医学博士、メモリアル・スローン・ ケタリング癌センター構造生物学プログラム所属のDinshaw Patel医学博士、ドイツ・ゲッティンゲンのマックス・プランク生物物理化学研究所クロマチン生化学研究室所属のStefan Winter医学博士、ドイツ・ゲッティンゲンのマックス・プランク生物物理化学研究所クロマチン生化学研究室所属のWolfgang Fischle医学博士、M.D.アンダーソンがんセンター実験的治療部門所属のCheng-Yu Tsai医学博士、M.D.アンダーソンがんセンター実験的治療部門所属のWilliam Plunkett医学博士、ドイツ・ベルリンのライプニッツ分子薬学研究所の化学生物学・タンパク質化学部門所属のDirk Schwarzer医学博士、シンシナティ小児病院医療センターのコンピュータ医療センター所属のBruce Aronow医学博士、スタンフォード大学生物化学科所属のOr Gozani医学博士も共著者である。

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窪田美穂 訳
大淵俊朗(呼吸器・乳腺内分泌・小児外科/福岡大学医学部) 監修
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原文


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