赤血球中葉酸濃度が高まると腫瘍抑制因子の抑制につながる/M.D.アンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

赤血球中葉酸濃度が高まると腫瘍抑制因子の抑制につながる/M.D.アンダーソンがんセンター

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赤血球中葉酸濃度が高まると腫瘍抑制因子の抑制につながる/M.D.アンダーソンがんセンター

本研究では、遺伝子のメチル化に対するサプリメント摂取その他の影響が検討された。
M.D.アンダーソンがんセンター
2010年12月22日

M.D.アンダーソンがんセンター・ニュース・リリース(2010年12月22日)
赤血球の葉酸濃度が高い人は、2つの腫瘍抑制遺伝子がメチル化−−遺伝子機能の化学的なスイッチオフ−−により機能停止に至る傾向が強いという報告が「Cancer Prevention Research」誌の12月号に掲載された。
DNAの過剰メチル化はさまざまな癌や心疾患等の加齢疾患に認められると、共著者であるM.D.アンダーソンがんセンター白血病部門所属のJean-Pierre Issa医学博士は述べた。メチル基は遺伝子のCpGアイランドと呼ばれる部位に付着してタグやしおりのようにプロモーター領域から突き出ており、遺伝子発現を阻害する。

「われわれが新しく得た知見は、赤血球(RBC)中の葉酸濃度の高感度測定からわかったように、葉酸の血中濃度が高いこととDNAメチル化レベルが高いことには関連があるということです」とIssa氏は語った。
葉酸(folate)はDNAの生成、修復、機能に係る天然のビタミンBであり、赤血球の生成にも係っている。葉酸欠損症の妊娠女性は神経管欠損症の児を出産するリスクが高くなる。神経管欠損症は胎児の発育期に脊髄や脳が完全に閉鎖されないために起こる。

葉酸は葉物の野菜、果物、乾燥豆中に含まれる。米国食品医薬品局(FDA)の指導により、1998年以降、合成葉酸(folic acid)がパン、シリアル、小麦粉、パスタ、米、その他の穀物製品に添加されるようになった。米国疾病管理予防センターによれば、このおかげで米国における神経管欠損症の発症率は下がった。

また葉酸はサプリメントとしても摂取される。一日の推奨摂取量は成人男性・女性では400μgであり、妊娠を控えた女性はさらに400μgを追加摂取するとよい。

葉酸の癌に対する影響は従来、主に予防的なものと考えられてきたが、大腸癌、前立腺癌、その他の癌腫では葉酸摂取が癌化を促すという所見が発表されたため、最近ではそれほど明確なものではなくなってきている。

研究班は正常大腸組織におけるDNAメチル化に関して、葉酸血中濃度と食事およびライフスタイルに関する諸因子との関連を分析した。葉酸とアスピリンの前癌性大腸ポリープ予防効果を比較する主試験から781人の患者が登録された。
人口統計学的事項やライフスタイルおよび食事に関する情報が収集され、2つの腫瘍抑制遺伝子のメチル化に関して、試験開始時と3年後の大腸内視鏡検査結果が比較された。

ERα遺伝子およびSFRP1遺伝子は正常な大腸組織で発現するが、大腸癌ではメチル化により発現が抑制されている。また、この2つの遺伝子は乳癌、前立腺癌、肺癌組織でもメチル化されていることが判明している。

加齢はメチル化亢進に強く結びついており、この知見は長年の研究成果を確証するものである。また、メチル化レベルは直腸と右側結腸の間でもばらつきがあり、それぞれの遺伝子のメチル化レベルは民族間でも異なる。

葉酸治療もアスピリン治療もメチル化レベルとの有意な関連性は認められなかった。しかし、赤血球中葉酸濃度はどちらの遺伝子に対してもメチル化レベルと関連しており、赤血球中葉酸濃度が高い方からみた患者の4分の1と低い方からみた4分の1を比較したところ、有意な違いが認められた。赤血球中葉酸濃度は長期にわたる葉酸摂取と密接に関連している。

「これらの違いは些細なものではありません。赤血球中葉酸濃度が高い人にとってみれば10年余計に年を取ったようなものです」とIssa氏は述べた。

「今回懸念されることは、余分な葉酸を長期間摂取することにより、DNAのメチル化がさらに進むかもしれないということです。潜在的に癌やその他の加齢疾患の発症リスクを高めて、余計な疾患に罹ってしまうかもしれません」とIssa氏は述べた。

「現段階での葉酸サプリメントに関するデータは非常に曖昧なものなので、私個人としては、葉酸サプリを飲んでいる人は考え直する必要があると思っています」とIssa氏は述べた。「また、その他のデータも加味したうえで、このような発見を契機に、みなが葉酸を余分に摂取しなければならないという現在の米国の方針について再考すべきです」。

本研究は米国国立癌研究所からの助成金を得て行われた。

Issa氏の共著著者は、筆頭著者であるダートマス医科大学院所属のKristin Wallace医学博士と、Maria V. Grau医師(ダートマス医科大学院)、Jiang Gui医学博士(ダートマス医科大学院)、Elizabeth Barry医学博士(ダートマス医科大学院)、John Baron医師(ダートマス医科大学院)、A. Joan Levine医学博士(南カリフォルニア大学ケック医学部)、Robert W. Haile医師(南カリフォルニア大学ケック医学部)、Lanlan Shen医学博士(M.D.アンダーソンがんセンター白血病部門、エピジェネティクス・センター)、Randala Hamdan氏(M.D.アンダーソンがんセンター白血病部門、エピジェネティクス・センター)、Xinli Chen氏(M.D.アンダーソンがんセンター白血病部門、エピジェネティクス・センター)、Dennis Ahnen医師(コロラド大学デンバー校医学部)、Gail McKeown-Eyssen医学博士(トロント大学Dala Lana公衆衛生学部)である。2010年12月22日現在。

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窪田美穂 訳
野長瀬祥兼(工学/医学)監修
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原文


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