脂肪細胞への血液供給を標的とする薬物によりサルの肥満が改善/MDアンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

脂肪細胞への血液供給を標的とする薬物によりサルの肥満が改善/MDアンダーソンがんセンター

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脂肪細胞への血液供給を標的とする薬物によりサルの肥満が改善/MDアンダーソンがんセンター

標的薬が肥満の新しい治療選択となるか

MDアンダーソンがんセンター

2011年11月9日

肥満のアカゲザルを対象に、選択的に脂肪組織への血液供給を攻撃する試験薬物を用い4週間治療を行ったところ、平均11%体重が減少したことが、テキサス大学MD アンダーソンがんセンターの研究者ら主導のチームによりScience Translational Medicine誌に報告された。

またこの薬物により、肥満指数(BMI)、腹囲(ウエストライン)とも減少したが、治療していないコントロール群のサルでは3項目とも変化がみられなかった。画像診断もまた治療群では体脂肪の大幅な減少を示した。

「この薬物をヒトに応用すれば外科的手段を施すことなく,蓄積した白色脂肪を実際に減らすことができ、食欲コントロールや食物中の脂肪吸収阻害を目的とした現在の体重減少薬とは異なる効果をもたらすであろう」と主席共著者でMD アンダーソンDavid H. Koch泌尿生殖器癌応用研究センター(David H. Koch Center for Applied Research of Genitourinary Cancers)の教授であるRenata Pasqualini博士は述べた。

研究者らによると、これまでの肥満治療法は、主に食欲抑制あるいは代謝亢進を目的とする薬物が中心であったが、これらはその有害な副作用により開発が困難であった。MD アンダーソンの研究グループは脂肪を支持する血管表面のタンパク質と結合するホーミング物質と,細胞死を誘導する合成ペプチドを含む新規薬物をデザインした。この薬物により脂肪細胞への血液供給は阻害され、脂肪細胞は再吸収、代謝される。

「肥満は癌発生の主要な危険因子である。その危険率は喫煙とほぼ同程度であり、どちらも改善可能である」と、Koch センターの教授でもある主席共著者のWadih Arap医学博士は述べた。「肥満の癌患者は手術を行い難く、放射線治療や化学療法においてもーどんな方法もうまくいきがたい」

サルは自然に太る
初期臨床前試験において、現在アディポタイド(Adipotide)と呼ばれる薬物の投与により肥満マウスは約30%体重が減少した。その薬物は、白色脂肪組織-皮下および腹部周囲に蓄積し,疾病を引き起こす健康に悪いタイプの脂肪の科学的名称-に作用する。

「抗肥満薬物のほとんどが齧歯類から霊長類への移行に失敗する」とPasqualini氏は述べた。「肥満齧歯類モデルはいずれも、その代謝と中枢神経系による食欲と満腹感の調整がヒトを含む霊長類とはかなり異なることが難点である。そこでわれわれはヒトの条件とほぼ一致した霊長類モデルにおいて実質的な体重減少を確認することに積極的に取り組んだ」

今回の試験に用いたアカゲザルは「自然に」太る、とMDアンダーソン Keeling 比較医学研究センター(Keeling Center for Comparative Medicine and Research:テキサス州バストロップ)の獣医臨床病理医であり筆頭著者のKirstin Barnhart獣医学博士は述べた。体重過多にさせるための特別な措置は必要なかった。サルは同じコロニー内の他のサルと同じ食物を過食し、運動しないだけで自然と体重が増加した。

肥満に関する更なる問題
この霊長類モデルはまた、ヒトの肥満に合併して起こる他の生理学的特徴を示す。たとえばメタボリックシンドロームで、インスリン抵抗性の増加により2型糖尿病や心血管疾患発症の原因となりうるアディポタイドを投与したサルはインスリン抵抗性が著明に改善し、治療後のインスリン投与量は約50%減少した。

Arap氏と Pasqualini氏およびその共同研究者らは、肥満の前立腺癌患者を対象にアディポタイドを連続28日間注射する臨床試験を準備中である。「体重とそれに関連する健康上のリスクを減らすことができれば、患者の前立腺癌の改善につながるかどうかが課題である」とArap氏は述べた。

前立腺癌の治療には、ホルモン療法など体重増加をきたすものもある。体重が増加すると関節炎を生じやすく、それが原因で運動不足となりさらに体重が増加するという悪循環を生む可能性があるとArap氏は述べた。また脂肪細胞は,癌細胞の増殖を促す成長ホルモンを分泌する。

全身および腹部脂肪は減少し、可逆性の腎臓への副作用を伴う
体重、BMIおよび腹囲はすべて治療終了後3週間持続的に減少し、経過観察4週目の期間中に徐々に戻り始めた。

疾患発症リスク増加の観点から、ヒトの体重が増加した場合に最も危険な部位であると考えられる腹部体脂肪の測定を、磁気共鳴画像診断(MRIでおこなった。治療群のサル腹部脂肪率は試験期間中27%減少し、コントロール群ではわずかに増加した。

肥満でない動物に対するこの薬物の影響を調査するため実施した別の試験によると、やせたサルでは体重減少は認められなかったことから、この薬物の効果は肥満物質個体に対して選択的であることが示された。

試験期間中サルは活発かつ敏捷性を保ち、飼育者に対する行動も良好で、吐き気や食事を避ける様子は見られなかった。腸からの脂肪吸収を抑制する承認薬剤は、好ましくない副作用により使用が制限されていることから、この結果は重要であろう。

主要な副作用としては腎臓に関するものがあげられた。「腎臓への影響は用量依存性で、予測可能かつ可逆性であった」とBarnhart氏は述べた。

血管ZIPコードによる2番目の薬物開発
本研究で用いた薬物はArap氏とPasqualini氏の研究室で血管マッピングにより作成された2番目の薬物である。彼らは血管が循環系における「パイプライン」として一様に体中に存在するだけでなく、それが供給する臓器、組織によって異なることを発見した。

彼らはタンパク質の小単位であるペプチドのスクリーニング法を開発し、ヒトの血管地図に出現している多数の可能性のある「ジップ コード(郵便番号)のうち、特定の血管細胞と結合するペプチドの同定を可能とした。脂肪細胞を支持する血管の標的タンパク質プロヒビチンは、その血管細胞表面に大量に異常発現していることを彼らは突き止めた。

「最近われわれのグループが報告したように、マウスとサルに適用された同じデリバリーシステムは、ヒトにおける白色脂肪でも最近確認されている」とArap氏は述べた。

前立腺癌への血液供給を標的とする、異なる分子アドレスを持つ開発初期段階の薬物を用いた、初めてのヒト対象臨床試験の評価がMDアンダーソンにおいて終了したばかりである。

MDアンダーソン、 Arap 氏 Pasqualini,氏を含む研究者らと、施設方針下で特別な制限事項に従う製薬会社Alvos Therapeutics社とAblaris Therapeutics社とは公正な立場を取る。MDアンダーソンはその利益相反ポリシーに従いこれらの契約条件を監督、監視する。

Barnhart氏、Arap氏、 Pasqualini氏以外の共著者は以下のとおりである。
Dawn Christianson and Wouter H.P. Driessen, Ph.D., both of the Koch Center and MD Anderson’s Department of Genitourinary Medical Oncology; Patrick Hanley, D.V.M., Bruce Bernacky, D.V.M., and Wallace Baze, D.V.M., Ph.D., of the Keeling Center and MD Anderson’s Department of Veterinary Sciences; Sijin Wen and Kim-Anh Do, Ph.D., of MD Anderson’s Department of Biostatistics; Mei Tian, M.D., Ph.D., and Juri Gelovani, M.D., Ph.D., of MD Anderson’s Department of Experimental Diagnostic Imaging; Jingfei Ma, Ph.D., of MD Anderson’s Department of Imaging Physics; Mikhail Kolonin, Ph.D., of the Brown Foundation Institute of Molecular Medicine for the Prevention of Human Disease at The University of Texas Health Science Center at Houston; Pradip Saha, Ph.D., and Lawrence Chan, M.D., D.Sc. of the Department of Medicine and the Department of Molecular and Cellular Biology at Baylor College of Medicine; and James Hulvat of Ablaris Therapeutics in Pasadena, Calif.

本研究は以下の助成金から資金提供を受けた。 National Institutes of Health, the National Cancer Institute, AngelWorks, the Gillson-Longenbaugh Foundation, the Robert J. Kleberg, Jr. and Helen C. Kleberg Foundation, The Marcus Foundation, Inc.and the Prostate Cancer Foundation

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武内 優子 訳
廣田 裕 (呼吸器外科/とみます外科プライマリーケアクリニック) 監修
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原文

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