[ 記事 ]

2011/11/29号◆癌研究ハイライト「腫瘍専門医アンケート調査―進まぬ癌の疼痛管理」「HPVワクチン有効性と交叉防御能」「前立腺神経内分泌癌の遺伝子研究」

  • 2011年12月6日

同号原文

NCI Cancer Bulletin2011年11月29日号(Volume 8 / Number 23)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
PDFはこちらからpicture_as_pdf

____________________

◇◆◇ 癌研究ハイライト ◇◆◇

・腫瘍専門医アンケート調査―進まぬ癌の疼痛管理
・試験で確認されたHPVワクチンの有効性と交叉防御能
・前立腺神経内分泌癌に関する遺伝子研究からの手かがり

腫瘍専門医アンケート調査―進まぬ癌の疼痛管理

米国の腫瘍専門医は癌の疼痛管理について十分な教育を受けておらず、最適な疼痛管理を行うことに多くの障壁を感じていることが国の調査で明らかにされた。これは、ニューヨークのベスイスラエル医療センターのDr. Brenda Breuer氏らによる調査の結果であり、11月15日にJournal of Clinical Oncology誌電子版で発表された。

この調査は、1990年にEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)臨床試験団体が実施した調査を部分的に踏襲したものであり、発表された論文に付随する論説によると、腫瘍専門医らの疼痛管理に対する姿勢および実施内容は過去20年の間に「ほとんど進歩しておらず、憂慮すべき状況であることが判明した」という。それでも、この20年間に癌の疼痛管理に関するガイドラインが作成されて普及したこと、疼痛管理に関する継続的な研修をよく目にするようになったこと、疼痛管理の専門家への問合せが増加したことを論文著者らは指摘している。

Breuer氏らは、無作為に選択した各地域を代表する2,000人の腫瘍専門医に無記名アンケートを郵送し、610人(32%)から有効回答を得た。

調査に回答した腫瘍専門医らは、癌の疼痛緩和に関する自分自身の専門性については高スコア(0から10までのスコアで中央値7)をマークしたが、自分の同僚については、疼痛管理のためのオピオイド(麻薬系製剤)処方に関して自分より消極的であると評価した。また、疼痛管理の基本原則には回答者のほとんどが賛同したが、臨床での対応が難しい場合について出題したシナリオ2題への回答からは、オピオイドに関する知識が不足している腫瘍専門医が多いように思われると、論文著者らは報告している。

1990年の調査と同じく、「十分な疼痛管理を行ううえで最大の障壁は、疼痛評価が不十分であること、患者が疼痛を報告することを嫌がること、患者が鎮痛薬の服用を嫌がることであるという腫瘍専門医の認識は変わっていない」とBreuer氏らは述べている。さらに、1990年のECOGによる調査以来20年にわたって「疼痛管理教育(医学部在学中およびレジデンシー期間中)に対する評価の低さはほとんど変わっていない」。

「十分な癌の疼痛管理が世界的に求められているにもかかわらず、この分野に関する技術が不足している腫瘍専門医はいまだに多い」と、論説の著者であるノースウエスタン大学のDr. Jamie H. Von Roenn氏(ECOG調査の筆頭著者)と、サンディエゴホスピス緩和医療科のDr. Charles von Gunten氏はいう。「患者が当然受けるべきケアを提供するには、疼痛管理教育を各フェローシッププログラムに取り入れるだけではなく、教育で学んだことを実践するよう腫瘍専門医に期待しなければならない」。

JCOポッドキャストで詳細を提供している。このポッドキャストでは、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの緩和ケア・リハビリテーション科長Dr. Eduardo Bruera氏が調査の結果を説明し、調査で明らかにされた問題の一部について提言を行っている。)

試験で確認されたHPVワクチンの有効性と交叉防御能

ヒトパピローマウイルス(HPV)16型および18型のワクチンであるサーバリックスの試験の最終結果から、子宮頚部の前癌病変に対するこのワクチンの著しい予防効果が接種から4年後も持続していることが示された。ワクチン接種時点でHPVへの曝露が認められなかった若い女性ではほぼ完全な予防効果が得られた。予防効果はワクチン接種被験者全体に対しては低くなり、また接種時点の年齢が高いほど効果は低かった。これらの試験結果は、接種前の感染に対してはワクチンが無効であることを示すものである。

このほか、標的としていないHPV亜型4種類に対してもワクチンの部分的な予防効果が認められた(HPV 16型および18型は世界の子宮頸癌の約70%を占めているが、癌を引き起こすHPV亜型は15種類も存在する)。PATRICIA(Papilloma Trial against Cancer in Young Adults)試験から得られたこれらの結果は、11月9日にLancet Oncology誌の電子版で2本の論文として発表され、こちらこちらで抄録が閲覧可能である。

PATRICIA試験には、14カ国で15歳から25歳までの若年女性18,644人が組み入れられ、サーバリックスを3回接種する群またはA型肝炎ワクチンを3回接種する対照群のいずれかにランダムに割り付けられた。2009年7月に公表された中間解析の結果では、ワクチンによりグレード2以上の子宮頚部上皮内腫瘍(CIN2+)のリスクが大きく低下することが示された。

ワクチン接種から4年が経過した今回の最終解析の結果では、HPV曝露が認められなかった女性において、HPV 16型および18型に関連したグレード3以上の子宮頚部上皮内腫瘍(CIN3+)に対するサーバリックスの完全な予防効果が認められた。また、同じ女性の集団では、他のHPV亜型によるCIN3+に対してもワクチンの強力な予防効果がみられた。サーバリックスを1回以上接種した女性被験者全体(接種前からHPVに曝露していた可能性がある女性を含む)に対してもワクチンによる若干の予防効果が認められた。

サーバリックスを1回以上接種した女性におけるワクチンの有効性

接種前にHPV暴露が認められなかった女性 接種時点でHPVに暴露していた可能性がある女性
HPV 16型または18型関連CIN3+に対する効果 100% 45.7%
HPVの型にかかわらず、
すべてのCIN3+に対する効果
93.2% 45.6%
すべての子宮頚部上皮内腺癌に対する効果 100% 76.9%

ワクチンは、HPV-33、HPV-31、HPV-45およびHPV-51(いずれも癌を引き起こす亜型)に対する交叉防御能を示した。この交叉防御能は、ワクチンのアジュバント(免疫系を刺激する物質)または各種のHPV亜型の表面に存在するタンパク質が類似していることに起因するものではないかと研究者らは推測している。

論文に付随する論説では、NCIのコスタリカHPVワクチン試験に携わっていたNCI癌疫学・遺伝学部門のDr. Mark Schiffman氏およびDr. Sholom Wacholder氏が、PATRICIA試験の結果の重要性に言及している。また、「現在、公衆衛生の観点からのHPVワクチン研究における最も重要な問題は、ワクチン接種に関する現実的な側面である」ことにも触れている。子宮頸癌の90%を占める開発途上国でのワクチン接種を促進するには、次世代のHPVワクチンの価格引き下げ、1回の接種で予防効果を発揮することや、常温で安定であることなどが必要になると、両氏は説明している。

参考文献:「第二の子宮頸癌ワクチンは別型のヒトパピローマウイルス(HPV)を予防」、「発展途上にあるHPVワクチンの使用と受入れ(Use and Acceptance of HPV Vaccine Still a Work in Progress)」

前立腺神経内分泌癌に関する遺伝子研究からの手かがり

非常にまれではあるが悪性度が高い前立腺癌である前立腺神経内分泌癌(NEPC)で重要な役割を果たしていると思われるシグナル伝達経路が同定された。この発見に基づき、同定されたシグナル伝達経路を阻害する薬剤を検討したところ、2つのモデル系で抗癌効果が認められた。この結果がCancer Discovery誌の11月号に発表されている。

NEPCが前立腺癌に占める割合は小さく、ほとんどの場合は前立腺腺癌のホルモン治療後に発生する。この疾患の原因について理解を深めるため、ワイルコーネルがんセンターのDr. Himisha Beltran氏らは、NEPC患者7人、前立腺腺癌患者30人、良性前立腺5人の組織検体から遺伝子発現パターンの特性を検討した。

NEPCと前立腺腺癌の比較では、特定の遺伝子の発現に「劇的な差」がみられるとともに、一部の遺伝子のコピー数にも差が認められた。疾患への関与が疑われる特に興味深い遺伝子が2つ特定された。オーロラキナーゼAというタンパク質をコードし、他の癌との関連が指摘されているAURKA遺伝子と、もう1つの癌関連遺伝子MYCNである。

AURKA発現とNEPCとの関連は、良性前立腺組織と別の大規模な患者集団から得られた前立腺腫瘍組織を解析することにより確認された。Beltran氏らは、AURKAとMYCNのタンパク産物が連携して前立腺癌細胞におけるNEPCの特性を誘導するとの結論を下している。

現在、複数のオーロラキナーゼ阻害剤の評価が臨床試験で進められており、Beltran氏らは、このうち1剤を、実験室で培養した前立腺腺癌細胞およびNEPC細胞とこれらの細胞由来の腫瘍を異種移植したマウスにより検討した。実験では、NEPC培養細胞に対する阻害剤の作用は認められたが、前立腺腺癌細胞に対する作用は認められなかった。マウスでは、NEPCの異種移植片に対しては阻害剤による縮小効果がみられたが、前立腺腺癌の異種移植片に対する縮小効果はみられなかった。また、阻害剤の投与により神経内分泌細胞のマーカー発現が抑制された。

「次のステップは臨床試験の開始である」とBeltran氏は述べているが、同氏によると、NEPCには標準治療が存在せず、ほとんどの患者は診断から1年以内に死亡する。この点について、AURKAおよびMYCN遺伝子の発現はごく一部の前立腺腺癌患者でも増加しており、こうした患者もオーロラキナーゼ阻害剤の臨床試験の被験者候補になりうるとBeltran氏は説明している。

これまでの試験から、NEPCと前立腺癌の起始細胞は共通している可能性があると考えられている。たとえば、前立腺腺癌でよくみられる遺伝子再構成は、NEPCでもほぼ同じ出現率であることが知られている。NEPCの正確な症例数は不明であるが、これは、進行前立腺癌患者がNEPCの診断手段である生検を必ずしも受けていないことも一因である。

Beltran氏らは、長期のアンドロゲン除去療法が、前立腺癌細胞のNEPCへの形質変換を促進していると考えられる証拠を提示している。このことから、「最近、新しいきわめて強力なアンドロゲン除去療法が臨床に導入されたため、NEPCの発症率は上昇する可能性がある」と考えられることを同氏らは指摘した。

NCI早期発見研究ネットワークを率いるDr. Sudhir Srivastava氏は、「今回の試験は、定期的なスクリーニングでは通常見逃される前立腺神経内分泌癌の発見に向けた足がかりとなる。前立腺神経内分泌癌の生物学を理解することは、このまれな疾患の臨床マネジメントの改善につながる」との見解を述べた。

******
市中 芳江 訳
野長瀬 祥兼 (工学/医学) 監修
******

【免責事項】

当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。
翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

関連記事