血管マッピングで4つの新たな「ZIPコード」が明らかに/MDアンダーソンがんセンター | 海外がん医療情報リファレンス

血管マッピングで4つの新たな「ZIPコード」が明らかに/MDアンダーソンがんセンター

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

血管マッピングで4つの新たな「ZIPコード」が明らかに/MDアンダーソンがんセンター

特異的アドレスを標的とすることが、癌、肥満およびその他の疾患の治療に役立つ可能性がある

MDアンダーソンがんセンター

2011年10月24日

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らが率いる研究チームは、人体の広大な血管ネットワークのマッピングを追求する中で4つの新たな「ZIPコード」を発見した。

10月24日の週の全米科学アカデミー会報誌オンライン版に掲載された本研究により、血管系を利用して癌治療を個別化するだけでなく、肥満、心臓疾患およびその他の障害を克服するという目標に一歩近づいた。いくつかのアドレスは必ずしも臓器特異的ではなく血管系全体で共有されていることも明らかにされた。

本研究は、人体の血管系内の特異的かつユニークなアドレス(住所)、つまりZIPコード(郵便番号)、を同定し、それらを用いて診断、画像および治療戦略を開発する、現在進行中の研究の一部である。MDアンダーソンのDavid H. Koch Center for Applied Research of Genitourinary Cancersで教授を務める、Wadih Arap, M.D., Ph.D.とRenata Pasqualini, Ph.D.夫妻の研究チームが、このコンセプトを開発し、本論文の主席著者となった。

「血管のZIPコードを同定することで、標的治療という最終目標へ医療を近づけようとしているのです」と、Pasqualini氏は述べた。

画期的な方法が調査に貢献

今回の研究は、血管が単に循環系の役目を果たす一様でどこにでもある「パイプライン」にとどまらないことを示す、Arap-Pasqualini研究室で現在進められている研究を裏付けるものである。

10数年前、研究グループは、血管の多様性を見いだし検証して使用するために、数十億ものファージと呼ばれるウイルス粒子を用いるスクリーニング手法を開発した。粒子は、リガンドとして作用するペプチドと呼ばれるタンパク質の小断片と一緒にパッケージされている。それらの粒子が体内に注入されると、血管および臓器で特異的な受容体と結合する。

「このプロセスは、体内のすべてのアドレスへ’大量に分子をメールする’ようなものです」とArap氏は述べた。「ペプチドは、標的を見つけるまで移動してその標的と結合します。私たちは、その斬新な手法を用いてそれらを回収し同定します。ペプチドの特徴および付着場所を知ることは、血管系の分子構成を理解し病変部位に焦点を合わせた治療を開発するのに役立つのです。」

この新しい研究は初めて行われたものであり、一度に複数の臓器を標的とすることにより、数人の患者のタンパク質多様性の分子レパートリーが評価された。

3人の癌患者を対象に、ペプチドがどこへどのようにホーミングしたかを突き止めるために、ペプチドの連続採取に続いて様々な組織の生検が行われた。それによってリガンド-受容体を同定するための標的化ペプチドを改良することができた。最初の患者に対するペプチドライブラリーの全身送達後、ファージは臓器から回収、プールされ、残り2人の患者で連続スクリーニングされた。その後大規模なシークエンシングが実施された。

「これは、血管マップに新たな展開をもたらしました」とPasqualini氏は述べた。「私たちはそれまで、臓器や組織に特異的なアドレスを主に調べていました。今回の同時手法では、いくつかのマーカーは複数部位で血管に関連していることが分かりました。」

研究者には予想外の共有アドレス

解析から4つの天然リガンド-受容体が明らかになり、そのうちの3つはこれまで知られていなかった。

2つは複数の組織(インテグリンa4/アネキシンA4およびカテプシンB/アポリポタンパク質E3)で共有されており、残りの2つは正常組織(白色脂肪組織のプロヒビチン/アネキシンA2)もしくは癌(骨転移のRAGE/白血球プロテイナーゼ-3)に限定的かつ特異的に分布している。

共有アドレスの発見は特に研究者らの興味を引いた。

「このような特殊なタンパク質を取り囲む新しい局面、さらにそれらが共通の目的を果たすために相互に作用して協力するという事実については、誰も知りませんでした」と、Pasqualini氏は述べた。「分かっていないことはもっと沢山ありそうです。」

アネキシンA2とプロヒビチンから成る、組織特異的な血管標的化システムが、ヒト白色脂肪組織の血管系におけるリガンド-受容体とされた。初期の研究では、アポトーシス誘導物質を用いてプロヒビチンを標的とすることで、肥満齧歯類に劇的な体重減少が認められた。研究室では、米国食品医薬品局(FDA)に対して、ヒトの体重減少に対してこの原理を検証する新薬臨床試験の実施を申請中である。

更なる前進を目指して
このプロジェクトは、ヒトの血管系の大規模研究から、様々な疾患の治療に貢献しうる多くの未同定もしくはユニークな分子ネットワークが解明されることを立証するものである。

「この取り組みや研究結果の応用は素晴らしいことです」と、Arap氏は述べた。「もっと沢山の受容体や様々なレベルの多様性が存在しているでしょう。私たちの研究はまだ始まったばかりなのです。」

ヒト初回投与の臨床試験などのトランスレーショナルな応用は、MDアンダーソンで始まっている。最初の血管標的研究新薬(IND)に対しては、FDAから実施しても安全性に問題がないとの承認を得た。他の3つの薬は、IND申請前相談の段階であり、その他は前臨床の検査室段階である。

「血管上で治療標的を同定するこのような手法は、科学的にも臨床的にも実に画期的なことだと思います」と、カリフォルニア大学サンディエゴ校がんセンターのトランスレーショナルリサーチ副所長で、血管新生および癌転移に関する第一人者である、David Cheresh, Ph.D.氏は述べた。「このような標的を同定することによって、最終的には、次世代のスマートな標的癌治療への道が開かれることになるでしょう。」

MDアンダーソン並びに、Arap氏およびPasqualini氏を含む、その一部の研究者らは、医薬品開発企業のAlvos Therapeutics社およびAblaris Therapeutics社のエクイティーを所有しており、企業ポリシーに基づいてある種の制約を受ける状態にある。MDアンダーソンは、その利益相反ポリシーに従って、これらの取り決め条件を管理し監視する。

MDアンダーソンDavid H. Koch Centerの共著者は次の通りである。筆頭著者:Fernanda Staquicini, Ph.D.、Marina Cardó-Vila, Ph.D.、Mikhail Kolonin, Ph.D。別著者:Julianna Edwards;Diana Nunes, Ph.D.、Emmanuel Dias-Neto, Ph.D.、Eleni Efstathiou, M.D., Ph.D.;Jessica Sun、Christopher Logothetis, M.D.。

MDアンダーソンのその他の寄稿者:Anna Sergeeva, Ph.D.(幹細胞移植科)、Shi-Ming Tu, M.D.(泌尿生殖器腫瘍内科)、Jeffrey Gershenwald, M.D.(腫瘍外科)、Jeffrey Molldrem, M.D.(幹細胞移植科)、Anne Flamm, J.D.(臨床倫理学科)、Erkki Koivunen, Ph.D.(白血病科)、Rebecca Pentz, Ph.D.(臨床倫理学科)、Patricia Troncoso, M.D.(病理科)、Kim-Ahn Do, Ph.D.(生物統計学科)、Gregory Botz, M.D.(集中治療科)、Michael Wallace, M.D.(放射線診断料)。

その他の寄稿者:Martin Trepel, M.D.(University Medical Center of Hamburg);Nalvo Almeida, Ph.D.、João Setubal, Ph.D.(Virginia Bioinformatics Institute、Department of Computer Science, Virginia Polytechnic University);Stan Krajewski, M.D., Ph.D.(The Sanford-Burnham Medical Research Institute);Richard Sidman, M.D.,(責任著者、Beth Israel Deaconess Medical Center、Harvard Medical School);Dolores Cahill, Ph.D.、David O’Connell, Ph.D.(Conway Institute of Biomedical and Biomolecular Science, University College Dublin)。

今回の研究は、米国の国立衛生研究所、国立癌研究所、国防総省、AngelWorks、Gillson-Longenbaugh財団およびMarcus財団から資金の援助を得た。

********************
豊 訳
大渕 俊朗 (呼吸器・乳腺内分泌・小児外科/福岡大学医学部 監修
********************

原文

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

週間ランキング

  1. 1非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  2. 2リンパ腫患者の余命は、診断後の無再発期間2年経過で通...
  3. 3乳がん検診におけるマンモグラフィの検査法を比較する新...
  4. 4ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  5. 5BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  6. 6若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  7. 7コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  8. 8アブラキサンは膵臓癌患者の生存を改善する
  9. 9ASH年次総会で血液がん化学療法の最新知見をMDアン...
  10. 10免疫療法薬の併用はタイミングと順序が重要

お勧め出版物

一覧

arrow_upward